第13話 最初の試練は?
「はぁ~~笑った笑った~」
「もぅダメだ......俺はこの世界の人達に永久に笑われ続けるんだ......」
「もう!いつまでそうしてるのよ。男の子なんだからいい加減シャキッとしなさいよ!」
「ピンクの男って言われるんだ......何をしたってピンク君って......ピンクって......」
「いい加減に......しろーーーーー!」
「あばばばばばばばばば......」
ソラに往復ビンタを浴びせるアカリ。その勢いはものすごくみるみるうちにソラの顔が腫れ上がっていく。
「ふぅ......」
「な゛に゛もごごまでじなぐでも」
「も......ものすごい顔になっているのです......」
ソラの顔は元の状態が分からない位に腫れあがっていた。
「いやぁ~スッキリ!ストレス解消にもってこいね、これは」
「い゛や゛い゛や゛ごのま゛ま゛じゃぞとでれな゛い゛でずがら」
「まずいわね......何て言ってるか分からないわ」
「......ばぁ......ブィンよ゛ろ゛じぐ」
「了解なのです」
「あなた分かるの?」
「ん~なんとなくですが分かるです。というか今の状況的に外に出られないとかだと思うです」
そう言われて改めてソラの顔を見るアカリ。
「......さすがにやり過ぎたかしら......」
そろってうなずくソラとフィン。
「ちょっちょっとまってて」
そう言うとアカリは自分の冒険者ブックを出して何かを探し出した。
「......これで多分大丈夫よね」
そして冒険者ブックからコルクで蓋のしてある液体の入った試験管を取り出した。
「ぞれ゛は?」
「いいからとりあえず飲んでみて」
ソラはコルクを外し一気に飲み干した。するとみるみるうちに顔の腫れが治まっていった。
「......治った......」
「今のは回復液(最)よ」
あんだけ腫れてたのがすぐに治るとは......異世界の技術恐るべし。
「回復液は品質によって分けられていて上から極、最、上、普の4つよ。ただし悪も有るから気をつけて。まぁ主に自分で生成するときの失敗作がそうなんだけどね」
「ちなみにお値段は?」
「下から100、500、10000、100000よ」
「上2つだけくっそたけぇーな、おい」
「効果が段違いになるから仕方ないわよ。というわけでそんなお高い薬を使ってあげたんだから今回はチャラってことで......」
「なりませんから、この借りはこれまでの含めて全部いつか返しますから」
「そんな......先生悲しい......そんな子になってしまったなんて......」
「演劇風にしたってダメなものはダメですから」
「ブーブー」
こんなん1つでチャラにできるかよ!てか今回の分チャラにしても今までのが散々あるんだから意味ねーよ。
「それより次は何ですか?」
「チャラにしてくれるなら......」
「おい、フィン。女神に連絡してこいつクビにしよう」
「了解なのです」
「えっ!?」
フィンは黒電話を取り出しダイヤルを始めた。
「待って待って待って!それだけは止めて!ホントに!まじで!」
両手を合わせて懇願するもフィンは手を止めない。
「なぁフィン」
「なんです?」
「謝罪ってさ、やっぱり誠意が大事だと思わないか?」
「確かにそうなのです」
「誠意の伝わる謝罪ってどんなんだろうなぁ」
「そうですねぇ......やっぱりあれだと思うですよ」
「だよね?やっぱりあれしかないよね」
アカリの方を一切見ずにしかし聞こえるようにニヤニヤしながら話す2人。
「......分かったわよ、すればいいんでしょ」
そう言うとアカリは両膝をついて正座をし、そのまま体を前に倒し土下座をした。
「申し訳ありませんでした」
「......」
「どうするですか?ソラ」
「えっあぁうん、いいんじゃないかな、素直に謝ってくれたわけだし......」
ソラは素直に謝罪をしたことに驚きを隠せないでいた。
「そう」
一言だけつぶやきアカリが立ち上がりソラに近づき肩に両手を置く。どういう表情をしているのかは下を向いていて分からないがソラは不穏な空気を感じ取っていた。
「あの......どうかしました?」
「......気にしなくていいわよ、すぐに終わるから」
顔を上げてそう言ったアカリさんを見てソラは悟った。
ーーあ......ボコられるやつだ、これ......
「いやいや、また回復液を使うことになっちゃいますから、ね?」
「心配ないわよ、手加減するから」
「フィ、フィン。た......たすけ......」
「そこでおとなしくしててくれれば何もしないであげるわよ」
「は、はいなのです......」
フィンはアカリに従った。
「さてと......」
「ひ......ああああぁぁぁぁぁ!」
そして今日何度目かの悲鳴が鳴り響いた。
ーーーーーーーー
「え~っと次は何だったかしら......」
そう言うアカリの横でソラとフィンは正座をしていた。さすがにもう懲りたようでアカリを刺激しないようにおとなしくしている。
「あぁそうそう卒業祝いだわ!」
その言葉に反応しそわそわし始めたソラ。しかしそれを見て......
