第17話 魔力疲労

 買っちゃいました魔導剣。

 銘は烈火でお値段金貨三百枚とちょっと。

 魔剣を探すのを諦めたわけじゃない。

 お金も有るし、丸腰ってのもなんだかなと思ったから買っただけだ。

 魔導剣の材料は青狼銀せいろうぎんと呼ばれているもので、かなり魔力の効率が良い。


 鎧も何かないとそろそろ不味いので皮鎧を買いました。

 こちらは、量産品の鎧で金貨五枚の安い物。


 兜のたぐいは皆、付けない。

 なぜなら、魔獣の攻撃力が凄くて普通なら一発貰うとおだぶつだからだ。

 魔法も基本は避ける為、視界を遮る兜は要らない。




 南の草原で烈火を試す。

 その名の火からいく。

 炎のイメージと共に魔力を魔力放出スキルで送ると剣から炎が噴出する。

 滅茶苦茶、格好いいけど、これを使わないと駄目な時はかなり特殊な状況だろう。

 魔力消費が半端なく多い。

 着ぐるみゴーレムがなかったらあっと言う間に枯渇しただろう。

 魔剣ではそんな話は聞かないから、魔力効率では魔剣に軍配が上がるようだ。


 次は切れ味増加だな。

 これは二通りあって、一つは水魔法で薄く覆う、もう一つは刃を変形で流動させる。

 持ってきた腕ぐらいの丸太を念動で浮かせ、試し切りした。

 両方試してみたけど、どちらもそんなに変わらないな。

 魔力視使っているから刃が光って綺麗だけど、魔力視なかったら地味だ。


 剣を振り下ろす時に重くするのを試す。

 重力魔法を使っているのが分かった。

 念動で浮かせた丸太に打ち込むと半分程で止まった。

 これなら、切れ味強化の方が良いな。


 斬撃飛ばしは風魔法を使っているのが分かった。

 木の的を念動で浮かせ攻撃する。

 魔力視を使うともの凄く格好良いけど、魔力視なかったら地味だ。


 魔剣も地味なのだろうか、探すの止そうかな。




『魔法って何だろうな』

「えっ、今更」

『うん、楽しいんだけど、物理法則を無視してるのが段々と我慢できなくなってきた。突っ込みたくって仕方ない』

「ちょっと考えてみるよ」


 魔法は制御が解けると元の魔力に戻る。

 つまり、魔力で物を作り出している訳だ。

 という事は創造魔法って事じゃないかな。


「創造魔法って結論が出たけど」

『やっぱり、魔力が何か分からないとこの問題は解決しないか』

「魔力は何にでも変わる不思議エネルギーって事で良いじゃない」

『不思議は良いんだけど、どういうたぐいの不思議なのか知りたい』

「駄目だよ。禁忌に踏み込んでる」

『考えも浮かばないし、しばらくは諦めるよ』


 魔力ゴーレムに安全にスキルを入れられるようになったので、銃魔法をパワーアップする事にした。

 魔力ゴーレムに銃魔法を使わせる。

 銃身を20センツだったのを60センツにして、爆発の威力も二倍程に増やす。

 念動で浮かせた木の的に撃ったら上手くいったので、次はホーンラビットを狙う。

 50メートラ程の距離だったが、命中率はそこそこだった。

 魔力ゴーレム十体に一斉に銃魔法を撃たせると中々迫力がある。

 試験はこんな物で良いだろう。




 解体場は今日も混雑の様相だ。

 ティルダを探して子供をかき分ける。


「よう、ティルダ元気にしてたか」

「あっフィル。聞いて、聞いて、ジャジャーンなんと魔力放出覚えたんだ」


 覚えるの早すぎじゃないだろうか。

 予定では三年は掛かるはずだ。

 あれから、一ヶ月経ってないはず。


「良かったな。何か特殊な訓練でもしたのか?」

「ほんとはね、スラム住人以外に教えたらいけないのだけど、特別に言うわ。魔抜きを沢山やったの」

「魔抜きって何?」


「魔石は獲ってきたばかりだと、魔力が残っているの。魔力を充填して魔道具に食わせるのは問題ないけど、吸い取るのは問題があるわ」

