第11話 それから

 特訓10日目 道場


「脇構え......左突き......八相......下段......右脇突き......正眼......柳......etc。」


 アカリのかけ声に合わせて構えをするソラ。


「ラスト、正眼。」


「セェイ!」


「......」


「フゥ......フゥ......どう、でしたか」


 腕を組んで難しい顔をしながら悩んでいる。


「そうねぇ......どうしようかしら」


 両手を合わせて祈り始めるソラ。


「よし、決めた」


「どっちですか!?」


「今日はパンにしましょう」


「......いや、何のこっちゃね~ん!」


 ツッコむソラの隣ではフィンがずっこけている。


「え?今日のお昼ご飯のことだけど?」


「なんで今それやねん!ここは合否の発表の方でしょ!」


「あぁそっち?それなら合格よ、ご・う・か・く」


「よっしゃーーーー!」


「やった~~~なのです~~~」


 その時ソラの体が光り出した。


「えぇ!?なっ、なになになに!?」


『クラスチェンジ 見習い戦士→戦士

LV.0→1

HP.0→200  MP.0→30

攻撃力.0→50 魔力.0→20

防御力.0→40 魔法防御.0→30

精神.0→10  運.0→1』


「これって......見習い卒業ってことか!?」


「そうなのですか!?」


「そうよ。10日かぁ......もう少し掛かるかと思ってたんだけどね」


「イエ~~イ!」


 ソラとフィンがハイタッチをして喜びあっている。


「それじゃあ次にいきましょうか」


「ハイ!で次は何を?」


「ん?組手」


「え~っと、誰と......ですかね?」


「もちろん私よ。1本取れたら学校卒業よ」


「ええぇぇぇ......」


「ちゃんとハンデはあるから、頑張って」


「頑張るのです、ソラ」


「いったいどれだけ掛かることやら......」

ーーーーーーーー

特訓16日目 運動場


「うん、基礎の筋力トレーニングはこれぐらいで大丈夫かしらね」


 この日俺はついに250週(100キロ)を走りきることに成功した。しかも余裕を残した状態でだ。


「じゃあ明日からは何をするんですか?」


「それなんだけど......遅いわね、そろそろ来るように伝えておいたのに......」


 校舎の方を気にしているアカリ。しばらくして校舎からリュウさんが出てきた。


「ちょっとは急ぎなさいよ」


「まぁまぁ、別にいいじゃねぇか。よう、ソラ、フィン」


「こんにちは、リュウさん」


「こんにちはなのです」


「はぁ......それじゃあ明日からはよろしくね」


「おう、まかせろ」


「てことは明日からはリュウさんが担当になるんですか?」


「おう、午後だけはな」


 リュウさんは見習い格闘家担当だったからやることは素手での戦い方......空手とか柔道とかかな?まぁ基礎トレだけの今よりはましになるだろ......


「めっちゃきついから頑張れよ」


「えぇ......」

ーーーーーーーー

翌17日目 セーフティルーム


 壁、床、天井が柔らかい素材で出来たこの部屋でリュウによる特訓が行われていた。その特訓の内容は......


「ほーらよっと......どうした?まだまだ序の口だぜ」


「ちょ...ちょっと待って......もう少し間を......」


「さぁ次々行こうか。そーーれっと」


「あーーーーーー!」


 リュウさんがただただ俺を前後左右上下あらゆる方向に投げ、それに合わせて受け身を取ると言う物だった。


「よーし次は......嬢ちゃんどこにする?」


「こっちなのです」


「りょーかい!そらよっと」


「あーーーーー!」


 続けていれば自然と体が勝手に受け身を取るようになるらしい......

 そんなバカなことあるわけない!......と思うじゃん?俺は10日ほどで出来るようになったよ......まぁ反映強化のおかげらしいけどね。

ーーーーーーーー

23日目 食堂


 お昼ご飯を食べながら運動場の方を見ているソラとフィン。そこではサクラとレイがアカリさん達講師3人に見送られて旅立とうとしていた。


「くっそー先越された~」


「なのです~」


「あっはっはっはっは、サクちゃんの方が早く入学してたんだしそんなに悔しがることないだろう」


 できたてのお昼ご飯が机に並べられる。


「ほら、暖かいうちにお食べ」


「いただきます」


「いただきますなのです」


 おいしそうに食べる2人。


「いやいやおばちゃん、俺もね理屈としては分かってるんですよ、理屈としては。でもね、こうしてたまたまでも同じ時にいたんだから勝ちたいと思うのが男のさがってやつなんですよ」


