第2章 第1の試練
第14話 初戦闘......からの?
学校を出た2人はそのまま西門の所に来て、
「でっけー......」
「なのです......」
町を囲うように建てられている城壁のその大きさに驚いていた。
ーー学校の後ろは牧場や畑があったし遠目でしか見てなかったけどやっぱりでかいな......何メートル有るんだろう......見た感じ3、4階ぐらいかな?
「さて、気を取り直して。フィンさんや」
「どうしたですか、ソラさんや」
「あれ勝手に出入りしていいですよってことですかい?」
「分からないのです」
ソラ達がこの場所に着いたとき、町に出入りするための6メートルほどは有ろうかという門は開け放たれていた。
「なるほど......じゃあちょっと出てみるか」
「レッツゴーなのです!」
そして2人は外に向かい歩き始め、そしてついに
「ん~~~外だ~~~!」
「外なのです~~~!」
そこは大きな平原になっていた。
ーー1ヶ月もかかったけどようやくだ、ようやくだ......く~わくわくしてきた~!
「やっぱり出入りは自由みたいだな」
「そうみたいなのですね」
「でさ、あれ何?」
ソラは門から少し離れたところを指さしていた。そこには薄い膜のような物が有り町を囲う城壁をさらに囲うように広がっていた。
「あれは対魔物用の障壁なのです」
「魔物用?」
「はいなのです。あれで町の中に魔物が入ってこないように守っているのです」
「結界とかバリアみたいなもんか......やっぱりあの女神が発動させてんのか?」
「確か町の何カ所かに魔方陣を書いてさらに大きな魔方陣を作って発動させたらしいです」
「へぇ~あんななりしててもやっぱり力はすごいのな......」
「でも維持をするのには障壁の中にいる人達の魔力を少しずつ貰っているらしいですよ」
「元気玉かい!」
「元気玉?」
「あ~すまん、何でもない」
思わずツッコんでもうたやんけ......でもなるほど考えてみれば効率のいい方法ではあるか。魔方陣の場所は秘密にしておけば壊れることはないし、町から人がいなくなることなんかよっぽどのことがないとあり得ないしな。
というか多分この結界他の町にも有るだろうし全部維持するにはこの方法が1番楽だったんだろうなぁ......ていうかさすがに無理だろ、うん。
「じゃああの結界を抜けたらいつ魔物に襲われるか分からない冒険が始まるわけだ」
やばい、緊張してきた......汗が......
「もしかして緊張してるですか?」
「いや!してない、してないぞ緊張なんか!」
といいつつ手の汗を拭い足の震えを隠すために障壁に向かって歩き出した。
「ほ~らその証拠にこんなに簡単に結界の外に出ちゃった、イエイ。しかもどんどん進むよ、ほ~らほ~ら......」
ソラは障壁を抜けた後も歩みを止めず平原のど真ん中をどんどん進んでいた。
「はっはっは、なんだ以外と楽に進めるじゃん」
「そんなに油断してると危ないですよ」
「だ~いじょうぶだ~いじょうぶ」
そしてとうとうその時がやってきた。
「ソラ!右から魔物が近づいてくるです!」
すぐに右を向くと何匹かが走ってこちらに向かっているのが見えた。だが土煙が上がりその姿はまだ確認出来ない。
「おっしゃあ初戦闘じゃあ!勝って幸先良く行ったるで~!」
だんだんと魔物との距離が近づきついにその姿が判明した。
「あれは......ヘルドッグなのです!」
ヘルドッグ
犬の魔物 大型犬ぐらいの大きさ 集団で行動する
「さぁ行くです!ソラ。やっつけろ~なのです~!......ソラ?」
「......」
ソラはフィンに呼ばれても一切反応しなかった。さらに未だ武器を出しておらず不審に思ったフィンはソラの頭を何度も叩いた。
「ソ、ソラ?......は、早く武器を出すですよ!構えるですよ!もう、すぐそこまで来てるですよ!......ソラ!」
そして
「うん、無理だ。逃げよう」
「え?」
そう言ってソラは町の障壁に向かって一目散に逃げ出した......
「えええぇぇぇぇぇ!?」
ーーーーーーーー
障壁内
2人はなんとか
「はぁ、はぁ、はぁ」
「な、なんで逃げ出してるですかー!?」
「はぁ、はぁ、あ?」
「あ?じゃな~いのです~!」
「ふぅ~......仕方ないだろ。一匹なら別にいいけどあんな何匹もいたら無理だって」
「無理じゃな~い!あんなに特訓したんだから大丈夫なはずなのです~!」
「......じゃかぁしぃんじゃ~!」
「ふえっ!?」
「初めての戦闘でいきなりたくさん来て怖かったんじゃ~い!」
「あ~......」
「臆病者で悪ぅござんしたね!」
「わ、悪かったですよ。フィンも言い過ぎちゃったですよ~」
「ふんだ」
「初めての敵があんなのなら逃げても仕方ないですよ~」
「どうせ俺なんか......」
「そんなことない!そんなことないですよ!」
どんどんいじけていくソラをなんとか元気付けようとフィンはさらにあたふたし始めた時だった......