「聞いた事がある確か魔力疲労だったな」


 他人が入れた魔石の魔力を吸い取ると、疲労状態になってしばらく動くのもつらい。

 そうか、魔抜きというのは魔石から魔力を吸い取って、魔石をリセットする行為の事だろう。

 それがどういう訓練になるんだ。


「辛いのだけど、魔力を吸い取って一つの魔石に集めるの。そうすれば空の魔石と満杯な魔石の出来上がりって事。スラムの人間にとっては割りの良い仕事よ」


 魔力を集める為に何度も吸収と充填を繰り返したのか。

 これを使えば魔力放出が簡単に覚えられる。

 やばい事教えてしまったか。


「ごめん、おまじないは秘伝なんだ。誰にも言わないで欲しい」

「やっぱり、効果あったんだ、あれ。どうもそんな気がしたんだ」


「そういえばギルドで魔抜きの仕事って聞いた事がないな」

「冒険者にとって魔力疲労は致命的よ。魔力疲労が戦闘中に起こると簡単に死ぬから、魔力疲労を病的なほど恐がるわ」


 魔力疲労は冒険者にとって鬼門だな。

 でも、魔石から魔力を補給するのも止められない。

 そういえば、マリリから冒険者の持っている魔石に触ると殺されても仕方が無いって言われた。

 魔石に他人の魔力を入れるだけで暗殺出来るのなら、納得出来る行動だ。


 魔抜きの仕事は誰もやりたがらないから、スラムの人間の仕事になっているんだな。


 スキル獲得のお祝いと言ってホーンラビットを渡し、ティルダと別れた。


『魔力疲労っと。また謎が増えたな』

「魔力疲労は禁忌じゃないから、ギルドの資料室で調べられるよ」

『よし、行ってみようぜ』




 資料室を利用するついでに受付嬢に簡易魔道具を貢いでおいた。

 フェミリに簡易魔道具について聞くと今のところ問題はない。


 ギルドの資料室はガランとして相変わらず人が居なかった。

 今日は生意気なエルフも居ないみたいだ。


 魔力疲労は他人の魔力を吸い取ると起こると書いてあった。

 その理由として魔力の型が一人一人違うのではないかとある。

 続いて、拒絶反応の一種だとあった。


 つまり一人一人の血液型が違うみたいな事になっているのか。

 健康被害はないらしい、ただ三十分ほどもの凄くだるくなるだけだ。


 風潮としては忌避される傾向にあると書いてある。

 そうだよな、進んでだるくなる奴は居ない。

 体内に影響を及ぼすスキルが拒否できるのも、魔力の型の違いだろうと推測されていた。


「ライタ、満足した?」

『そうだな、型が違うんじゃ仕方ない』


 そうだ、魔力ゴーレムを他人の中に入れた事がない。

 どうなるのだろう。


 窓口にいる冒険者に魔力ゴーレムを当てると、魔力ゴーレムが潰れた

 魔力ゴーレムが千切れたりはしないが、体の表面で変形する。

 役に立たない知識が増えたな。




 検証に夢中になっていたら、前に絡まれた酔っ払いに出会った。


「おっ、お前はこの前の。覚悟しろ。今日は酔ってないからな」


 めんどくさいので、加減した銃魔法を撃つ。


「痛い。痛いって……勘弁して下さい。ごめんなさい」


 五発目ぐらいで泣きが入った。


「これに懲りたら、たかろうとせずに酒代ぐらいは自分で出すんだな」


 いつの間にか人垣が出来ていて、ひそひそ声が聞こえた。


「あれは何のスキルだ」

「魔法にしては加速の仕方がおかしい」

「熟練の魔法使いだな」

「さすが開拓破壊魔」


 手札が一つばれたが構う物か。

 三つ魔法を同時に操るぐらい熟練の魔法使いならこなすだろう。


「ライタ、今度は何しよう?」

『銃で大物を撃たせろよ。約束したろう』

「そんな事もあったね。よし、オークの領域に挑戦だ」

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