◆その681 乱射事件~犯人は四歳の吸血鬼~
「グァアアアアアアアアアッ!?!?」
雷龍シュガリオンの頭上から降って来る、爽やかな笑みを浮かべる
ミケラルドに固定され、動く事も叶わない雷龍シュガリオン。
着弾、着弾、また着弾。
血反吐を巻き散らす雷龍シュガリオンへの攻撃は止まらない。
「ぶっちゃけこれに高さは必要ないんですよ。速度さえ出ればいいんですから。衛星軌道上から落とすメリットは視覚化を困難にさせ、ある程度座標を指定出来るからです。速度は魔力で、弾は自分を、なんというコストパフォーマンス! はははは、今日もマナポーションがうめぇ!」
闇空間から取り出されたダース単位のマナポーション。
そう、分裂体には
「ひ、卑怯な……!?」
「卑怯っ!?」
雷龍シュガリオンの言葉にミケラルドの声が裏返る。
「そんな大きな身体に生まれて来て卑怯ですね!? 龍族に生まれて来て卑怯ですねぇ!? 強者であるはずの龍族が鍛えちゃって卑怯ですねぇっ!? 最強の雷龍が吸血鬼に本気出しちゃって超卑怯ですねぇっ!?!? 魔法も特殊能力も使って、管理者である霊龍にお膳立てしてもらって勝負の場を作ってもらって、負けそうだから『卑怯な!?』とかふざけてるんですかっ!?!? そんな泣き言ほざいてる暇があったらさっさと降参してくださいよっ!! こっちも暇じゃないんでねぇっ!!!!」
((口先大魔王だ……!))
この場にいる誰もが思考を統一した瞬間だった。
咬王ミケラルド。彼は自分に矛を向ける者を絶対に許さない。咬みつき、放さず、喰い千切るまで容赦しない。
勇者エメリーはこれを見て、小さく零す。
「何か……私の知ってる勝負とちょっと違うような……?」
これにリィたんが答える。
「ふむ、ではエメリーの知ってる勝負とは何だ?」
「こう……力と力でぶつかる感じ……でしょうか」
「拳と拳か?」
「あ、いえ……そういう訳ではないですけど」
「人は拳以上の殺傷能力を求め剣を作り、遠距離からの攻撃を可能にするため、弓を作った。どんな武器を手にしたにせよ、勝負の場に立ったからには何をされても文句は言えない。肝に銘じておけ」
「は、はい!」
「アレは、ミックが用意した超遠距離用の武器……いや、ミックの分裂体がぶつかってるから近接用なのか?」
そこまで言うと、リィたんの足に抱き着いてるナタリーが言った。
「ミックは笑いながら『ミック弾』って言ってた」
「何だ、ナタリーは知ってたのか」
「私の実力だと事前に知ってないと危ないからって」
「ふむ、確かにな。この余波はナタリーにとっては危険か」
すると、聖女アリスが言う。
「そういうところだけはちゃんと考えてるんですよね……あの人。でも、あんな勝ち方したら、雷龍シュガリオンは認めてくれないと思いますよ?」
「ミックは……ひゃっ!?」
何かを喋ろうとした矢先、新たな余波がナタリーを襲う。
リィたんが防護用の魔力壁を用意すると、アリスが聞く。
「ミケラルドさんがどうしたんです?」
「ふぅ……ミックは言ってた。それが狙いだって」
「「っ!?」」
それを聞き、ジェイルの目が細く鋭くなる。
「雷龍シュガリオンを怒らせるため? いや、それではミックにメリットがない。それに、ミック弾のあの乱射に雷龍シュガリオンは成す術ない。既にボロボロで意識すら混濁している様子だ。このまま勝ちが決まるぞ……いや?」
「よくわからないですけど、ミケラルドさん……この勝負には絶対勝つって気概を感じますよね」
「「っ!!」」
ジェイルの求める答えとは違うものの、勇者エメリーが出した一つの結論は、リィたんとジェイルに全てを理解させた。
「「そういう事か、ミック……!」」
ニヤリと笑う二人に、アリスがゾクリと反応し自分の肩を抱く。
(もしかして……もしかしてミケラルドさんは、霊龍の意図すらも利用しようと……?)
ミック弾の着弾、着弾、また着弾。遂に雷龍シュガリオンは苦痛の声すら漏らさなくなった。着弾の度にその身体は跳ね、耐える事も出来なくなった。力尽き、ぐったりした様子の雷龍シュガリオンを見、ミケラルドは「ふぅ」と息を吐いてから
「まさか初撃で決まるとはな。流石の私もこれは予想だにしていなかった……」
「初撃で決める他なかったんですよ」
「ふむ、完全に失神している。うーむ……?」
「どうしたんです?」
「龍族の失神って……何だ?」
「新しい概念みたいに言わないでくださいよ。まぁ、世界史的に見ても稀有な事態ではありますよね」
「じゃあ回復しますね」
「ミ、ミックがするのか……?」
「その方が屈辱的かと思って」
「わかっててやってるのか。いや、お前の事だ、それも狙いの一つなんだろう……好きにしろ」
呆れた様子の
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