第6話 闇 六
しかし、周囲の人間は、僕をひっそりとしてはくれない。
このような仕打ちを、一般的には「いじめ」と言うのだろうか。
とにかく僕は、(特に高校時代、)ひどい目に遭った。
しかし最初のうちは、とりあえず「自分は誰でも不幸にできる。」と吹聴して回ることによって、大半のいじめは回避できた。(その代わり、誰も僕には気味悪がって近づかず、僕は完全に無視されていたが。)
しかし、その状況も1年程度で変わる。
繰り返すが、僕は「闇属性」だが、誰でも不幸にできるわけではない。
僕のせいで不幸になるのは、僕と仲良くなった人だけだ。
そのことが、さっきの足立とのやりとりのようなことを続けているうちに…とうとうバレてしまった。
そしてそこからは、地獄の日々が始まる。
それは、気温も湿度もものすごく高い、夏休み前の7月のこと。
「おい闇男!今日も暑いなあ!
何か今、すっげえジュースが飲みたい気分なんだよね~!」
その頃僕は、「闇男」という全くありがたくないニックネームをつけられていた。
「…。」
あと、基本的に僕はこういうようなことを足立やその取り巻き連中から言われた時は、無視することにしている。
しかし、
「おーい闇男君、聞いてますか~?」
そう簡単に足立たちは引いてはくれない。
「…そうなんだ。そういえば食堂前の自販機に新しいジュースが入ったね。」
「そうなんだよね~あれ、でも俺財布忘れちゃったよ~!」
「あ、俺も俺も!」
足立たちの演技は本当に下手で、これでは役者になれない。なれたとしても大根役者だ。(少なくとも役者になる気があればの話だが。)
僕はそんなことをふと思い、
「そうなんだ。じゃあ明日財布を持って来て…、」
…と僕がそう言い終わらないうちに、足立が僕の座っている席の机を叩く。
その音はとても大きく、他の話をしていた生徒たちも、一斉に僕たちの方を見る。
「おい闇男、君は『空気を読む』ってことを知らないのかな~?」
足立の口ぶりは一応穏やかだが、その目はとても鋭く、僕の方を睨んでいる。これは、まるで獲物を狙うライオンのような目つきだ…まあ僕は動物には詳しくないが。
「えっ…ごめん。じゃあどうすればいいのかな?」
そんなこと、足立が何を狙っているかなんて、僕にでも分かる。そして誰にでも分かるだろう。しかし僕は、あえて足立よりも上手な演技(と、少なくとも僕は思っている)で返す。
すると今度は、足立は目だけでなく、態度や言動で僕を威圧する。(ついに本性を現した、というところか。)
「ごちゃごちゃうるせえな!だから闇男、そのジュース買って来いって言ってんだよ!」
そして、僕の机を足立はもう1度大きく叩く。
あと、僕は「闇男」だ。友達のいない僕には、こんな時助けてくれる人はいない。
「いや、あいにく僕も今日は財布を忘れていて…、」
「下手な演技してんじゃねえ!」
『さっきの君の演技よりはマシじゃないかな?』
と僕は心の中で思うが、その足立の威圧感がそれを口に出すのを阻む。
「え、あ、いや、でも…。」
僕は、気が弱いのだろうか?それとも、孤立無援のこのような状態では、みんなそうなるのだろうか?
「お前、ちょっと来い!」
そして僕は、足立とその仲間に無理矢理連れて行かれる。
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