21
イナズカを追いかけると、昨日、水月が立っていた場所と同じところにいた。とはいえ、立地的にそこを抜けても中等部に出るだけなので、そこで合流するのが自然といえば自然なのだが。
だが、イナズカは水月と違い、困惑した様子で朽ちた社を見回していた。
「何してんだ?」
「ひゃっ!? あ、清正さん……」
清正が声を掛ければ驚いた様子で振り返る。
「お参りってここに来ることだったんだな」
「はい……こちらでは言わないんですか?」
「そもそもこれがなんなのかすらよくわからん」
「……そういえば、こちらでは神様はいないことになってるんですもんね」
「え、そっちにはいることになってんの?」
イナズカの言葉に清正は「マジか」と驚愕を隠せない。
何せ、神という存在は信じている方がおかしいというのが世間一般の見解だ。今朝の体験がなければ清正はイナズカを心の底からバカにしたことだろう。
「んー、でも『神様がやったんだ』って考えないと納得いかないことってありませんか? 私たちのところではたくさんあるんですけど」
「えー……? いや、だいたいのことは
「今朝のこともですか?」
「あれはノーカンだろ……いや、説明できんのかな……」
イナズカに痛いところを突かれて清正は腕を組む。
鏡面に入り込む。いや、そもそもそれは、鏡面の向こう側に世界があることが前提として必要であるため、その世界も
世界を完全に再現できるだけの
もしそれができる存在がいるのだとしたら、おそらくそれが――
「失礼だなあ、神様はいるよ」
「!?」
「誰!?」
静寂の中に響き渡った声。今度はイナズカだけでなく清正も飛び上がるほど驚いた。
二人が声の主を探せば、その人は存外に近くにいた。
朽ち果てた社の上。人がひとり乗るのが精一杯の小さな屋根の上に、八重歯を見せて笑う少女が座っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます