その57 エメラの魔眼
「キシャアアアアアアアアッ!!」
凄く……大きいです。
【鑑定】で視る限り、このモンスターは《グリーンワーム亜種》。ランクCの普通のグリーンワームは人間大の芋虫みたいなモンスターだが、こいつはちょっとデカすぎる。
サイズだけで言えば、リィたんがリバイアタンになった時クラス。およそ二十メートルはあるだろう。
しかし、こいつがランクB?
「キィイイイッ!」
「うおっと!?」
咄嗟の攻撃に反応出来なかった。
跳び退いてかわしたものの、尾撃の先端に頬をかすめた俺は、【身体能力強化】、【身体能力超強化】、【
すると、グリーンワーム亜種は、あっという間に輪切りになってくれたのである。
「うーん、やっぱり【いつものセット】だと強すぎるか。だったら基本的には【解放】だけで戦う……か」
あくまでランクAの冒険者。
現段階ではそれ以上の強さを見せない方がいいし、心掛けるためにも、ソロの時でも意識していくか。
さて、あんまり舐めたくもないが、グリーンワーム亜種の体液を、一滴だけぺろりんちょ。
久しぶりにステータスも確認しておくか。
ミケラルド:吸血鬼
◆魔法◆
火魔法:フレイム・フレイムボール・フレイムランス・ヒートアップ・ブレス・フレイムウォール
水魔法:ウォーター・水球・金剛斬・津波・大津波
土魔法:砲岩・地走る蛇・
雷魔法:サンダー・疾風迅雷・
風魔法:エアスライス・浮遊滑空・ヘルメスの靴・突風・エアウォール・呼び戻しの風・探知
闇魔法:ダークヒール・
光魔法:
◆技◆
竜剣・
◆特殊能力◆
◆固有能力◆
超聴覚・嗅魔・超回復・威光・闘志・龍の血・嗅覚・威嚇・健脚・石頭・恐怖耐性・危険察知・毒耐性・刺突耐性・炎耐性・麻痺耐性・地形無視移動・木々同化・交渉・擬態・突進力・遠吠え威嚇・斬撃耐性・威嚇耐性・粘糸・鋼糸
ん? 【雷魔法】の【リチャージ】ってのはどこで覚えたんだ?
【技】の【壁走り】にしたって、【特殊能力】の【超感覚】や【弱点察知】も…………?
あぁ、もしかしてこの前実力を測られた時のギルドマスター、《ディック》から頂いた
確かに、ディックは元ランクSの人間。これだけの能力を持っていても不思議じゃない。
となると、この【固有能力】の【粘糸】と【鋼糸】は今のグリーンワームから? いや、しかしモンスターの【固有能力】は一つというのが常識。例外もあるとは聞いたが、もしかしてコイツがそうだったのか?
まぁ、とりあえず、能力の確認だけしておくか。
「――おぉ! 手から出せるのか!」
益々人外染みてきたが、粘着性のある糸と、強靭な糸を指から、出す事が出来た。相手の捕縛や捕獲には有効かもしれないな。
「――なるほど、【リチャージ】は敵からの雷魔法を吸収して魔力に還元するんだな」
【超感覚】は【超聴覚】や【嗅覚】と併用して、更に鋭敏な感覚になっている。出来れば【超嗅覚】なんて能力があれば会得したいものだ。
壁走りは……まぁ、街道に壁なんてある訳もなく、クロード宅に戻ったら試してみるか。
「うーん、こいつは微妙だな」
道中で会ったモンスターに対して【弱点察知】を使ってみたが、範囲が大き過ぎて、知覚するには無理がある。
現段階では巨大モンスター専用の能力だろうな。おそらく、上位能力はあるはずだから、それを得られれば一番いいだろう。
◇◆◇ ◆◇◆
「ただいま」
「おかえりなさい、ミケラルドさん!」
シェンドの町の冒険者ギルドでは、受付嬢のネムが嬉しそうに待っていた。
「これお願い。一応頭部だけ持ってきたけど、こいつランクBじゃなかったと思うよ?」
「そうでしたか。マッキリーまでの道中で出なかったという事ですね」
「そ、だからこっちで報告ね」
「もう少し詳細な情報があればランクAの依頼になったと思うのですが、ごめんなさい」
「あぁ、いいんだよ。こういう事もあるんだな、ってわかっただけでも前進さ。被害は余りなかったんだし、それで良しとするしかないって」
「そう言って頂けると、私たちも助かりますっ」
微笑むネム、マジ可愛い。
ナタリーとは違う守ってあげたい系女子と言えよう。
「他の指名依頼はどうします?」
「あるだけやっちゃうよ。今日は一人だし」
「ふぇ!? 指名依頼だけでも残り十一件ありますけど……っ?」
「さっきみたいな護衛じゃなければ、まぁ」
あんぐりと口をあけたネム。彼女が動かない以上、俺も何をする事も出来なかったので、しばらく俺も棒立ちしていた。
結局、護衛依頼が一件あったので、それ以外のモンスター討伐計十件を引き受け、今日はクロード宅に戻る事にした。
クロード宅に戻ると、クロードとエメラ、そしてナタリーが俺を迎えてくれた。
テーブルを囲みながら、俺の今日の稼ぎを覗き込む。
「これはまた……とんでもないですね」
「まぁ、金貨二百三十七枚もっ♪」
クロードの感動はわかるのだが、エメラは財布代わりの革袋を見ただけで、その中身を言い当てたぞ? 何なのこの人。
「これならたっくさんお洋服もご飯も買えるね!」
「ナタリー、これはミケラルドさんのお金だよ?」
「いや、これはここの分です」
「え?」
クロードの目が点になる。
エメラは先程から革袋だけを微笑みながら見ている。お金に憑りつかれた人妻も、中々いいものだ。とか思いながら、俺はもう一つの革袋を取り出した。
……前言撤回。お金を前にしたエメラ怖すぎる。
「お、俺はこっちがありますから」
「白金貨二十九枚……ですね」
……まだ、革袋開けてないんですけど、エメラさん?
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