第7話 これって拷問だよね?
「やばい、やばい、やばい」
俺は今、全速で運動場へ向かっていた。
と言うのも昨日6時半に集合と言われていたのに現在の時間は......6時40分......完全に遅刻ということだ。しかも遅刻をしたら午後の筋トレを増やすと言われていたからさぁ大変!
と言うわけで全力ダッシュでたどり着いたんだが......
「おいおい......これまじかよ」
おそらく現在この学校にいる人が全員集まってるんだろうな、知らない人も何人かいるみたいだし。そしてその全員が音楽に合わせて同じ動きをしている。
「あっ、ソラなのです」
「あっじゃねぇーよ、あっじゃ。自分だけきっちりと間に合いやがって、俺も起こせよ!」
「起きられなかったのは自分のせいなのです」
「いやそうだけど、ほら助け合いとかさ、な?」
「目覚ましも自分で止めてたですよ?」
「うぐ......」
「フィンがもうすぐ時間だって言ったら『あと五分』って言ったですよ」
「......」
「フィンが先に行くって言ったら『う~い』って言ったですよ」
「......」
「フィンが......」
「申し訳ありません!私が悪ぅございました。許してつかぁさいフィン様」
我ながら実にきれいなDO・GE・ZAが出来ている気がするぜ。
「果汁100%オレンジジュースで手をうつのです」
「ハハ~」
「ぷっ......くくっ......」
「って誰だ今笑ったやつ!」
1人だけ口元抑えてるやつがいる。笑ったのはあいつか、でもなんか見覚えが......
「ってあんたか~い!アカリさん!」
「ちょっ......まって......もう......」
「なんなんすかあんた本当に笑いすぎでしょ。まじでお箸が転がっただけで笑いそうな勢いですよ」
「あっはっはっはっはっは」
「あーもう、いい加減に......」
「がっはっはっはっは。いい勘してるじゃねぇか新入り。そいつはまじで箸が転がっただけでも笑うやつだぜ」
爽やか系のイケメンだけれど服の上からでも分かるものすごい筋肉を持った男が話に入ってきた。
「いや顔と体の比率おかしすぎんだろ」
「いいツッコミじゃねぇか、ん?」
「あ~すいませんつい......」
「まぁ気にすんな事実だしな、がっはっは」
「えっとあなたは......」
「ああ、そういえば初めましてだったな。俺は
「谷本空です。よろしくおねがいします」
この人はリュウさんと言うらしい。そしてもう1人話に入ってくる人がいた。
「ちょっと、あたいだけ仲間はずれにするんじゃないよ」
「別に仲間はずれにしてたつもりはないぜ、なっつん」
「なっつんっていうなー!」
リュウさんをなっつんと呼ばれた女性が叩いているが彼は一切気にしていない。
「あのこの人は......」
「彼女は中野愛ちゃん。職業は魔導師で見習い魔法使いの担当よ。ちなみに名前で呼ばれるのは嫌いなの、可愛すぎて似合わないからって」
「まぁ確かにあれで愛ちゃんはかなり恥ずいですね」
丈の短いセーラー服で長いスカートだけなら良かったのにスカートに夜露死苦の刺繍があるし竹刀持ってるし......完全にスケバンだよね。
顔がいいからもっと普通の服着ればいいのに......もったいない。
「おい、新入り!あ~ソラだったか?」
「はい、そうです」
「今あたいの名前聞いたよな、アカリから」
「はい、中野あ......」
そこまで言いかけたところで彼女はソラの顎を下から掴み遮った。
「それ以上言うな、その名前は禁句だ。殺されたくなければあたいのことは中野さんと呼ぶんだ。いいな?」
「......」
「返事は?」
「はい......分かりました。中野さん」
「それでいい」
ちょ~こえぇ~......まじの目じゃんかあれ。りゅうさんよくあの人をからかえるな......
「それじゃあ自己紹介もすんだし私たちは先に朝ご飯食べに行きましょうか」
「んっ、先に?」
「ソラは遅れてきたから今から残って1人でしないとね、ラジオ体操」
あっやっぱりラジオ体操だったんだあれ。知らない動きがあったから何かと思ったんだけど。
「第2までしっかりやるんだぞ、ソラ」
「えっ......」
第2ってラジオ体操第2か!?どんなのがあるのかほとんど知らないけど1人でここでやるのか!?
「食堂からきっちり見てっからな!」
しかもみんなに見られながら!?
