第3話 冒険者ブック

「それじゃあ次はこの世界でやるべきことね」


「試練のクリアと魔王討伐じゃないんですか?」


「メインはその2つよ。でもそれ以外にも様々なダンジョンや依頼があるわ。もちろん強制ではないから挑戦するかどうかはあなた次第。でもクリア報酬やダンジョンで手に入るアイテムは貴重なものも多いから挑戦する価値はあるわよ」


 ゲームで言うところのクリアには関係ないクエストみたいなものか。だとすると多少時間を割いてでも挑戦した方が良さそうだな。


「挑戦したいなら冒険者ギルドに行くといいわ。そこの掲示板に依頼の書かれた紙が貼ってあるから」


「わかり......冒険者ギルド?」


「ああ、その説明を忘れていたわね。町や個人からの依頼の仲介をしたり、冒険者のサポートをするところよ。

 その依頼を受けられるのはギルドに登録している冒険者だけ。でもこの学校を卒業したときに自動的に冒険者としてギルドに登録されるから、気が向いた時に行ってみるといいわ。そこにはこの世界の冒険者がいるから情報収集にも使えるしね」


 なるほど、情報収集は酒場でやろうと思ってたけどこっちも良さそうだ。


「次は職業についてね」


「待ってました!」


「職業はまず大きく2つに分かれていて1つは冒険職。その名のとうり私たち冒険者用ね。

 もう1つは一般職で冒険者ではない者たち用よ。鍛冶、生産といったものね。こちらの説明はなくてもいいでしょう」


「まぁ冒険者ですからね、俺」


「冒険職はまず初期職から始まってレベルを30まで上げるとクラスチェンジが出来るようになり、そこで上位や派生職になることが出来る。

 このクラスチェンジは2回あって2回目はレベル50で出来るようになり、特別な道具を使うことで特別な職業になることも出来るわ」


 てことはそのときの道具はメインよりもギルドのクエストの方が手に入りやすいかもしれないな。ゲームとかだとだいたいそうだし......問題はどれに何が必要なのか......だな。


「初期職は転職の儀を行うことで変えることが出来るわ。ただしレベルがリセットされて1からになるから慎重にね。

 でもこのとき2回目のクラスチェンジをしてレベルが70以上の場合はリスタートをすることもできるの。こっちもレベルは1になるけれどそのときの職と同系統の上位初期職になれて、さらに前の状態に合わせてステータスにボーナスが入るわ」


「じゃあするならリスタートをした方がいいということですね」


「まぁなりたい系統が違わない限りはそうね」


 じゃあ俺がするならリスタートの方か。というか確実にしておいた方が良さそうだな。でも1から上げ直しがなぁ。


「冒険者ギルドに行けば派生図の一部が見られるから参考にしてみたら?」


「そうですね。でも一部ってことは......」


「ええ、もちろんそこで見られるのは全てではないわ。というのもその職業になった人に聞くことで出来てるから誰もなったことのない物なんかは分からないのよ。しかも女神様が気まぐれで時々増やしたりするからもぅ......」


