その210 目指せSSS
ジェイルとレミリアの十本勝負を見たいところだったが、次の予定があったので、俺はギルド広場を後にした。予定とは
『どうだい、リィたん? 見つかった?』
『待っていたぞミック!』
リィたんの弾む声に驚いた俺だったが、既に目的が達せられていると理解し、すぐに次の行動に移った。
『今、闇空間に――』
『――受け取ったぞ』
『早くない?』
『うむ!』
嬉しそうなリィたんの声に苦笑するも、俺はすぐに転移を始めた。
そう、闇空間に入れたのは、新たなるテレポートポイント。
それをリィたんが持つ事により、俺はいつでもリィたんの下へ行けるのだ。
「へぇ、よくこんなところ見つけたね」
「周囲には人里がない。どうだ? 私はミックの依頼を完了したと言えるのではないかっ?」
「バッチリだよ、これで――」
「――これでミックと遊べるな!」
遂に遊ぶって言い切っちゃったよ、この子。
俺がやる事は別段特筆すべきものはない。何故なら、今現在訓練に励んでいるジェイルとレミリアとさして変わらないからだ。
ともあれ、相手は水龍リバイアタン。少々人外的スペースは必要なのだ。
荒野とでも言うべきこの場は、格好の訓練スペース。
今の俺がこれ以上に強くなるためには、やはり相手がリィたんでなければいけないのだ。
◇◆◇ ◆◇◆
と、思ってた時期が俺にもありました。
「ぜは!? かひゅッ……うぅ……おぇ…………」
「どうしたミック? もう終わりか?」
絶命寸前の俺を前に、甘い声でそう言ってくるリィたんの感性は相変わらず独特である。
「しかし見事だったぞ、私に
「そ、そっすか……」
津波を出させるまではよかったんだよ。
だが、その威力はこれまで受けた魔法とは異質であり、強力だった。
一瞬で呑み込まれる土壁、役に立たないサイコキネシスガード。跳べばリィたんに叩き落とされ、波を逆らって泳ぎ続ける果てしなき遠泳。
身体は冷え、筋肉は疲弊し、目は虚ろになっていく。
覚醒状態の俺が完全に玩具である。いやまぁ、正にリィたんが俺で遊んでいる訳だ。
年上のお姉さんに遊ばれたい時期もあった俺だが、そうじゃない。
そうじゃないんだ、世界よ。
「さ、もう一度、だ!」
「も、もう立てない……」
「立て、立つんだミック!」
ちょっとだけ会話が卑猥に聞こえるが、そうじゃない。そうじゃないんだ、世界よ。
その後俺は、倒れては立たされ、臨死体験をしては起こされた。
何度も何度も俺を窮地に立たすリィたんは、悪魔に見え……何度も何度も俺を死の淵から起こすリィたんは、何故か天使に見えた。
◇◆◇ ◆◇◆
修行の荒野にテレポートポイントを残した俺は、ゲッソリしながらリプトゥア国へ転移する。
目指すは首都リプトゥアのダンジョン。
忙しくて最近サボり気味だった吸血活動を再開するためだ。
当然、リプトゥアダンジョンのお宝も気になるところだ。
なるほど……人が多いのはこのせいもあったのかもな。
――――ランクAダンジョン。それがリプトゥアのダンジョンランクだった。
ランクA冒険者が集う理由含め、人材が多ければそれだけダンジョンも混む。
リーガルのダンジョンが過疎地かのように、リプトゥアのダンジョンは人でごった返していた。
とは言っても、もう夜も近いので帰る冒険者ばかりだった。
俺は夜行性だし、何しろ吸血鬼だし夜でも問題ない。寧ろ夜の方が気分が乗るのだ。
因みにリィたんは出稼ぎに向かってる。どこまでも元気だな、あの子。
まぁ、リィたんと戦いまくって疲弊しきってるのに、これからダンジョンに潜ろうとしている俺も大概だけどな。
「あれ、ミケラルドさんじゃないですか?」
「ん? あぁキッカじゃん。どうしたの、こんなところで?」
「ダンジョン前にいる冒険者にそれ聞きます?」
「おっと、それは迂闊だったね」
「まー、とは言っても今回は出張回復サービスですよ」
「つまり、怪我した冒険者に回復魔法を売ってる訳か」
「そゆ事です」
なるほど、だからハンやラッツがいないのか。
「キッカはこのダンジョンに潜った事あるの?」
「三度ありますよ。
「へぇ、それは丁度よかった。ちょっとダンジョンについて教えて欲しいんだけど、時間ある?」
「時間はありますけどー……懐が心もとないんですよねぇ~」
「よし、リプトゥア白金貨一枚でどう?」
と、俺が【交渉】を発動して白金貨をキッカの前に出すと、それは一瞬で消えた。
まぁ、キッカが奪い取るように持っていったんだけどな。
目を白金貨へと変えたキッカが、ぶんぶんと首を縦に振り了承の意を見せるも、しばらくこちらに顔を向けてくれなかった。
そしてようやく落ち着いたのか、キッカはこっちを見て軽く咳払いをしたのだった。
「さ、何が知りたいんですか?」
「当然、キッカの知ってる全てだよ」
これは、俺が
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