第33話しくまれたラッキースケベ 其の1・本番
「あら、イセカイ。あなたと朝っぱらから会うなんて、いやな一日の始まりとなってしまいましたわ」
そんなことを俺の顔を見たとたんに言ってくるのは、インテリジェンスさんその人である。
俺の顔を見ただけでそんな悪口を言ってくるとは、インテリジェンスさんも、この異世界に召喚されたとたんに、世界一の頭脳の持ち主と言う称号を奪いとった俺のことが、相当気に入らないらしい。
そう言った、俺のことなんかだいっきらいだオーラをかくそうともせずに、ぷいっとそっぽを向いて学校へ向かって行くインテリジェンスさんである。その姿は、いつかきっと俺から学業成績ナンバーワンの座を、正々堂々と奪い取ってみせる、と宣言しているようで非常にさっそうとしている。と思っていたのだが……
こけっ!
何かにけつまずいたのか、盛大にすっころぶインテリジェンスさんである。
この学校は制服が定められており、女子はスカートなのだが、そのスカートが盛大にめくれあがって、中身が俺に丸見えになってしまう。ついさっきまでは、あんなにりりしかったインテリジェンスさんのお姿が、いまではおまぬけきわまりない姿となってしまっている。
そんなまのぬけた格好を俺にさらしながら、インテリジェンスさんはぷるぷるふるえている。はずかしいのだろうか。くやしいのだろうか。女の子でもなければ、パンツを人前でさらしたことがない俺にはその気持ちはよくわからない。
そのように、『地面に倒れ込んで、憎たらしく思っているイセカイに、パンツを見られた時のインテリジェンスの気持ちを五十文字で述べよ』なんて現代文の問題に取り組んでいるような感じに俺がなっていると、その、すっころんで俺に派手にパンツを見せつけたインテリジェンスさんが、すっくと立ち上がって俺につかつかと歩み寄ってくる。
「見ましたか?」
そう、顔を真っ赤にして俺に問いただしてくるインテリジェンスさんである。ほかならぬ、俺がこの異世界に召喚されるまでは、勉強がもっともできるということで有名だったインテリジェンスさんが、現在学業成績ナンバーワンの俺に質問をしてきたのだ。ここは知性あふれる受け答えをしなければ、失礼というものであろう。
というわけで、俺は理路整然とインテリジェンスさんの質問に答えるのである。
「まあ、見たよ。でも、俺の『見た』って言っただけじゃあ、事実であるとは言い切れないからなあ。俺がでたらめを言っている可能性だってあるし。俺がインテリジェンスさんのパンツの色や模様をのべて、それが実際にインテリジェンスさんがはいているパンツと一致すれば、俺がインテリジェンスさんのパンツを『見た』って証明になるかな。ああ、そもそも、インテリジェンスさんは、俺が何を見たかとまでは明言していないからなあ。インテリジェンスさんの質問は、『俺がインテリジェンスさんのパンツを見ましたか?』ってことでいいの? 違ったら、ちゃんとそう言って欲しいんだけど」
そんなふうに、俺はきわめてロジカルな解答をしたのだが、インテリジェンスさんにはお気に召さなかったようだ。
「そんな理屈を、長々とこねまわさないでくださいな。あなたには、デリカシーというものがありませんの!」
と言ったことを、先ほど同様に、顔を真っ赤にして、この真っ赤な顔は明らかに怒りによるものであるとはっきりとわかるが、まくしたてるインテリジェンスさんである。インテリジェンスさんの知性に敬意をしめしたつもりだったが、どうも逆効果だったらしい。
「いやあ、そんなにカッカしないでくださいよ、インテリジェンスさん。この世界でナンバーツーの知性を有しているインテリジェンスさんらしくもない。ここは、知性を持っている人間同士、論理的に話そうじゃありませんか」
俺はなんとかインテリジェンスさんをなだめようとするのだったが、インテリジェンスさんの怒りがおさまる気配はない。それどころか、ますます激しくなっているようである。
「なにがナンバーツーよ、いやみったらしいわね。そんなに自分がナンバーワンであることをひけらかしたいの。そんなことより、あたしのスカートの中、見たの? 見てないの?」
インテリジェンスさんはそう言うが、スカートの中と言うのは、表現としてはあやふやではないか。これはきちっと指摘しなくてはいけない。
「スカートの中と言われましてもねえ、インテリジェンスさん。インテリジェンスさんはおなかのあたりでスカートをはいているわけだから、スカートの中はおなかとも言えるし、スカートの生地の内部だって、スカートの中と言えるかもしれない。もっと明快に説明してくれないと、俺だってきちんと答えられないなあ」
「パンツ! わたくしのパンツを見たのですか」
ようやく、『わたくしみたいな学業にすぐれた女性は、いやらしい言葉なんか口にしませんわ』なんてすまし顔を、いつもしているインテリジェンスさんに『パンツ』と言わせることに成功した。で、俺は言ってやるのだ。
「はい、拝見させていただきました、インテリジェンスさん」
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