第14話 困難を乗り越えて書く

 おじさんは、若者に嫉妬しています。


「最近の若者は……」などというテンプレの小言、繰り言は、その証拠といっていいでしょう。


 なんのかのいいながら、歳をとった人は、若い人のことがうらやましくて仕方がない生き物なのです。


 おっ。ここで笑った、若いあなた。

 ひとごとではありません。20年後のあなたのことですよ(笑


 小説を書くにしても、おじさんとなってから書くより、若いうちに書き始めた方がいい。


 若い人が、小説を書くことに憧れたとすると、まっすぐにそこへ手をのばして、つかみ取ろうとするでしょう。


 おじさんにはその向こう見ずなところが、とても眩しい。自分には真似できないから。


 歳をとるというのは、時間の経過にしたがって、色々なことを諦めてゆくということです。色々なことというのを「夢」と置き換えてもいい。


 いい大学に行きたい

 自分にあった仕事に就きたい

 幸せな結婚をしたい

 素敵な家庭を築きたい


 小説家になりたい――


 その夢をひとつ、またひとつと黒く塗りつぶしていくのが、歳をとるということなのです。


 心が折れる――という表現がありますが、おじさんの胸のうちは、折れた心の残骸が積み重なっていく場所でもあるのです。


 ただ、そうした残骸のなかから立ち上がろうとするおじさんもいます。なかには小説を書こうと考える人も。


 そして、残骸を乗り越え、若い人たちがするように夢に手をのばします。


 でも、若い人には容易につかめるものでも、おじさんには難しい。


 積み重ねてきた経験や知識、仕事や家庭の人間関係、体力の衰えなどが障害物となって、おじさんと夢の間に立ちはだかるのです。


 おじさんが小説を書くことの困難は、人生経験があるからこその困難です。


「人生経験からかけることがある」というのは簡単ですが、軽々しくそういって欲しくない。


 困難を乗り越えて書こうとしている人にかける言葉は、もっとほかにあるはずだと思います。

 

 

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