◆その865 勇者の剣5
ミケラルドによる明確な殺意。
ガイアス、アリス共に息を呑み言葉を失っている。
「アーティファクトには成長の余地がある。そうですよね、ガイアスさん」
ミケラルドの質問に、最初ガイアスは戸惑いを見せた。
しかし、それに気付いた時、ミケラルドの殺意の意味を知った時、ガイアスはハッとミケラルドを凝視したのだ。
「アーティファクトの成長って……どういう事ですか?」
アリスの質問に、ミケラルドが答える。
「アーティファクトの一段階上……
「っ! レ、
「
その説明を聞いた時、アリスはようやく理解した。
ミケラルドの殺気の意味を。
「ま、まさか……!?」
そんなアリスの衝撃と共に、ガイアスが小さな溜め息を吐く。
「ふっ……そうか、確かにそうすりゃ勇者の剣は成長し、
肩を
「確かに
「おいおい聖女の嬢ちゃん、アンタは世界に必要な存在だ。大体、聖女なくして勇者の覚醒はないんだからな」
「っ! ミケラルドさん、思いとどまってください!」
「さぁ、名残惜しいが、スパッとやってくんな!」
「ミケラルドさん!」
直後、ミケラルドの打刀が振り下ろされる。
絶命必至の絶対強者による一撃。
ガイアスは満足気に笑い、アリスは余りにもショッキングな状況に目を瞑る。
「てい」
直後、ミケラルドの間の抜けた声が響き渡った。
振り下ろされた
「おろろん」
ふざけた声と共に分裂体は消失。
この一連の流れに、ガイアスとアリスは目を丸くさせていた。
ぱちくりとしたアリスの目を覗き込み、ミケラルドが失笑しながら手を振る。
「おーい、アリスさーん? お元気ですかー?」
ミケラルドが何度か手を振ると、アリスはようやく覚醒へと至った。
「………………はっ! ミ、ミミミケラルドさん!?」
「ははは、いやですねぇ。私が好き好んで殺生する訳ないじゃないですか」
肩を
「じょ、冗談にしても限度ってものがあるでしょうっ!」
「えー、でも、たとえ自分の分裂体といえど、殺気なしで倒すのなんて難しいですよ」
「だから! 無駄に溜めなきゃよかったじゃないですか! 私もガイアスさんも気が気じゃなかったんですからっ!!」
怒るアリスの指摘に、ミケラルドはガイアスをちらりと見る。
「そうなんですか?」
「ちょっとだけ花畑を歩いた気がしたが……まぁ、白昼夢ってやつだな」
と、
「だそうです」
そう言ってミケラルドはアリスに視線を戻す。
「心配した私が馬鹿でしたっ!」
少年のようにケタケタと笑うガイアスを前に、ついにアリスが諦めを見せる。そして、深い溜め息の後、仕方なしという様子でミケラルドに聞くのだ。
「……それで、今のは一体?」
「以前からこの世界のシステムを利用して【
「それが……これですか?」
アリスは、Vサインを天井に向けながら倒れるミケラルドの分裂体を指差した。それはもう嫌そうな顔で。
「その時出来た【
ミケラルドが思い出すように言った後、ガイアスがハッとして聞く。
「っ! もしかして、あの水龍の【魔槍ミリー】も
「ご明察」
ミケラルドはガイアスを指差してそう言った。
「ジェイルさんにも【魔剣ジェラルド】って武器をあげましたね。勿論、
次々と明らかになる
ひけらかす訳でもなく、淡々と事実を伝えるミケラルド。
「はっ、おったまげたな……」
顔を揉み驚くガイアスと、
「はぁ、呆れました……」
相変わらずのアリス。
「しかし、今回はその限りではありません」
「「え?」」
ミケラルドは再びガイアスを指差し、先の話を掘り返すように言った。
「ガイアスさん、私が先日ここにお邪魔した時、私は何て言いました?」
ミケラルドが促すように聞くと、ガイアスはポカンと口を開けたまま、先日の突然の来訪を振り返っていた。
――――二人で叩き、
その言葉を思い出した時、ガイアスは震える瞳でミケラルドを見たのだ。
「……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます