第12話 卒業!

翌日 ソラの自室


 ソラは自分のベッドで寝ていた。


「ん......ここは......」


 俺の部屋?......いつの間に戻ってきたんだっけ......

 たしかアカリさんに一撃入れて卒業資格を貰ってその後......

 ああ、そのまま気絶したのか......てことは運んでくれたのはアカリさん......いやそういうことはしなさそうだし多分リュウさんだろうな。今度会ったときにお礼言っとかないと。


「いてて......」


 ソラが起き上がるとアカリに攻撃されたところが痛んだ。

ーーいったい何発入れられたんだろ......1個も見えなかったなぁ。気づいたときには既に後ろにいて攻撃された後だったし......


「はぁ......分かってたけど強すぎんだろ......」


 未だに痛む体を動かしバルコニーに出て伸びをする。


「んっ......っ......ふぅ......よし」


 そういえば今何時だ?

 時計を見てみるとちょうど10時を回ったところだった。


「10時?」


 え~っと~......確かアカリさんと戦ったとき11時は過ぎてたから......ほぼ丸1日寝込んでたってことかよ......まじかぁ......

 その時ソラのお腹が大きな音を立てて鳴り響いた。


「......まぁ1日何にも食べなければそうなるよな......食堂行ってみるか。おばちゃんいるかな」

ーーーーーーーー

3階 廊下


 ソラが食堂に近づくと中から話し声が聞こえてきた。

ーーこの声は......フィンとアカリさん......おっおばちゃんもいるみたいだ、良かった。

 ソラは扉を開け中に入っていった。


「......!あら、やっと起きたのね、ソラ」


「ええ、おかげさまで!まさか丸1日寝込むことになるとは思いませんでしたけどね」


「ソラ~」


 フィンがソラの前に飛んで来た。


「もう大丈夫なのですか?」


「おう、まぁまだ痛みはあるけどこれぐらいなら大丈夫だよ」


「よかった~なのです」


「心配してくれてありがとな」


「パートナーとして当然なのです!」


 両手を腰に当てえっへんとでも言いたげなフィンの頭をなでるソラ。


「えへへ~」


「いや~ちょっと力の加減間違えちゃって、ごめんね、てへ」


「いや絶対許さないです。特訓しまくっていつか絶対勝ちますから」


「......そう、なら私も負けないように特訓しないとね」


 いやもう必要ないだろ......

 そう思いつつも口には出さないソラだった...


「っとそうだ、おばちゃん今から食べられるものなんか残ってる?もう腹ぺこで......」


「そう言うだろうと思ってもう作ってるよ。もうすぐ出来るから座って待ってな」


「あざっす!」


 ソラが座るとアカリが立ち上がった。


「それじゃあ私はちょっと準備してくるわね」


「準備?」


「卒業祝いとか......ね」


「何がもらえるんですか?」


「それは貰ってからのお楽しみ。とてもいい物だから期待してて」


「まぁほどほどに期待しときますよ」


「な~によ~。私の言うことが信用出来ないって言うの?」


 ソラのことを肘でつつくアカリ。


「はい」


「そんな言い切るほど!?」


「まぁ実際は半分ぐらいですけど」


「が~~ん......」


「よしよしなのです」


 分かりやすくうなだれるアカリとそれを慰めるフィン。


「いやいやあんたのこれまでの行いのせいですから」


「......見てなさいよ。本当にいい物なんだから。ふんだ!」


 そう言い終えると食堂から出て行こうとするが思い出したように


「あっ、食べ終わったら道場ね」


 と言い残し去って行った。

 ーー卒業祝いかぁ......ゲームとかだとチュートリアルの報酬に当たる物になるのかな?あれあんまり使えないんだよなぁ......


