第7話 ギルド登録
朝になり階下の喧騒で目が覚め、食堂で朝食を食べ宿を出た。
着ぐるみゴーレムを一体作りお供にする。
冒険者ギルドは大通りにあり、位置的には街の中心にあった。
この付近では一番大きな建物で剣と弓の意匠の看板が掛かっていた。
依頼を探すためだろうか、冒険者が引っ切り無しに入って行く。
手ぶらの俺を見て冒険者は何だ依頼主かと言う。
依頼主の人間には絡まないらしい。
声を掛けられる事無く、新規受付の窓口へ行く。
受付嬢は赤毛のきつい目つきでグラマーな体型の人だ。
「加入したいのですが」
「書類を書いて出してね。書けない所は空欄で良いから」
受付嬢から紙を貰い書く。
名前はフィルと。
年齢は十五歳。
出身は今いる街のアドラムと。
魔力は54で良いだろう。
スキルはゴーレム使役と筋力強化だな。
「出来ました」
紙を一瞥した受付嬢は。
「ふーん、手ぶらな訳は何なのかしら」
「何か不味いですか」
「別に良いわよ。スキルを隠す人は沢山いるから。気にいったわ、フィル君。フェミリよ、よろしく」
「よろしく」
しばらくしてフェミリはカードを持ってくる。
このカードを作る技術は神が携わっていると噂があった。
本当だろうか。
「おい、お前」
フェミリに別れを言って窓口を後にしようとした時に後ろから声が掛かる。
「何だよ」
振り返り俺は言った。
髭面の男が酒瓶片手にこちらを睨んでる。
吐く息が酒臭い。
「デュオスキル使いの癖にいい気になっているんじゃねぇぞ」
デュオスキル使いというのは二つスキルを持っている人の事だ。
一つでユニスキル使い、二つでデュオスキル使い、三つでトライスキル使い、四つでクアッドスキル使い、五つでクイントスキル使い、六つでセクススキル使い、それ以上だとマルチウムスキル使いとなった。
大体十歳までに三つスキルを持っているのが当たり前でユニスキル使いは特に差別された。
俺は現在マルチウムスキル使い何だが、言っても誰も信じないだろう。
「もしかして喧嘩売ってる?」
「おうよ」
その言葉を聞いた途端、俺は風魔法のハンマーで男を叩く。
あれ、一撃で沈んだぞ。
この人弱いな。
「Cランクが一撃だ」
「おい今の見たか。いきなり、やられたぞ」
「風魔法で攻撃したんだろ」
「風圧で風魔法を避けれない奴がCランクとは。質が落ちたな」
冒険者達が色々と噂している。
「これ、どうしたら良いんだ」
「放っておいていいわよ。どうせ酒代せびりだから」
フェミリが呆れたような口調で話す。
「そうですか。じゃあ、もう行きます。手続きありがとう、フェミリさん」
俺は言葉を掛けてからギルドを後にした。
今日はFランクのホーンラビットを狩っても良いのだが、上のクラスの獲物を狙いたい。
Eランクのグラスウルフを狩る為には。
そうだ、今回は魔木のゴーレムだな。
それに関しては安くゴーレムを確保する方法を考えた。
それはリサイクルという考えだ。
ライタの知識の中にあったもので、ゴミからゴーレムを作るのを考えついた。
魔木工々房に行く。
「すいませーん」
若い男の職人が出てきて、面倒な客が来たという顔をする。
「なにか。注文だったら、家具屋に言ってくれ。うちは作るだけなんだ」
魔木は値段が高い。
だから裏技で魔木を調達する。
「魔木の端切れを貰いにきました」
手間が省けて嬉しいのか態度をコロリと変えた。
「おう、そうか助かるからいいが、悪いね。魔木のゴミは燃えづらいから、処分に困るんだ」
裏のゴミ捨て場に案内された。
積み木ぐらいな大きさの色々な形をした木片が沢山ある。
木片からゴーレムを作成。
継ぎ接ぎ模様の人間大のウッドゴーレムが出来上がる。
軽く動かしてみると少し妙な癖が。
仕方ない
同じ要領でウッドゴーレムを合計五体作った。
『おい、このゴーレム癖がありすぎなんだよ』
ライタが早速文句を言って来た。
「しょうがないよ、ゴミなんだから。お金が溜まったらもっと良いゴーレム作るから」
『まあいい、慣れれば癖のある機体も楽しいかもな』
ゴーレムの武器も
東門を出ると木と草が疎らに生え、どことなく寂しげな印象を与える。
なんか大物の魔獣が出そうな雰囲気だ。
もし、出てきたらゴーレムを囮にして逃げよう。
しばらく歩くとお目当ての川が見えてくる。
川幅は飛び越えられるぐらいの狭い川だ。
川原にあった石塊を手に取り、ゴーレム使役のスキルを使う。
石はメイスの形になり申し訳程度に手足と頭が出来た。
ゴーレムで道具を作るのはわりと知られた手法だ。
スキルを切っても形はそのままで残るから土とかの脆い材料でなければ使えた。
しかし、余分な手足と頭が生えるのが欠点で、結局その場しのぎにしか使われない。
遠くから、魔獣の群れが近づいてくる。
ゴーレム武器のお披露目かなと思っていたら、群れはポリグタだった。
ポリグタは豚ほど大きさのネズミの仲間で、魔獣ではない。
川に水を飲みに来たのだろう。
俺がじっと動かずいるとポリグタは川の側に寄ってきた。
一匹に狙いを定めて風魔法を放つ。
風魔法は頭をザックリと切り裂く。
一発で仕留められた。
ポリグタの肉は美味い、これを昼飯にするか。
ゴーレムでポリグタを運び、東門の解体場に行く。
解体場は混雑していなかったがオーガが運び込まれるのを見た。
あの巨体は生半可なゴーレムでは無理だ。
ポリグタを解体して、食べない肉は売り、自分用の分を持って解体場の向かいの酒場に入る。
酒場のマスターに話し掛ける。
「これ料理して貰えますか」
「おおっ、持込歓迎だ。何せ冒険者ギルドの店だからな」
少し経つと肉の焼ける良い匂いが漂ってきた。
ステーキになった肉が運ばれ、木皿の上の鉄板に乗った肉はジュウジュウと音を立てる。
料理を前にして唱えた。
「この糧が血肉となりスキルになりますように」
さあ、食べるぞ。
果物を煮込んだソースがステーキに良く合い、口にすると肉汁と合わさって絶妙だ。
パンとスープも美味い。
心行くまでステーキを楽しんだ。
食事も済んだし、グラスウルフ退治といきますか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます