第10話 簡易魔道具
「腹案って何?」
『そうだな、魔石に契約魔法でスキルを許可しろよ』
「駄目だよ、禁忌だろ」
『いいじゃん、失敗しても魔石が死ぬだけだ』
うーん、どうしよう。
魔石が死ぬのは構わないけど、こんなに頻繁に禁忌犯して大丈夫だろうか。
でも、新商品のアイデアは無いし。
「気は進まないけど、マリリの為だ」
南門を出て草原に行き、グラスウルフの魔石を地面に置いて、実験に取り掛かる。
何か嫌な予感がするんだよな。
ぎりぎりまで離れて契約魔法を掛けよう。
10メートラほど魔石から距離を取る。
「契約魔法、照明スキルを許可する」
何も起こらない。
おっかなびっくり魔石に近づいて突く。
失敗だな。
『魔力を充填してからやったらどうだ』
魔石に魔力を充填して、前回と同じように魔石に許可する。
刹那、魔石が閃光を放ち爆発。
うわ土ぼこりをもろに被った。
耳がキンキンする。
『ふう、禁忌は地獄だぜ、ブービートラップが至る所に仕掛けてありやがる』
「まったくだ。もう辞めたい」
『おいおい、ここまできて辞めるのか。成功すればノーベル賞もんだ』
知識を探ってノーベル賞を調べる。
世界中で称賛されるのか。
もうちょっと付き合ってみる方へ気持ちが傾く。
今度は、そうだな、罪状鑑定でやりたい。
罪状鑑定なら暴走しても爆発しないだろう。
同じようにして、魔石に罪状鑑定を許可する。
以前より遠くに離れて実施した。
今度も爆発。
ライタの時は体は爆発しなかったな。
何が違うんだろう。
体の仕組みだろうか。
そうだ前に体を魔力視で見た時に、胸の魔力が溜まっている所は何もなかったが、頭の中心の魔力はかなり複雑になっていた。
これを複写すればいいのか。
「頭の中の魔力をコピーすれば良いような気がするんだけど。どう思う」
『魔力走査してみろよ』
うわ、凄いこんなに複雑になっているのか。
魔力が何本も集合分離を繰り返し、一見して無秩序に走る。
『まるで、魔力の回路、魔力回路だな。こうして見ると中央で制御しているのが機能的にOSで、回りのスキルがプログラムだな』
ライタの言葉の単語の幾つかが分からない、後で調べておこう。
アドバイス色々聞いて契約魔法を実行に掛かる。
「契約魔法、制御魔力回路と罪状鑑定スキルを許可する」
制御魔法回路とスキルは頭の中の魔力回路をイメージ。
爆発はしなかった。
ヒヤヒヤしながら魔石に近づいて拾う。
あれほんの少し表面が崩れて小さくなっている。
これは魔道具に魔石を食わせた時の現象だ。
魔石から無罪のイメージが絶え間なく送られてくる。
成功したのかな。
魔力走査で魔石を調べる。
魔石の中に制御とスキルの回路があった。
次はどうしよう。
照明を作ってみたいな。
いつの間にか罪状鑑定をつけた魔石は崩れて無くなっていた。
もう少し工夫がいるようだ。
工夫は後で考えるとして、成功作と同じように照明のスキル付き魔石を作る。
爆発。
何でだろう。
照明のスキルを持っていないから魔力回路の複写が出来ないのか。
ということは持っているスキルなら制御回路をつければ魔石に許可しても爆発しない。
便利な道具を作るならスキルを集めないと。
出来上がったこれをどう呼ぼう。
そうだ、偽魔道具だと売るのに困りそう、簡易魔道具でいいな。
そして、スイッチ機能を持たせた簡易魔道具を作った。
売るには禁忌を使っているのがばれると、さすがに不味いよな。
形を変えるのは変形スキルでなんとかなるとして、色はどうしようか。
塗料で塗るぐらいしか思いつかない。
早速店で塗料を買い塗ってみた。
簡易魔道具を使うと一回り小さくなり表面の塗装が剥げる。
うーん、上手くいかないな。
『図書館みたいな物はないのか』
「本なら、冒険者ギルドの資料室にあるよ」
ギルドの資料室は利用者が誰も居なくて閑散としていた。
かび臭い臭いとインクの臭いと革の臭いがする。
ふと人が居るのに気づく。
俺が声を掛ける前にあちらから声を掛けてきた。
「珍しいわね。こんな所にくるなんて。どうせ碌でもない事を調べに来たのでしょう」
彼女はエルフで弓を背中に背負っている。
髪は緑でシャツも緑、ズボンも緑、緑尽くしだな。
おまけに魔力も緑ときた。
年齢は二つぐらい年上だろうか。
生意気そうな目つきでこちらを睨んでいる。
「失礼な奴だな」
「試しに言ってみなさいよ」
「魔石の中まで色を付けたい」
「そんな事も知らないの、抽出スキルと混合スキルを使えばいいわ。スキル大全に載ってるから、読んだらさっさと消えて」
「言われなくともすぐ出て行くよ」
本を読んだところ方法が分かった。
抽出スキルで魔石の色を抜き、混合スキルで染料を混ぜるという寸法だ。
宿に帰ると犬ゴーレムの材料が届いていた。
小犬のぬいぐるみで部屋が埋まっていくとなんだか平和な気分になる。
百体の犬ゴーレムは一部屋に収まらなくなり部屋を別に借りる事に。
そして、平和な気分で気持ち良く眠りに入った。
Side:セシリーン
「ここが例の現場で間違いないんだな?」
「はい、セシリーン様。貰った地図では間違いないと思います」
禁忌を犯す実験の場が道端とは犯人は何を考えているのだろう。
「よし、この辺りに手掛かりがないか徹底的に探せ」
私の命令を聞いて男達は一帯に散って怪しい物がないか探し始め。
しばらくして部下の一人が報告にきた。
「報告します。あそこに埋めた後があります」
「よくやった。掘り返してみろ」
「了解しました」
その、掘り返す現場を近くで観察する。
「魔獣の死体が出てきましたぁ!」
むっ、この頭はウルフ系の魔獣だな。
魔石と皮が無いな。
魔獣を使って道端で禁忌の実験をしたのか。
なんか、しっくりこないな。
まだ情報が足りない気がする。
「こっちからは人の遺体です」
こっちが本命か、惨たらしい遺体だ。
禁忌の実験の犠牲者なのか。
骨ごと齧られている場所が幾つもあるな。
歯型からすると魔獣に齧られた痕に見える。
これだけだと、魔獣の被害者を葬ったとしか考えられない。
となれば禁忌を使って魔獣を撃退したという線が一番怪しい。
報告が上がったのが五日前。
五日前にここで何かあったな。
遺体の状況もそれを裏付けている。
二番目の現場に行くか。
Side out
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