「おまちどおさま」


「待ってました!いただきます」


 おばちゃんの持ってきたご飯を一気にかきこんでいくソラ。


「卒業したらすぐに次の町に向かうですか?」


「ん?あ~それな......いろいろ考えたけどやっぱりまずはこの町の近くでレベル上げとお金を稼ごうかと思ってるよ。魔物を倒せば貰えるんだろ?」


「はいなのです。正確には倒した記録が冒険者ブックに記録されるのでそれに応じてギルドで貰うことが出来るのです」


「なるほどね。じゃあとりあえず最低でもレベル10を目標にしてみるかな」


「了解なのです」

ーーーーーーーー

道場


 ご飯を食べ終わったソラがフィンと一緒に入ってくると既にアカリが中で正座をして待っていた。


「お待たせしました」


「なのです」


「......」


「どうかしました?」


「......今何時?」


「今......ですか?」


「そうよ、何時?」


「え~っと~12時ですね。それがどうかしましたか?」


「......待たせすぎじゃない!?ご飯食べるだけでなんで1時間以上掛かるのよ!」


「いや~1日なにも飲まず食わずだったんで胃がちょっとづつしか受け付けなくって(笑)」


「1日ぐらいでそんなことにはならないわよ!あ~もう足もしびれてきちゃったし」


「チャ~ンス!フィン足をつつくだ!」


「ガッテンショウチなのです!」


「ちょっ......まちなさ......まって......ああ......」


 フィンに足をつつかれて身悶える様子を笑いをこらえながら見ているソラ。


「それそれ~~......あれ?」


 しびれがとれてきたのか普通に立ち上がるアカリ。


「あなたたち覚悟はいいかしら?」


「えっ......」


「「あーーーーー!」」

ーーーーーーーー


 ソラとフィンはボロボロの状態で正座しアカリに説教されていた。


「......まったく、最後の最後まであなたたちは......」


「いやいや最後だからですよ」


「え?」


「最後だから何か仕返ししようと思って、食べ終わったら......としか言ってなかったからゆ~っくり食べてきただけですよ。そしたら足がしびれてるって言うから......って!」


 ソラにげんこつをして言葉を遮るアカリ。


「あ~も~またたんこぶが増えたじゃないですか!」


「もっと増やしたい?」


 拳をかまえるアカリ。


「申し訳ありませんでした」


 それを見て土下座をするソラ。


「はぁ......もういいわ、いい加減本題に入りましょ」


「よろしくお願いします」


「お願いしますなのです」


 アカリは五芒星の書かれた紙を取り出してソラの前に置いた。


「じゃあまずはこの紙の上に冒険者ブックを置いてくれる?」


「了解であります!」


 正座をしたまま敬礼をして答えるソラ。


「もうそういうのはいいから」


「ウッス!」


 紙の上に冒険者ブックを出すソラ。


「もう出し入れに関しては大分慣れたみたいね」


「はい、これかなり便利ですからね。いろいろ試しましたけど自分の半径2メートル以内なら出し入れ可能なことも分かりましたしね」


「そう、まぁその調子で頑張りなさい」


「はい」


「それじゃあ」


 コホンと1つ咳払いをして少し真面目な顔をするアカリ。


「谷本空!担当官アカリの名において卒業要項を満たしたことをここに認め、当校の卒業を許可する!」


 そう言い終わると五芒星が光始め、白かった冒険者ブックの色が変わり始めた......

 ピンクに......


「えっ!?えええええええ!?」


「わ~い可愛い色なのです!」


「ええ!?ちょっまってまってまって!」


「ど......どうか......ぷっ......した?」


 笑いをこらえるために口元を手で覆うアカリ。


「もうこの際色が変わることについては置いておきます。でもなんでピンク!?」


「い......いいじゃない......可愛くて......ぷっ」


「そうなのです!とっても可愛いのです。何が嫌なのですか?」


 冒険者ブックの横に立ち両手を腰に当ててフィンがそう言った。


「あのなぁフィン。これの持ち主がお前やそれこそサクラさんなら何も問題はなかっただろう。

 でも残念ながら持ち主は俺!男の俺!こんなもん、出した瞬間笑いものにされちまうっつーの!」


「ブーブーブー」


「ブーブーブー......じゃねぇーよ!とにかく俺はこんな色認めん!」


「あっその色はランダムで変更はだから」


「うそ......だろ......」


 少し舌を出して「てへっ」と笑うアカリ。


「ノォォォォォォォォォォォ!」


「わ~~~~~~~~~い」


「あっはははははは」


 頭を抱え叫ぶソラとバンザイをして喜ぶフィンそしてそれを見て大笑いするアカリであった。

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