◆その609 コミ龍ケーション1
「
ミナジリ共和国の南西、そして法王国の西にあるイシス山脈。
炎龍ロードディザスターがロイスを生み、そのロイスが剣鬼オベイルの下にいる今、この一帯を縄張りにしているのが地龍テルースである。
地龍テルースは久しぶりに会う
「よく来たわね、リィたん」
「ほぉ、ようやく新しい我が名に慣れたか」
「邪龍と呼んだ方がいいのかしら?」
テルースが微笑みながらリィたんをからかう。
「そ、それはもうよしてくれ」
「あら珍しい。いつもこうからかうと顔を真っ赤にして怒ってくれたのに」
「それが成長というものだ」
「……あれからもう三ヶ月ね」
「あぁ、長いようで短かったな」
「ミケラルド殿はお元気かしら?」
「最近益々力を付けている。ミック自身も、ミナジリ共和国も」
「国が?」
首を傾げるテルース。
その疑問を解消したのは、リィたんではなかった。
「ミック自身の大立ち回りがキッカケで、ミナジリ共和国に人口が流れつつある」
「……やれやれ、テルースと水入らずという訳にもいかなかったか。こんなところへ何の用だ? 木龍グランドホルツ」
「お前と同じくテルースに呼ばれたのだ。それと、私の事は【
「ナタリーからもらった名前、随分と気に入ったようだな」
「元は風龍、流行の風にも乗るべきかと思ってな」
「ははは、それは言い得て妙だな」
ギクシャクした空気の中、テルースが微笑み、三人の前に土製の椅子とテーブルを用意する。
「何故
椅子に腰かけ、テルースに聞くリィたん。
「一度この三人でお茶を呑んでみたかったの」
「肝心の茶は?」
「確か、リィたんにお願いしたはずだけれど?」
「あ、そういえばそうだったな。ふむ、仕方ない。とっておきだぞ」
闇魔法【闇空間】の中からティーセット一式を取り出したリィたんに、
「水龍が闇魔法とはな」
「人間の茶が気に入って
「……何故それを知ってる?」
「ミックは何でも教えてくれるぞ」
「くっ、誰にも言うなと言っておいたのに……!」
「安心しろ、ミックは言わずに書面で教えてくれた」
「……だから狡王だのと呼ばれるんだ、アイツは」
「ミナジリ産の紅茶を大量に買ったとか? 木龍が金とはな」
自分がリィたんに言い放った言葉がそのまま返ってきたかのような返し。
仏頂面になった
「何故、リィたんを?」
その質問に、テルースは先程と同じ口調で返す。
「一度この三人でお茶を呑んでみたかったの」
そう言い切ったテルースに呆れる二人。
リィたんは周囲を見渡し、アスランがいない事に気付く。
「アスランはどうした?」
「私たちに気を利かせて……ほら、あそこで寝てるわ」
テルースの目の届く範囲。しかし三人の会話が聞き取れないような場所。
横たわりすやすやと眠るアスランを見て
「あんな軟弱でいいのか?」
「今回の出来事でそれは痛感したわ。だから二人が来る前にみっちり鍛えこんだの」
「なるほど、だから魔力が少ないのか」
「それよりさっきの話が気になるわ」
「ん? さっきというとミナジリ共和国の人口増加についてか?」
「ミックは冒険者という身分ながら法王国に大きな貸しを作った。冒険者とは名ばかり。あれはミック主体の究極の外交だ」
「外交……?」
「考えても見ろ、法王がミックに意見を求めた時、それは外からどう映る? 国の頭が同じく国の頭に助けを求めているのだ。相手が法王国という大国なら、それを成せば大きな貸しとなる。いや、頭さえ上がらなくなるのではないか?」
「そう言われてみればそうかも」
「法王は国庫を開きオリハルコンズに国家規模の依頼をした。そしてそれを成したオリハルコンズは莫大な報酬を得た。それこそ国家規模の金だ。だがしかし、オリハルコンズのメンバーはその報酬の行く先をミックに委ねたのだ」
そう言われ、テルースはリィたんをちらりと見る。
するとリィたんはお茶を啜り、得意気な様子で語った。
「無論、皆働いた分は貰った。つまり、今回は歩合制で報酬を割ったという事だな」
「だとしたらミケラルド殿は……」
「あぁ、国家規模の報酬をそっくりそのままミナジリ共和国に
「あー……」
そこまで言われればテルースも気付く。
巨額の外貨がミナジリ共和国に入った事で、ミナジリ共和国の経済は水を得た魚のように動き、シギュンの捕縛動画も全世界へと流れた。現在ミナジリ共和国は黄金の国と称され。誰もがそこに行き、今以上の生活を求める正に時の国となっているのだ。
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