敗者の居場所


「クソッ!! クソッ!! クソッ!! なんであいつばかり……!!」


 ジェイドは祭りの輪に加わらず、集会場から離れていく。

 その丸まった背を追いかけて、後から後から、楽しげなどんちゃん騒ぎが反響してくる。


 脳裏に蘇るのは、幸せそうなレヴィとダダンの姿。


「――――ッあああああああああああああああ!!!!」


 いくら髪を掻き毟っても消えはしない。

 頭が割れそうだ。


 全身の傷は痛むどころか、むしろ沸々と力がみなぎっていた。


 左腕には赤い紋章・・・・

 落盤の時に生じた奇妙なミミズ腫れは、蛇のように太く、強い筆致の紋章に変わっていた。


 行き場のない活力が煮えたぎる。

 二人を恨むほど強く、憎しみに応じて赤く輝く、謎の紋章。


 ボロボロの体も苦にならない。

 巨大なハンマーを振り上げ、里を飾る石像を無茶苦茶に打ち壊す。

 みな集会場に行っていて、見咎める者は誰もいない。

 思いの丈を発散させなければ、体の内から爆発してしまいそうだった。


「不潔だ! 穢れた血の分際で!! 王になんて、ありえない! ドワーフの純血はどうなる!? 最悪だ!! みんなそれで良いのか!? なぜ祝う!? あんなデミ野郎を! 俺は、認めない! 認めない!! 認めないッ!!」


 ゴシャッ! ゴシャッ! ゴシャッ!

 祭りの騒音を掻き消すように、何度も何度も。

 既に細石となったものへ、ハンマーを叩き続ける。

 それを不意に止められた。


「全く同感だ」

「――――は?」


 振り返ったジェイドが固まった。

 ――――壊していた石像と、全く同じ顔の人物が、そこに居たのだ。

 サッと青ざめ、両手を挙げる。


「ち、違うんです。これは、体が勝手に……」

「そうだろうとも」

「本当に……! ……え?」

「喜べ。お前は選ばれた」

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