「新手の拷問かよ......」
「嫌ならちゃんと起きてくることね」
「肝に命じます」
「ラジオ体操が終わって朝ご飯食べ終わったら1階の道場に集合ね。午前中はそこで剣の稽古をするから」
「分かりました」
「それじゃ頑張って。行きましょ、フィンちゃん」
「はいなのです。」
「えっお前も行くの?」
「もちろんなのです」
「えぇ~......」
こうしてたった1人のラジオ体操と言う名の拷問が始まったのでした。
ーーーーーーーー
道場
「まじでめちゃくちゃ恥ずかしかったんですけど」
俺はラジオ体操と言う名の拷問と朝食を終え道場に来ていた。
「自業自得じゃない。ねぇ~フィンちゃん」
「ねぇ~なのです~」
「分かってますよ。分かっていても恥ずい物は恥ずいんですよ。しかも上から野次が飛んでくるし」
「仕方ないわよねぇ~」
「ねぇ~です~」
くそっ、自業自得なだけに何も言い返せねぇ......
「明日はどんな野次を飛ばそうかしら」
「そうですねぇ~」
「明日はちゃんと起きますよ」
「だ~って、出来ると思う?」
「無理だと思うです~」
「だよねぇ~」
......ぜっっっったいに起きて見返したる......
「そんなことより、剣の稽古始めましょう」
「え~、どうしよっかな~」
「いい加減にしろよ?」
「しょうがないわねぇ~。まっ、今のあなたが怒ったところでまったく怖くもなんともないんだけど......」
余談だが俺は明日、そして明後日も寝坊をしてしまうのだった......
「それじゃあ始めるから木剣だして」
「木剣......」
そういえばあの時の木剣どこいった?
たしか女神のところで手に持ってて、そのまま扉をくぐってこの世界に来て......
その時には無くなってたな......どゆこと?
「どうしたの?装備してたら冒険者ブックみたいに自由に出し入れ出来るでしょ?」
「自由に出し入れ?それってどういうことですか?」
「えっ!?」
「えっ?」
「知らない......の?」
「知らない......ですね」
「でも今冒険者ブック持ってないし、しまってるんじゃないの?」
「いえ、部屋に置いてきただけです」
「嘘でしょ......」
えっ何その反応......置いてきたのってそんなにやばいことなのか?
「あの、何かまずいですか?」
「あれにはあなたのステータスとか持ち物とかいろんなことが載っているのよ。万が一それを誰かに見られたら?
そしてそれを悪用しようとしたらどうなると思う?」
かなりやばいなぁ......あはは......
って笑ってる場合じゃねぇ......すぐに取りに行かないと。
「ちょっと取ってきてもいいですか?」
「全速力ね」
ーーーーーーーー
「まぁ学校の中だから誰にも見られていないと思うけれど、外ではどうなるか分からないから気をつけないといけないわよ」
「すいません」
返す言葉も無い......寝坊して急いでいたとはいえ。
よくよく考えれば個人情報の塊みたいな物だからなぁ......
「それじゃあそれをしまってみましょうか」
「どうすればいいですか?」
「イメージしてみて。自分の中に空洞があってそれが何部屋かに分かれているの。そのうちの1つにしまう感じよ。扉が付いていてそれを開けるとかっていう方がわかりやすいかしら」
イメージか......集中しよう......目を閉じて......
自分の中に空洞がある......いくつかの部屋に分かれている......扉を開ける......そしてそこに冒険者ブックを置く.........
「あっ」
手に持っていた冒険者ブックが消える。
ーーこれでしまうことは出来たってことでいいんだよな......
「それじゃあ今度は取り出してみて。やり方はさっきの反対で......」
「扉を開けて取り出す......みたいなイメージ」
「そのとうりよ」
もう一度集中だ......目を閉じて......
さっきの場所に冒険者ブックがある......その場所の扉を開ける......そして取り出す.........
すると手に冒険者ブックが現れる。
「出来た......のか」
「成功ね」
成功か......良かったぁぁぁ。出来なかったらどうしようかと思った......
「まぁ慣れれば簡単にできるようになるから暇なときに練習あるのみね」
「他に同じように出来るのは武器だけですか?」
「冒険者ブックで確認できる自分が装備している武器、防具、アイテムが可能な物よ。重たい鎧とかは常に付けてると邪魔だしね」
「じゃあ昨日すぐに使えるアイテムって言ってたのはこういうことだったんですね」
「そうよ。戦闘中に冒険者ブックを出してアイテムを取り出して何てしてたら攻撃食らっちゃうもの」
「それもそうですね」
ゲームでメニュー開いたとき時間止まるのはご都合主義だし。現実は甘くないってことだろうな。うん。
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