「でもなぁあんなことされた後だし......」
「申し訳ありませんでした!」
「やっぱり調子に乗ってるような人にはお灸を据えた方がいいと思うし......」
「それだけは......それだけはどうかご勘弁を......」
「どうするべきかしらねぇ......」
「お願いします。神様、仏様、アカリ様」
頭を下げた状態のまま両手を合わせてアカリに懇願するソラ。
「はぁ......もういいわ。はい、これが卒業祝い」
アカリは自分の冒険者ブックから巻物を取り出してソラに渡した。
「これは?」
「連撃剣の書。スキルを覚えることの出来る巻物で、それは連撃剣を覚えることが出来るわ」
「連撃剣ってどんな技なんですか?」
「その巻物に書いてあるからとりあえず読んでみて、それで習得も出来るから」
「分かりました」
スキル・連撃剣
斬撃を連続で放つ技。
斬る方向はあらかじめ決めておくことも可能。
初めは2連だが熟練度をあげることで増えていく。
増えても何連続かは選択可能。
ただし回数が増えるほどリキャスト時間が増える。
スキル・連撃剣を習得しました。
ーーなるほど、こうやって覚えるのね。というか......
「MP消費じゃなくてリキャストシステムなんですか?」
「スキルはリキャストで魔法はMP消費よ。だからスキルは1回ごとに時間が必要だけれど魔法はMPが有る限り連続で出すことができるわ。言ってなかったかしら」
「初耳ッスよ......」
「ちなみに昨日あなたがくらったのもその技よ」
「......ちなみに何連ですか?」
「10にしちゃった。本当は5にするつもりだったんだけどつい......ごめんね」
何がついだこのクソやろうが!完全にやられ損じゃねぇーかよ!
「はぁ......もういいですから次行きましょう」
「え~リアクション薄くない?もっとビックリしてよ~最後なんだし~」
うわぁ~めんっっっどくせぇぇぇぇ......
その時我慢が出来なくなったのかフィンがしゃべり出した。
「ハイ教官!」
「ム、どうした!フィン」
おっ、ナイスフィン!おかげでしつこいのから逃れられた!ただ......
「フィンにも卒業祝いがほしいです!」
「その願いかなえようではないか。ありがたく受け取るが良い」
アカリは冒険者ブックからさっきとは違う巻物を取り出しフィンに差し出した。
「はは~ありがたき幸せなのです」
それをフィンは空中で片膝をついて両手を前に出して受け取った。
ーーどこの受勲式やねん!てか口調!なんやねん急に......いや、これはあれだ。ツッコんだら負けな気がする......スルーだスルーするんだ俺......
今のはダジャレじゃないからな?
「どんなスキルもらったんだ?」
「ヒールという回復魔法なのです」
魔法・ヒール
対象1人。
対象のHPを回復し怪我を治す。
熟練度を上げることで効果が上がる。また一定値に達すると上位魔法を習得できる。
「まじか!」
「しかもこれも熟練度で強くなるみたいなのです」
「めっちゃ有能やないか!」
「ふっふっふ~」
うわぁ~どうだ驚いたか~みたいな顔してやがる......うん、無視の方向で。
「さっ次にいきましょうか」
「あなたつまんなくなったわね」
「おかげさまでね」
特訓の間に散々いじられたんだから当たり前だっつ~の。
「じゃあ次ね。次は最後第1の試練について」
ついに来た!試練に関する情報!
「第1の試練はこの町から西に行ったところにナシヤ町があるわ。そこからさらに西に行ったところにある惑わしの森の最奥部にある扉から挑戦出来るわ」
「惑わしの森......」
惑わしってことは普通に考えて何かしらの原因で迷うようになってる森って所か......
そこの最奥部に行かなきゃならないとなるとなかなか面倒だな......
原因を取り除ける物を見つける普通の方法か無理矢理進む無謀な方法か......
まっ着いてから考えるか。
「質問は?」
「試練の内容は?って言っても教えられないんでしょ、どうせ」
「まぁね」
「じゃあ大丈夫です。自分でなんとかしてみます」
「フィンもいるですよ!」
「ん?でもお前あんまり頭よくないからなぁ」
「ムーーーッ!!」
ソラの頭をポカポカ叩くフィン。
「あははは、冗談だって。頼りにしてるよ、フィン」
「ふん、なのです!」
「ずいぶんと仲良くなったわね」
「1ヶ月も有りましたから」
拗ねるフィンを定位置の頭の上に座らせる。
「準備は?」
「バッチリ......なわけがないでしょう。何が起こるか分からない以上準備なんて物はどれだけしようと充分になることなんて有りませんから。だから出来ることをできるだけやっておくだけっすよ」
「頑張ってね」
「ウッス」
「フィンちゃんも」
「はいなのです」
「それじゃあ......いってらっしゃい」
「「いってきます」なのです」
ーーーーーーーー
校庭
「今日はこれからどうするです?」
「まだお昼過ぎだしちょっとだけ外に出て魔物と戦ってみようかな」
「了解なのです」
こうして俺たちはついに学校を卒業して本格的な旅に出たんだ。
ーーーーーーーー
食堂
アカリはおばちゃんとお酒を飲んでいた。
「そうかいあの子達も今日で卒業か......寂しくなるねぇ」
「そんなことないですよ、むしろ手の掛かるのがいなくなって清々するってもんですよ」
「ふふ、そうかい......」
「何ですか、その笑いは......」
「何でもないさね......」
(頑張るんだよ、2人とも)
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