「そんなもんかねぇ」


「そうなんですよ!」


「ソ~~ラさ~~ん。フィ~~ンちゃ~~ん」


「ん?」


 外から名前を呼ぶ声がし、窓から見てみるとサクラが手を振っていた。


「先に行きますね~~。頑張ってくださ~~い」


「おーーーう。そっちも気をつけてな~」


「いってらっしゃ~~いなのです~」


「は~~~い。行ってきま~~す」


 そしてサクラは旅立っていった。

 まぁお金を貯めるためにしばらくはここに戻ってくるらしいけど......

ーーーーーーーー

35日目 道場


 この日もソラとアカリによる木刀での組手が行われていた。


「そこだぁー!」


「甘い甘い」


 横腹のあたりを狙って突きを出すも当たる前に軌道をそらされてしまった。


「まぁでも今のはちょっと良かったよ」


「まっ......まだまだ!」


 ソラは何度も繰り返すうちにアカリの癖に気づきそこを狙っていた。

 くっそーこれもダメだったか......次の作戦は......よし


(だいぶ良くなってきたわね。ちゃんと私がわざと同じ動きをしているところにも気づいてるみたいだし。そろそろ1本とられるころかしら)


 ソラが様々な方向から打ち込んでいき、アカリはそれを全て受け止めている。そしてその打ち合いが3分ほど続いたころソラが仕掛けた......


 アカリさんはしばらく打ち合いが続くとちょっと息抜きを兼ねてか俺の攻撃を受け止めずに受け流して少し距離を取る。そしてその方向は構えごとに同じだ。だから逆にこっちから受け流しやすい攻撃をしてすぐに反撃だ。


「でりゃーーー!」


 ソラが上段から思い切り振り下ろし、アカリはそれを柳で受け流そうとする。


 来た!ここだ!


 ソラは受け流されながら勢いを緩めず一回転しアカリの横腹めがけて打ち込んだ。


「はぁ......はぁ......はぁ......や、やった......のか?」


「あちゃ~ついにやられちゃったか~」


「てことは......」


「卒業を認めます!」


「!よっっっしゃーーーー!」


「やっっったーーーなのですーー!」


 2人はハイタッチをしたりバンザイをしたりして喜び合っている。


「卒業だーーー!」


「卒業なのですーーー!


「この地獄のようにたたきのめされる毎日ともおさらばだーーー!」


「おさらばだーーーなのですーーー!」


「「バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ」」


 その様子を温かい目で見ているアカリ。


(うんうん、ソラは最初があれだったから少し厳しくしちゃったから大変だったんだろうなぁ......でもちょっと大げさすぎない?なんか涙目になってるし......なんかむかつく......)


「それじゃあせっかくだし最後にハンデ無しで戦ってみましょうか」


「バンザーイ、バンザーイ、バ......はっ!?」


 今何つった!......ハンデ無しで戦う?......は?無理無理無理!

 ハンデ有りでも一撃入れるのにこんなに掛かったのに!それが無くなったらどんだけ悲惨なことになるか想像もつかん!


「いやいや、アカリさんが強いのはよ~~く分かってますから」


「まぁまぁ、別にいいじゃないの1回ぐらい」


「いえいえ、本当にしなくて大丈夫ですから」


「そんなこと言わずに記念に1回......ね?」


 そう言いながらアカリは少しずつソラに近寄り、ソラは少しずつ後ずさりしていたがついに壁際に追い込まれてしまった。


「ほらほら、もう逃げられないわよ」


「っ!あ~もう!分かりましたよ!1回だけにしてくださいよ!」


 覚悟を決めて正眼に構えるソラ。


「じゃあフィンちゃん、合図お願いね」


「ハイなのです」


 そして、アカリも正眼の構えをとり、それを見てフィンが合図を出した。


「始め!なので......す?」


 一瞬だった。始めと言い終わった瞬間にアカリが動きその後を言い終えるまでにソラに10発もたたき込み、ソラはうめき声も上げる間もなく倒れていた。


「......いっけない、やりすぎちゃった」


「あららなのです」


 こうして俺は卒業資格を獲得したんだ......いつか絶対仕返ししてやる!

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