刀禰谷2

第33話 順調な日々

 乙女文楽部の活動は軌道に乗りつつあった。

 南畝さんの先生や他校との交流も順調だった。指導者候補も見つかりそうだった。練習用の人形ももう一体、お古を分けてもらえることになった。人脈の力を思い知るのはこんな時だ。

 コラボも順調だ。工作部には人形にセンサーを仕込んでもらいPC部からも多くの提案をもらっている。

「コラボ、文化祭向けで本当に大丈夫? 一応、確認」

「大丈夫です。やりましょう」

「VTuberの番組はどうする?」

 PC部は学内ネット向けのDJ番組のようなVR映像も作っていて、私たちにも参加の打診があった。部やコラボの宣伝にうってつけだ。

「3Dキャラの私はちょっとお気に入りです」

 PC部が作った南畝さんのキャラは〝能面さん〟といい能面をつけて乙女文楽を演じる設定だ。

「刀禰谷さんも出ませんか」

「へ?」

「VTuber番組に。今思いついたのですが、刀禰谷さん、人形としてトークしましょう」

「待った。今思いついたとか嘘。絶対嘘。PC部のアイデアでしょ、それ。いつ相談したの。人形としてトークって、何?」

「私が遣う3D人形のしゃべりを担当するんです」

「絶対やりたくない。すごくやりたくない。とてもやりたくない。そもそもなんでVTuber」

「刀禰谷さんがPC部から持ってきたお仕事です」

「……そうでした」

「往生際良く私に遣われましょう。構成台本はPC部が用意してくれるそうですし」

「あいつらよくわかってる。南畝さんも私も面白トークとか無理だもんね」

「頑張りましょうね、トニィ」

 〝トニィ〟というのは〝能面さん〟に遣われる人形キャラの名であるらしい。台本までその場で差し出されて私はぐうの音も出なかった。

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