「あぁまぁその......ご苦労様です」


 そういえば職業には力を入れてるって言ってたなぁあのジャージ......でも待てよ、ということは、


「あの、必要なアイテムとかの条件も分かるんですか?」


「上位初期職まではほとんど判明してるから分かるけどそこから先は不明な物が多くあるのが現状ね。それに判明していても心の成長が鍵とかよく分からないものがあったりね」


 アニメとか漫画でよくあるけど実際にやるとなるとめちゃくちゃめんどくさいなその設定。


「リスタートするとしたらまだまだ先のことになるんだし今はまだ後回しでいいんじゃないかしら?」


 まぁそうなんだけど成りたいものがはっきりしてるかどうかって育成系じゃかなり重要だから、早めに決めたいんだけどなぁ。


「とりあえず卒業したらギルドに行ってみます」


「それがいいかもね。じゃあ次は冒険者ブックについてね。最初のページを開いてみて」


「これって......」


「あなたのステータスの詳細よ。ページをめくらずに横になぞると装備や耐性、覚えた魔法、スキルなんかを確認できるわ」


 うわぁスマホみたい......なのに本って違和感すごいな。慣れるしかないんだろうけど。


「で、そのページの右上のところにある歯車のマークを押してみてくれる? そうすると体力や魔力って項目が出てくるから」


 本当だ。体力、魔力、状態、所持アイテム、etc......でその隣にオンとオフ一体何のことだよ。


「それをオンにしてみて。とりあえず体力でいいかしら」


 体力をオンにっと。......あ~なるほど、これそういうことか。


「どう? あなたの視界の右下のところに体力ゲージが表示されていると思うんだけど」


「はい、出てきました。ということはこれで視界に直接表示するものを自分で選べるんですね」


「そうよ。昔は全部表示してたんだけど多過ぎっていう意見がたくさん出てきて女神様がじゃあ自分たちで選びなさいって、こうなったの」


「まぁ確かにこれら全部表示されたらちょっと邪魔ですからね」


「慣れればそうでもないんだけれど、この世界に来たばかりの人とかは邪魔だったらしいわ」


「そりゃあ視界に表示なんてこっちの世界にはないですからいきなり大量にでてきたらうっとうしくもなりますよ」


「......それもそうね。とにかくそんなわけで表示させるものは自分で選ぶことが出来るから自由にカスタマイズしてみて」


「分かりました」


 とりあえず体力と魔力、敵情報、バトルリザルトかな。あとは試しながら考えるか。


「それじゃあ次のページだけど、そこはサポート妖精のステータスの詳細、あなたの場合はフィンちゃんについてのページになるわ」


「ふぇ......呼んだです?」


 あっ起きた。さっきからうつらうつらしてたからそのうちデコピンでもしてやろうと思ってたのに。


「お前についてのページなんだとよ。ほら」


「あ~! 乙女の秘密を勝手に見たですね!」


「ええ!? だめなのかよ!」


「いいですよ~」


「いや、いいんかい! さっきのはなんやねん」


「言ってみただけなのです。おどろいたですか?」


「お~ま~え~」


 ソラはフィンを捕まえてお仕置きをしようとするも、それを察知したのか逃げられ教室の中を飛び回り始めた。


「逃~げろ~なのです~」


「待てっ......このやろっ......うりゃっ......にゃろ~」


 部屋の中を縦横無尽に飛び回るフィンをソラはなかなか捕まえられない。


「てか笑ってんじゃねぇ~よ、そこ!」


「プッ、ごっごめんごめん。でも......あっはっはっはっはっは......」


「あ~も~どいつもこいつも後で覚えてろよ」


「分かった分かったごめんね。でも......」


「ソラが単純だからです~」


 そう言ってフィンがソラの頭に座る。


「ぷふっ。あっはっはっはっは」


「ッ~~~」


 掴もうとするもまた飛び回り始め追いかけっこになる。

 ーー落ち着け俺、こういうときこそ冷静に。


「よし、フィン。今日の晩飯お前は無しだ」


「えっ!」


「あっ」


 フィンはその言葉に驚いて目をそらしてしまい目の前の壁に思いっきりぶつかってしまった。

 ーープッいいざまだ。でもとりあえず助けてやるか。


「お~いフィン、大丈夫か~」


「ら、らいじょ......ぶ、なの......れ......す。」


「今すぐに謝れば許してやらんこともないぞ」


「ごっごめんなさいなのです。だからご飯抜きはやめてほしいのです!」


「よし、分かった」


「許してくれるです?」


「うん......許さん」


「えええぇ~。1度期待させてから落とすなんてひどいです~」


「なっはっはっはっは~思い知ったか~」


「うぇ~んなのです~」


 フィンはアカリさんの方に行き、頭を撫でて慰めて貰っている。


「よしよし。かわいそうに。からかうのもそのぐらいにしてあげたら?」


「いや~いいリアクションだったんでつい......悪かったよフィン」


「果汁100%オレンジジュースで手をうつです」


「それぐらいならまぁいいか、わかったよ」


「わ~いなのです~」


 無邪気にはしゃぎやがって......オレンジジュースぐらいなら食堂にもあるよな。


「ちなみに普通のはあるけど果汁100%は町に行かないと無いわよ」


「......まじっすか?」


「まじよ」


「くっそーーーー!」


「あっはっはっはっは」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る