第11話 銃魔法

 魔力の溜めをライタに使わせるのはかなり前に思いついた。

 並列システムの内の一つが魔力の溜めをすれば、魔法の威力を上げられる。


 草原に行き、1メートラ程の火球を作り飛ばした。

 成功だ。

 溜めに一分ぐらい掛かったが、必殺技だからしょうがない。


 実戦では溜めの時間が隙になるが、その間はゴーレムの前衛で対処しよう。

 機会があれば、大物の魔獣に使ってみたい。


 次に銃を魔法で再現する事にした。

 土魔法でライフルリング付きの銃身を作る。


 魔法の魔力は最初にガツンと消費する事になっていた。

 維持にはさほど魔力を食わない。

 それでも、魔力の受け皿の関係で20センツ程しか銃身を伸ばせない。

 溜めを使えば際限なく伸ばせるが、準備なしで使いたいと思う。

 次に弾を土魔法で作り、火魔法の爆発で弾を飛ばすという目論見。

 並列システムを三つ使った荒技だ。


『ひゃっはー。撃つぜ撃つぜ。魔獣は消毒だ』


 あっ、爆発したな。

 弾が銃身に詰まったのか。


『リロードする時は画面から射線を外して撃つ。次弾発射』


 お、また爆発だ。

 火魔法が強すぎたのか。


『次だ、次。リコイルが内臓に響くぜ』


 なんか言っているが、爆発は変わらない。


 銃は離れて宙に浮いているので被害が無いのが嬉しい。

 結局まとも撃てるまで、三十回ほど試射。


 手元から加速するという魔法の原則を無視出来る攻撃が手に入った。




 ウッドゴーレム十体を護衛に、グラスウルフ狩りに行く。


 巣穴に煙玉を放り込んだ。

 踊り出たグラスウルフを銃魔法で撃つ。

 おっと外した。

 ゴーレムに押さえ込ませ、止めに銃魔法を撃つ。

 魔法はパンと音を立て、魔獣の頭に穴が開く。

 威力は充分だな。


 連射も試したが、一秒間に一発が限界だ。

 並列システムの数を増やして試したら、一秒間に十発ほどの連射が可能になった。

 全頭、問題なく仕留めても、ライタがもっと撃たせろとうるさい。

 後で大型の魔獣を一杯撃たせると約束して黙らせた。


 帰り道突然ライタが話しかけて来る。


『不思議だと思わないか』

「何が?」

『なぜ普通の人は魔力を感じられない』

「世界に満ちている魔力が膨大で禁忌を使い見るとパンクするって事だろ」


『他の方法はないのか。たぶんスキルはレベル0の状態で眠っている。そして、何度も特定のイメージを持ちながら行動するとレベル1になると思う』

「筋力強化の時は重い荷物を背負わされて、軽くする為に魔力で補助するように念じたんだっけ。気休めにやっとけとライタに言われたからやっていたが、意味あったんだな」

『それで三年で覚えられた』

「契約魔法の許可をしたら、一発で魔力視を覚えたけどこれは例外かな」

『筋力強化の許可を出したら、たぶん覚える代わりに骨が全て砕けて大怪我する』


 禁忌は禁忌って事な気がする。

 魔力視を正規の手順で覚えるには、伝説でもそういうのが無いってことはもしかしたら、百年ぐらい掛かるのかも。




 草原から引き上げ、ティルダの所に行き話し掛ける。

 ティルダは尻尾を立てて俺に寄って来た。


「今回も頼む」

「まいどあり」


 ゴーレムに担がせたグラスウルフを降ろすと、スラムの人間の目つきが変わる。

 ひそひそ声が聞こえ、弓じゃねえよなと言っていた。

 ああ、銃創が不思議なのか、矢傷とは微妙に違うのだろうな。

 解体を毎日していれば、違いが分かる様になるのかも。


「魔法で仕留めた」


 一同は納得の表情になった。




「フィル、魔法使えたの」


 ティルダが尊敬の眼差しで俺を見つめる。

 どうも、ズルしている感があって素直に喜べない。

 何故なら、ティルダが戦闘用のスキルを得ようとして、頑張っている話を聞いていたからだ。

 かと言って俺の真似はどうあがいても無理。

 魔力視を得るのは命を天秤にかけなきゃならない。

 そうだ、俺が筋力強化を覚えたみたいに、イメージなら教えられるかも。


「覚えられるのなら、どんなスキルが覚えたい?」

「今、考えているのは魔力放出」


 魔力放出は魔力を出すスキルで、前衛の戦士にはもってこいのスキルだ。

 なぜなら、魔導金属の剣に魔力放出を掛けると魔剣と似たような効果を発揮する。

 魔剣と違って魔石を食わせなくても発動出来るから、魔力がある限り連発可能だ。

 それに比べ魔剣は魔石を食わせるのに時間が掛かるので大きな隙が出来る。

 その為、使い勝手の良いスキルと言えた。

 魔導金属の剣は魔剣と区別される為、魔導剣と呼ばれている。




「それなら、魔石に魔力を込める時のおまじないを教えるよ。胸の奥から手に魔力が伝わって放出するイメージを持ったら良い」


 このイメージで合ってるはずだけど、違っていても問題はない。


「初めて聞いた」

「でも、損はしないだろ」

「そうね、お金も掛からないし。教わったお返しに何でも聞いて」


「次はゴブリンをやろうと思ってる。何か情報がある?」

「ゴブリンは大繁殖して、街に攻めてくるんじゃないかと、もっぱらの噂よ」


「村でも魔獣の様子がおかしいって言ってた」

「うん、ゴブリンだけじゃないみたい。他の場所も軒並み大繁殖らしいわ」


 それなら派手に乱獲しても問題ないな。


 今後やる事は簡易魔道具の完成、犬ゴーレムの納品、ゴブリン退治だな。


Side:セシリーン


 この村が二番目の現場だな。

 見た感じ普通の村に見える。


「お前ら冒険者の装備に着替えて、聞き込みに行って来い」

「「「了解」」」


 部下が聞き込みに行っている間に魔道具の通信機で連絡を取る。

 驚いた事に新たな禁忌の報告が上がったそうだ。

 三度、新たに禁忌を犯して暴走したらしい。

 詳しい報告は次にどこかの街に立ち寄ったら受け取れる手はずになった。


 犯人め、禁忌がどんなに危険なのか分かっていないらしいな。

 過去には都市一つ吹き飛んだ事もあるんだぞ。


 しばらくして、部下が報告をもたらす。


「五日ほど前に馴染みの行商が来たそうです。アドラムの女商人でマリリという名前です」


 それは大いに怪しい、調べる必要がありそうだ。


「怪しい点はなかったか?」

「ありません。それと、村人に死者や行方不明は出ておりません。女商人の護衛がラッシュボアを魔法で三十匹ほど倒したそうです」


 実験の犠牲者は居ないのか。

 魔法使いはプライドが高い。

 護衛などしない。

 魔法使いが護衛とは益々怪しいな。

 ラッシュボアは街の一般兵でも倒せるから、護衛の強さは分からんな。

 魔力千以下の自称魔法使いだと助かるんだが。


 さて、アドラムに行くとするか。


Side out

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