【ヘンゼルとグレーテル】 きらきらの道しるべ
口減らしのため両親に森の奥深くに捨てられてしまったヘンゼル(兄)とグレーテル(妹)。だが、兄には秘策があった。
「そんなにめそめそするなよ、グレーテル」
「だって、あたしたち捨てられたのよ。こんなに深くて気味の悪い森のど真ん中に。今の聞こえた? オオカミかクマか、おそろしい獣の声がしたわ! きっと朝には、あたしたち食べられて跡形もなくなっているわよ」
「怖いこと言うなよ。大丈夫、実はここに来るまでに、白い小石を目印に落としながら来たんだ。暗くなってお月様が顔を出せば、小石を照らして輝かせてくれるよ。ぼくたちはそれをたどって家へ戻ればいい」
「小石って、これのこと?」
グレーテルはスカートのポケットから輝く小石を取り出した。
「そうだよ。なんだ、お前もぼくと同じことをしようとしていたのか……兄妹なんて、考えることは一緒だな!」
「ちがうわよ、お兄ちゃん。これは、ここに来る途中森の中で拾ったの。きらきらしていてとてもきれいだったから。ほら、こんなにたくさん」
ヘンゼルはがっくりと膝をついた。
「お、終わった……ぼくたち、もう獣に食べられるか、お腹を空かせて飢え死にするしかないんだ……」
「まるで宝石みたいね。見てると少しだけ心が落ち着くの。……あれ? お兄ちゃん、あんなところにおいしそうな家があるわ」
「ばかだね、グレーテル。おいしい家なんてあるわけないじゃないか。家は大きいとか小さいとか、古いとか立派だとか言うのさ。ちなみにぼくらが住んでた家は、みすぼらしい」
「でも、本当よ。屋根はケーキで、窓枠はお砂糖、壁はパン、ドアは板チョコ、棒つきキャンディがお花みたいに花壇に咲いて並んでるわ」
「そんなまさか……ほ、本当だ! おいしそうな、お菓子の家だ!! やったぞグレーテル! これだけの食料があればぼくたち、しばらく飢え死にしないで済む」
ヘンゼルとグレーテルは夢中でガリガリ家を食べた。家主の悪い魔女が一生懸命声を張り上げ話しかけても、まったく耳に入らないほどだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます