第4話 冒険者ブック2
「あ~もうあなたたち本当に面白いわね」
「笑い事じゃないんですけどね。俺にとっては」
「まあまあ、オレンジジュースのあるお店なら紹介してあげるから、ね」
なんだかなぁ......まぁでもちょっと楽しいから別にいいか。
「分かりましたから、続きお願いします」
「は~い。それじゃあ次は3ページ目だったわね。ここは所持アイテムの一覧よ。
アイテム、武器防具、貴重品、その他で分けられているわ」
「確かステータスの方にも所持アイテムってありましたよね?」
「そっちは装備していてバトル中にすぐに使えるものよ。使い方は特訓の時にでも教えてあげるわ」
「了解っす」
「その次はモンスター図鑑ね。出会ったことのあるモンスターが自動的に登録されていくようになっているわ。
ただし、詳しいステータスはスキルの見破るかアイテムのモンスタースコープが必要になるわ」
「戦士でも覚えられるんですか?」
「一応覚えられるけど、こういうサポートスキルは妖精に覚えてもらうのがおすすめよ」
「でも戦いは無理ってジャージ女が言ってましたけど......」
「ええそうよ。でもサポートは出来るって言われなかった? というかジャージ女って女神様のこと?」
サポートって戦闘以外のことかと思ってたけど戦闘でのサポートも出来たのか。だとしたらバフデバフと回復あたりが出来るようになるってことかな......
「ちょっと、無視しないでよ」
「......呼び方は何でもいいと言ったのはあいつの方ですけど、何か問題でも?」
「一応この世界の女神様だから町の人たち怒るわよ?」
「......それはちょっと困る」
「だったらちゃんと女神様と呼んだ方がいいわよ」
なんであんなやつ女神様なんて敬った呼び方しないといけないんだよ。でも町の人たちに嫌われるのは避けた方がいいだろうし......
「まぁ町中では気をつけますよ」
「どうなっても知らないわよ、まったく......まぁいいわ、じゃあ次のページ。
そこはパーティーメンバーのステータスよ今はいないから何も書いてないけれど、パーティーを組めば表示されるわ」
「自分のみたいに詳しくですか?」
「いいえ、名前、レベル、職業、体力、魔力のみよ。詳細は相手に冒険者ブックを見せてもらうしかないわ」
組んだばっかりだと全部見せれるほど信用出来るかどうか分からないからってことかな......まぁそれぐらいが妥当か......
「組み方はそのページの右上のパーティー申請から受けるか送るかを選んで相手に送るか受けとって承認するかよ」
「最初はやっぱりレベルの高い相手と組んだ方が有利ですよね?」
「そうだけど......たいしたメリットも無いから大体断られるわね。だから組むなら前後10以内が目安になってるわね」
「あ~確かに無いっすもんねぇ......メリット」
確かに俺もネトゲではキャンペーンでも無い限り初心者切ってたもんなぁ......
「ちょうど魔道士クラスに1人いるから誘ってみたら?組んでくれるかどうかは分からないけれど」
「確かに初心者同士だしちょうどいいかもしれないですね」
戦士と魔道士なら前衛と後衛だしバランスのいいパーティーになるし、これはついてるんじゃないか?
「まっ女の子だから断られる可能性の方が高いと思うけど」
だからなんでそういうことを後から言うかねぇこの人は......まぁもう慣れてきたけど......
「で、次のページだけどそこはマップ。外にいるときはワールドマップ、町やダンジョンにいるときはその場所が表示されるわ。
ちなみに視界に表示されるのは自分の周囲20メートルよ。スキルで広くすることも出来るけどね」
「見られるエリアを増やす方法は自分で確認することですかね」
「基本的にはそうね、でも時々クエストの報酬とかダンジョンの最奥部にあったりとか例外もいくつかあるわね」
ならこれはレベル上げも兼ねて歩き回るのがちょうどいいかな。
「ちなみにダンジョン内にある宝箱とかの場所は分かるんですか?」
「宝箱はダンジョンの最奥部に1つだけだから分かるも何もないんだけど、途中で見つかるアイテムということならスキルがあれば見つけやすくはなるわよ」
これは探索系のスキルを早く覚えたほうがいいな。まぁ見つけやすくなるってことはなくても探せば見つけられるんだろうけど。
「次はクエストのページね。自分の受けたことのあるもの全てが記録されるページよ。
で、その次以降が全てメモ用よ。今は1ページしかないけど右上の+マークから何ページでも増やすことが出来るから好きに使ってみて。
とりあえずこれで全部ね。まぁ時々女神様が使いやすくするために増やすことがあるけれど、そのときはちゃんと説明もしてくれるから大丈夫でしょ。
質問はあるかしら?」
「......ちょっとすぐには思いつかないんで出てきたときにまた聞きに行きます」
「そう、じゃあこの後は特訓に入るから、そうね......30分後に運動場に集合ね。その間に部屋を見に行ったりさっき教えたことの復習したりしといてね」
「分かりました。じゃあまたあとで」
とりあえず部屋の方に行ってみるか......4階って言ってたよな。
「よし、とりあえず部屋見に行くぞフィン」
「はいなのです~」
ーーーーーーー
4階
ソラと書かれたプレートが掛けられた扉の前に来た2人。
「ここか......」
「そうみたいなのです」
「し、失礼しま~す」
「自分の部屋だから堂々と入ればいいと思うです」
「分かってるけど、初めてはちょっと緊張するじゃんか......」
「じゃあ先に入っちゃうのです~」
「あっこら、させるか」
開きかけた隙間から先に入ろうとするフィンを止めようとして部屋の中に倒れ込んでしまう2人。
「いつつ......おお......これが俺の部屋」
「はいなのです」
部屋の右には勉強机のようなもの、左にはベッドと洋服タンスのようなものがあり、ベランダも付いている。
――なんか寮みたいな感じだな。だけど1ヶ所だけこれは......
「なぁフィンこれってもしかして......」
「フィンのベッドです」
「いやまぁ大きさ的にそうなんだろうけど、なぜにお嬢様ベッドなんだよ。しかも天蓋付きのめっちゃ豪華なやつじゃん。俺のは何の変哲も無い普通のなのに......」
「乙女の夢だからですよ~」
「いやお前あのときに生まれたばっか何だからそんなの分からないだろ?」
「フィンが生まれたのはもっと前ですよ」
「はっ?」
「フィンたち妖精は女神様と一緒に暮らしててソラみたいな人が来るのを待ってるんですよ」
「えっ......じゃああの時のあれは何なの? あの光の球体の中に眠ってたやつ」
「あれはただの演出らしいです」
「じゃああの時起きてたのか?」
「はいです。寝たふりをしてたのです」
「えぇ~......」
まじかよ......てことはあの時のやりとりも全部聞かれてたわけで......うわぁ......めちゃくちゃはずいんですけど......いやもうそのことは忘れよう、うん。
「まだ時間残ってるのにもう行くですか?」
「いや、特訓するって言ってたからちょっと食堂で腹ごしらえでもしようと思って」
「じゃあレッツゴ~な~のです~」
そう言いながら頭の上に乗るフィン。
「おい、まさかそこが定位置とか言わないだろうな?」
「そうですよ。だめです?」
「さすがに疲れるしなぁ......」
「お願いなのです」
フィンが下に回り込んで上目遣いで見つめてくる。
「うっ......」
それは反則だろお前......
「はぁ~仕方ねぇなぁ......」
「わ~い、わ~い、やった~なのです~」
「振り落とされてもしらねぇからな」
「大丈夫なので~す」
鼻歌なんか歌って頭の上の何がそんなに楽しいんだか......
そうこうしているうちに食堂の前まで来た2人。
「ここが食堂か......思ってたのより狭いな」
「狭くて悪かったねぇ」
「うおぅ、びっくりした」
突然、割烹着を来た40代ぐらいの女性が後ろから話しかけてきた。
「こんにちはなのです」
「はい、こんにちは。新顔かい?」
「あっはい、谷本空です。よろしくおねがいします」
「フィンはフィンなのです」
「ソラとフィンね、私はまさこ。みんなからは食堂のおばちゃんなんて呼ばれてるよ。
それでここに来たってことはお腹がすいてるんだろ、何が食べたいんだい?」
「これから特訓があるので軽く何か食べておこうかと思って......何かそういうの有りますか?」
「じゃあおにぎりでも作ろうかね。具は何がいい?」
「昆布ってありますか?」
「フィンは梅干しなのです」
「昆布と梅干しね、すぐに出来るから、座って待ってな」
あと10分ぐらいか充分間に合うな。にしても思ってたより狭いな......教室1つ分ぐらいかな?で、3分の1ぐらいが調理スペースか。この広さじゃ全員来たら......ってその全員がたいした人数じゃないからか......納得だな。
「出来たよ」
「早いですね、もうですか」
「私は加速魔法が使えるからね。これぐらいあっという間さね」
「加速魔法! それについて詳しく教えてください」
「それはまた今度にしなさいな。これから特訓でしょ」
「分かりました。でも絶対教えてくださいよ」
「はいはい、分かったよ」
「これは?」
「その水はサービスさ。お嬢ちゃんは何にする?」
「オレンジジュースがいいのです」
「あいよ。アカリの特訓は大変だからねぇ、しっかり食べて頑張んな」
「ありがとうございます。じゃあ頑張ってきます」
「ありがとうなのです」
おばちゃんにお礼をして食堂を後にし、おにぎりを食べながら運動場に向かう。
「うまっ」
「おいしいのです」
特訓頑張ろ!
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