第7話 ルームメイト:友達候補

 消灯後、眠りに落ちるまでの時間は今日も南畝さんについての報告だ。

「推しキャラが分かれたわけですよ、南畝さんと」

「はいはい。そりゃ良かったですね」

「南畝さん、説明してないのに人形の操り方理解しててさぁ」

「なんだっけ。乙女文楽? 演じる方をやってればそりゃわかるんじゃないの」

「キャラがジャンプしてるシーンとか一目で『人形、投げてるんですね』ってわかっちゃうんだよ。凄くない? 文楽は人形を投げたりしないのに」

「知りません」

「きれいに背筋伸ばして観てるのに、剣戟シーンで人形と一緒になって身体が揺れたりしてめっちゃキュート。こっちは番組より南畝さんを鑑賞してたかった。録画したかったな」

「なんだそれ」

「髪が音立てて流れるんだよ」

「はあ」

「香りも素敵で」

「率直に申し上げますが」

「うん?」

「刀禰谷、ウザキモ」

「まじ」

「それもとても」

「もしかして今話してる顔も超キモい?」

「二段ベッドの上下でわかるかっ。もう寝る」

「あぁ、もう。南畝さんにもキモいって思われてないかなぁ」

「あっちも友達と認識してくれてそうだしいいんじゃない? あたしの友達がそんなだったら絶対ヤだけど」

「気をつける……」

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