「プッ......」
「プ?」
「あっはははは......」
「なっ、ななななんですか急に!?」
「あはは、悪い悪い。もう大丈夫だから。って言うか割と最初の方から大丈夫」
「え......ええええええ!?じゃあさっきまでいじけてたのは何だったですか!?」
「ん?リアクションが面白かったからノリ?みたいな」
「う~~~!ノリなんかでフィンで遊ぶななのですよ~!」
フィンはポカポカとソラの頭を叩くがあまり気にしていないのか未だに笑っている。
「なっはっはっは!まぁ別にいいじゃんか」
「良くないですよ!」
今度はフィンがそっぽを向いてしまった。
「......フッフッフ。隙を見せたな」
そう言ってソラはフィンの横腹を思いっきりくすぐった。
「あはははは、ちょ......やめ......もう......あははは......」
「どうだ、参ったか~」
「ま......参った。参ったのです、だからもうやめあはははは」
「はっはっは~よっしゃ~気分転換も終わったところでもう一回行ってみますか」
ソラは笑い疲れてぐったりしているフィンを頭の上に乗せて再び平原を進み始めた。
「ソラのバカなのです」
ーーーーーーーー
同日夜
2人はあの後何体かの魔物を倒しギルドでお金を貰ってから学校に戻って夜ご飯を食べていた。
「......それでですね」
「ふんふん」
「なんとあろうことか逃げ出したのですよ!」
「そりゃあ本当かい?なっさけない」
「そうよそうよ!あんなに鍛えてあげたのにヘルドッグ程度で逃げ出すなんて~!」
「......」
気にしちゃダメだ、気にしちゃダメだ......
フィンはちょうど食堂に来ていたアカリとおばちゃんに今日の出来事を語っていた。ちなみに2人はソラ達が来る前からお酒を飲んでいたらしく、特にアカリは完全に酔っているようだ。
「しかもその後理由を聞いたら怖かったかららしいのです」
「怖かったですって~?」
「まぁでも初めてならそういうこともあるかもしれないねぇ」
え~っと、今日の成果はキラーラビットにラットン、マンドチルド、ダンフラッシュか......数はそこまで多くなかったけどとりあえずレベルは2上がったし明日はもっと頑張らないと。
ちなみにこの世界の魔物は倒されると黒い塵のようになって霧散していくらしい。これは魔物が発生するメカニズムに起因するらしいがまだ教えてもらっていない。
さらにこの時冒険者ブックを持っていると倒した魔物の素材、主に牙や爪などがランダムで手に入るらしい。女神の力パネェ......
「いいや~そんなことはないです~!こうなったら~もっとすごい恐怖を私自ら与えてやりますよぉぉぉ~~~zzz」
「......寝ちゃったです」
「だいぶ酔っちゃってたからね」
あっぶねぇ~......あの人が本気で来たらヘルドックどころか多分全魔物のうち3分の2ぐらいは大丈夫になるぐらいの恐怖を与えてきそうだし......やば、考えただけで鳥肌が......
「アカリは私が部屋まで連れて行くからあんた達も今日はもうお休み。初めての実戦で思ってる以上に疲れてるだろうしね」
「そうですね、行くぞフィン」
「ちょっちょっと待つです」
どうやら話に夢中になっていてまだ半分ほどしかご飯を食べていなかったらしく急いで残りを口の中に詰めていく。
「ほひほうはまはほへす(ごちそうさまなのです)」
「お粗末様でした」
「ング......ゴクン。ふぅ......!待つですよ~」
先に食堂を出ようとしていたソラを追いかけてフィンが飛んでいった。
「お前食べるの遅すぎ」
「今日はちょっとお話に夢中になってただけなのです!」
「ほんとかな~」
「本当なのです~!と言うかそれはソラも知って......!!またからかったですね!」
「あはははは!!」
ーーーーーーーー
食堂
「あの様子なら明日からも大丈夫そうだねぇ」
「こ~ら~逃げるな~ムニャ」
「まったくこの子は......教え子が卒業して嬉しいからって飲み過ぎなのよ。いしょっと」
アカリをおんぶして部屋へと向かうおばちゃん。
「がんばれ~ソラ~zzz」
「ふふふ。そうだね、頑張るんだよソラ、フィン」
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