第3話ヒロインはみんな俺を嫌ってる? 其の2
「イセカイ! 覚悟! 今日こそはきさまを叩きのめしてやる」
そう言って、学校の武道場で俺に襲いかかってくるのは、この学校で最強の称号をほしいままにしていたファイティングちゃんだ。“していた”と過去形なのは、当然俺がこの異世界に来たと同時に、その最強の称号をファイティングちゃんが失ってしまったからだ。
どうもこの異世界の重力は、地球より弱いみたいで、日本では運動オンチの見本みたいだった俺が、この異世界ではまるでスーパーマンだ。
と言うわけで、この学校最強のファイティングちゃんの動きもまるでスローモーションなので、避けるのは簡単な話だ。
そのうえ、この異世界の戦闘の技術と言ったら、てんでおそまつなレベルなのだ。アニメや漫画でしか戦いというものを知らない俺ですら、ファイティングちゃんの動き方は素人丸出しに見える。
だが、俺はファイティングちゃんを、フィジカルでもテクニックでも圧倒することなんてしない。俺のファイティングちゃんへの戦い方は、その俺の圧倒的なパワーやスピードだけをたよりにして、ファイティングちゃんのテクニックの意味をなくす戦い方だ。
なぜそんなことをするのかと言うと、ファイティングちゃんが必死になって今までみがいてきた自分の技術を、異世界からやってきたポッとでのただのフィジカル馬鹿に、なすすべもなく無意味にされると言うシチュエーションが俺にとってたまらないからだ。
当然、俺を見つめるファイティングちゃんの目は、憎悪一色なっている。
「なぜだ! なぜわたしの攻撃が当たらない。わたしが今まで自分の人生の全てをかけて修行してきたこの武術の攻撃がなぜ当たらないのだ。お前みたいな自分のフィジカルにあぐらをかいて、ろくな修行もしたこたがない様なやつに」
そう言って俺をにらんでくるファイティングちゃんの表情やら何やらは、非常に俺をいやらしい気持ちで興奮させ、ゾクゾクさせるのだった。
今まで武道の修行一筋で、オシャレになんて興味も見せなかったであろうファイティングちゃん。だが、その化粧っ気のない顔をは、そのままでも十分かわいらしい。
髪の色を染めるなんて考えたこともないだろうと、簡単に想像がつくその黒髪。その黒髪を、戦闘の邪魔にならないよう、ポニーテールにしているのだが、その結果、うっすらと汗ばんだ首筋がチラチラ見えるのがたまらない。
俺にけりかかろうとするたびに、ファイティングちゃんが鍛えてきたであろう太ももが、戦いだと言うのになぜか履いているミニスカートから、おしげもなくさらけ出してくれるのもすばらしい。
その上、ファイティングちゃんのたわわなおっぱいが、攻撃のたびにぶるんぶるんゆれているのだから、もう言うことはない。
身長は女の子としては高く、現代日本では標準的な体格の俺とどっこいどっこいであろう。今まで、男をさんざん見下してきて、腕っぷしではいつでもたたきのめせる情けない存在と思っていたであろうその目つきが、今は俺のことを倒すべき、自分以上の力を持つ相手として認識しているのだ。
これまで武道一筋に生きてきたであろうファイティングちゃんが、自分の人生を否定されて悔しそうな表情で俺に攻撃してくるのである。俺のことが憎たらしくて憎たらしくてたまらないのに、そんな俺に攻撃をかすらせることすらできない。
そんなファイティングちゃんの心境を思うと、俺のサディスティック心が満ち足りていくのを感じるのだった。
そして、この世界に突然やってきて、最強の名をかっさらった俺を憎たらしく思っているのは、ファイティングちゃんだけではない
「ファイティングさん。そんな自分のパワーだけで戦ってるようなやつに、武道の
「柔よく剛を制すのが、武道じゃないんですか、ファイティングさん」
こう言ったヤジが周りから飛んでくる。ヤジの主は、かわいくておっぱいも大きいだけでなく、戦っても強いファイティングちゃんを、女の子として意識しながらも、その実力におそれおののき、これまでろくに声もかけられなかったその他大勢の男どもだろう。
そんなこの異世界のエキストラどもが、いきなり出現したこの俺に、あこがれのファイティングちゃんを好きなようにされているのだ。やつらのうらみつらみの声が、俺には、レベルアップのファンファーレに聞こえてくる。
さて、そろそろか。今日のところは、ファイティングちゃんが一生懸命になって、俺にちっとも当たらない攻撃を繰り出してくるのも飽きてきたし、とりあえず終わらせることにしよう。
自分の身の程も知らずに、戦いを仕掛けてくる小生意気な女の子をこらしめる方法と言えば決まっている。
ファイティングちゃんが繰り出す左のパンチを避けて、俺はその左手首をつかむ。
「くそっ、はなせ!」
ファイティングちゃんはそう言って右手でパンチしてくるが、俺はそのパンチもひらりと避けて、その右手首もつかむ
「あっ、しまった」
ファイティングちゃんは、とたんにそのかわいらしい顔を真っ青にする。
おびえた顔を見せる、両手首をつかまれた女の子にすることなんて一つしかない。俺はそのまま力まかせに、ファイティングちゃんを押し倒すのだった。大胆に、思いっきり、がばあっと。
「今回も、俺の勝ちってことでいいのかな、ファイティングちゃん」
俺はいやらしく笑って言い放つのだ。そんな俺に、ファイティングちゃんは必死になって抵抗するのだ。
「はなせ! こんなもの武道ではない。こんな力まかせの攻撃。わたしはあきらめないぞ。何度だってお前に挑戦してやる。そしていつかはお前を倒すのだ。わたしの誇りにかけて」
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