その211 リプトゥアのダンジョン1
「ちょっとちょっと! 本当に一人で行く気ですか!?」なんてキッカに言われたけど、ランクBとランクAのダンジョンでそう変わるとは思えない俺は、止めるキッカをさらりと受け流してダンジョンへ入って行った。
キッカ、ラッツ、ハンで構成されたパーティー――
クリアした冒険者は限りなく少ないそうで、やはりその報酬は莫大なものだった。
「最下層にある【イグドラシルの葉】は、煎じて飲めばどんな病気や怪我もたちどころに治ってしまうんですよ!」
そんなキッカの説明を思い出す。
回復に関しては
是非ともいくつかストックしておきたいところだ。
そう思い、歩を進める事数分。
早速新モンスターと対面する事が出来た。
現れたのは……グリーンワーム亜種。
「え、キモい」
そう零してしまったのも無理はないだろう。
通路の八割を占領した巨大な身体でこちらへ向かってくるのだから。
しかし、こいつはかつてドマーク商会の護衛をした後に倒しているモンスターだ。
動きもある程度予測がつくし、バージョンアップしたオリハルコンの
しかし流石ランクA。これ一般の冒険者はどうやって戦うんだろうか。
ランクSのダンジョンくらいになると、俺もパーティーを組むべきなんだろうなと、思いつつ先を急ぐ。
「これか、キッカが言ってたランクAのご褒美モンスターってのは」
別に何かくれる訳ではない。攻撃しない限り全く動かないというだけで、流れ弾もとい流れ魔法でも当たれば、非常に強力なモンスター……それがこのロックキューブだ。
一メートル程の立方体の身体を通路の至る場所に置き、中央にある一つ目だけがこちらを向いている。
「これも中々キモい……」
この場には五匹。ならばと思い、攻撃を仕掛けてみる。
一瞬で二匹を切断するも、三匹目が反応した。
「おっと、同種が攻撃を受けた場合でも反応するのか!」
一つ目部分が細くなり、中心から光線が放たれる。
岩肌の壁を一瞬で焦がす程の威力。強力な熱光線だな。
かわしながら距離を詰め別の攻撃を待つも、それが変わる事がなかった。
ロックキューブの攻撃手段は熱光線のみだと理解する。
「固定型砲台みたいなモンスターだったな」
五匹倒し、一匹の破片をすりつぶして水で溶いてごっくん。
【熱光線】と【静音】の【固有能力】を得る。
一階層を練り歩き、別のモンスターを探すも、グリーンワーム亜種とロックキューブ以外は見当たらなかったので二階層への階段前にやってくる。
「【技工師の首輪】? こりゃ領地の発展に使えそうだな」
二階、三階とモンスターの数を調整をしながら潜り、宝箱の出現条件にある程度の目算がつくもモンスターの種類は変わらず。
「【怪力の指輪】と【怪力の腕輪】に【豪魔の腕輪】ね~、マッキリーで手に入れたアイテムの上位互換かな」
と、肩すかしをくらいながらダンジョンを進むも、五階の宝箱は外れだった。
残念に思いつつも、ここは全三十階層と非常に難度の高いダンジョンである。
警戒しながら六階層へ降りると、ようやく新たなるモンスターを発見した。
「もしかして五階層毎にモンスターが変わるのか?」
現れたモンスターはエビルゾンビとキラービーエース。
エビルゾンビは悪魔的筋力を持った怪力ゾンビ。
キラービーエースは非常に素早い赤いキラービーである。
「うぉ!? 強っ!?」
エビルゾンビの一撃を
【解放】だけでは対応しきれないと判断し、ここからは【いつものセット】で身体の強化を図る。
「エビルゾンビ、通常攻撃と……稀に酸を吐く、か」
モンスターの攻撃を理解し、倒す。初回はやはり慎重になってしまう。
だが、これをやるだけで、後の周回の速度が上がる。
このキラービーエースもしっかり観察しなくては。
ぶんぶんぶんと消えては現れるキラービーエース。確かに速い。
フラッシュのように数メートルを移動する速度は侮れないが、弱点はその現れた瞬間だという事は明白だった。
「よっ!」
指から出した【熱光線】でキラービーエースの羽を捉えると、その機動力は一瞬にして失われた。
「的確に遠距離狙えるヤツがいたら、楽勝だな」
エビルゾンビからは【怪力】と【強酸】。
キラービーエースからは【瞬歩】と【猛毒】の【固有能力】をゲット。
まだ先は長そうだが、ちょっと面白くなってきたぞ。
自己鑑定をして固有能力を見ながら俺は、いよいよ化け物染みてきた自分から目を背けつつ、更なる深部を目指した。
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