第31話しくまれたラッキースケベ 其の1・打ち合わせ

「ねえ、イセカイ様。サービスシーン。ラッキースケベ。ムフフなお色気」


 突然俺の部屋に入り込んで、そんな知性のかけらもないようなことを言ってくるのはインテリジェンスちゃんである。俺が何なんだと思う間もなく、インテリジェンスちゃんは俺にまくし立ててくる。


「わたくし、少しでもイセカイ様のお力になれればと思いまして、自分なりに、創作とか、舞台とかについて調べましたの。わたくしの、この世界で、唯一イセカイ様と対等に渡り合える知性を存分に発揮しまして」

「へ、へえ、そうなんだ」


 そう言って、自分の頭の良さを俺にアピールするかのように、自分の頭を指さすインテリジェンスちゃんなのだ。


「それで、主役が男の子で、女の子が出てくる作品ならば、女の子は男の子に下着姿や裸を見せなくてはならない、というお約束があると知ったのですけれど、どうなのでしょうか、イセカイ様」

「まあ、そういうのも確かにあるけれど」


 俺がそう言うと、インテリジェンスちゃんは満足そうにうなずくのである。そして、インテリジェンスちゃんが俺に向かって猛アピールしてくる。


「じゃあ、しましょう、イセカイ様。わたくし、イセカイ様にサービスしたいです。ラッキースケベしてほしいです」

「と、とりあえず落ち着いてもらえるかな、インテリジェンスさん」


 ぐいぐいせまってくるインテリジェンスをなだめる俺だったが、とりあえずインテリジェンスさんにラッキースケベのなんたるかを説明しなければならないだろう。


「ちなみに、インテリジェンスさんは、どういうシーンを俺と演じたいのかな」

「そんなの決まってますわ。『イセカイ様、わたくしのエッチな姿見てちょうだい』、『わかったよ、インテリジェンスさん。どれどれ』と、こんな感じのシーンですわ」


 で、とりあえず俺がインテリジェンスちゃんに演じたいシーンの内容をたずねたら、あまり現代日本ではラッキースケベとはいえないであろうパターンを言ってきた。これは、俺とインテリジェンスちゃんで、しっかりとお互いのラッキースケベに対する認識を確認する必要がある。


「それ、どのへんがラッキーなの」

「それはもちろん、わたくしがイセカイ様にエッチな姿を見られてしまってラッキーと言うことですわ」

「インテリジェンスさんは、俺にエッチな姿を見られたらうれしいの」

「当たり前ですわ。なんなら、今、この場でイセカイ様に見てもらってもよろしんですのよ。どうぞご自由になさってちょうだい」

「今はとりあえず、そんな必要はないけどさ、少なくともインテリジェンスさんの言うそれと、俺が考えていたラッキースケベは違うようだよ」

「どういうことですか、イセカイ様。わたくしの演じたいシーンなんて、誰も見たがらないと言うことですの」


 そんながっかりしたインテリジェンスちゃんを、俺はとりなしてあげるのである。


「いやまあ、女の子に積極的にいやらしいことをされる男主人公って言うのにも需要がないわけじゃあないけどね、そういうのはラッキースケベとは言わないんだ」

「じゃあ、どういうのがラッキースケベになるんですの」


 そう俺に聞いてくるインテリジェンスちゃんである。となると、お勉強はよくできるが、性知識はとぼしいかわいい女の子にいやらしいことを教えこまないわけにはいかないではないか。


「まあ、例えばね、風でインテリジェンスさんのスカートがめくれて、パンツを俺が見てしまう。そして、俺がインテリジェンスさんに『パンツを見ましたね、イセカイ。なんていやらしい男なんでしょう』と、ののしられるのが、ラッキースケベにおける一つのパターンだね」

「イセカイ様にパンツを見られるなんて、わたくしにとってはごほうびなのに、そんなうれしくなるようなことをわたくしにしていただいたイセカイ様を、ののしらなければなりませんの」

「まあ、役どころとしては、俺はインテリジェンスさんに嫌われているっていうことになるからね。インテリジェンスさんだって、男になら誰にだってパンツを見せたいわけじゃあないだろう」

「当然ですわ。わたくしがパンツを見せたいのはイセカイ様だけですわ。でも、つまり、嫌っている男性にパンツを見られる女の子、というシチュエーションを演じるのが望ましいというわけですね、イセカイ様」


 ようやく、インテリジェンスちゃんにもラッキースケベがどうあるべきかと言うことが理解できたようだ。だが、困ったことがある。それをインテリジェンスちゃんに相談するわけだが……


「でも、ほら、舞台の撮影となると、俺とインテリジェンスさん以外にも、エキストラとかスタッフとかがいるからなあ。俺にパンツを見られるシーンを撮るとなると、俺以外にもインテリジェンスさんのパンツを見られると言うことになるけど……」

「そんなのいやですわ、イセカイ様。わたくし、イセカイ様以外にパンツ、見られたくありません」

「そうだね、インテリジェンスさん。俺だって、インテリジェンスさんのパンツ、俺以外に見られたくないよ。でも、いい方法があるんだ」

「なんですの、イセカイ様。いい方法って」

「それはね……」


 

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