第4話 ペンネームはこうしよう

 私は、『藤光』といいます。


 いまさら自己紹介もあったものではありませんが、もちろんペンネームです。「ふじみつ」ではなくて、「とうこう」と読んでもらいたいなと思いながら、いつも自分の名前を見ています。


 ただ、名前みたいなペンネームだなとは自分でも思います。これを読んでくれている方のなかにも「苗字か、これ」と思われた方がいるのではないでしょうか。


 今日は、そんなペンネームについて書いてみることにします。

 また、ふらりと立ち寄った読み専の方もいると思いますが、ここはカクヨム作家さんが読んでるものとして書かせてもらいます。


 小説を書こう、書きたいと思って小説を書きあげるとします。書きあがったこの小説を自分ひとりで楽しむのなら(あと、家族や親しい友人の間だけで楽しむのなら)ペンネームはいりませんが、Webにアップしたいとか、新人賞をねらうとかしようとするとそのペンネームが必要となってきますよね。どうやって考えてますか?


 Web小説作家の名前って変ですよね。


 ……ケンカを売ってるわけではなくて、一般的な傾向として「なんだこれ」「なぜこれをえらんだ」というペンネームが多いと感じます。たとえば、カクヨムWeb小説大賞の『彼は鍛冶屋で異世界を平穏に暮らしたい』の著者は「たままる」さんです。カクヨムではごく普通ですが、一般文芸のペンネームと比べると変です。


 今年度下半期の芥川賞作家は……たままるさんです!


 と仮に紹介されるとするなら、かなりとんがったペンネームだなと感じられるのではないでしょうか。


 カクヨムのペンネームが世間一般から見て変なのは、その素性がインターネット上の名前「ハンドルネーム」から来ているからなんでしょう。それは、性別や年齢、国籍からまったく自由だというインターネットのもつ特徴を端的に示したものといえます。「たままる」さんから、彼(または彼女)の性別や国籍を推し量ることはできませんからね(たままるさん、引き合いに出してすみません)。


 「ハンドルネーム」は、リアルの「氏名」が包含する性別や年齢、国籍といった「不自由」から当人を解放し、自由な立場から発言することを可能にしました。と同時に、リアルの自分(氏名)とネット上の自分(ハンドルネーム)が切り離されてしまう原因にもなったと個人的には感じています。


 『藤光』という私のペンネームは、私の本当の名前からふたつ文字を取り出し、くっつけて作っています。


 なんでそんなことをしているかというと、リアルの私と、ネットの私が切り離されてしまわないようにという思いがあるからです。ペンネームに本名の一部を組み込むことで、「ここにいるのも私なんだ」と思えますし、『藤光』という名前でも無責任なことや他人に迷惑をかけるようなことはできないなと感じることができます。


 それに私は、のです。


 以前、「文章には、書き手のひととなりが表れる」と書きましたが、小説とは書き手が「伝えたい!」と強く思ったことや感じたことを物語という形にのせて読み手に差し出すものです。そこには書き手の感受性が……作者その人が表れているような気がします。


 読者は、小説を読むことを通して、作者の感性を読んでるんです。

 (だから、合う、合わない、がある。納得。)


 私の小説は、変わったものが多くて、ストレートに青春ものですとか、恋愛ものですとか、ミステリ・SFですとか言いきれないものばかり書いています。それは私の中の言葉では説明しきれない、なにかどろどろしたものを物語にのせて吐き出しているからなのですが、それは一部……一部ではありますが、飾り気のない繊細なと感じていて、それを伝えようとするとペンネームであっても、きちんとした「私」でないといけないなと強く思うのです。


 もちろん、ペンネームは皆さんいろいろと迷って、考えて、つけていることと思いますが、こと私に限って言うなら、小説を通して私のことを読んでほしいというからには、ペンネームにもきちんと私が含まれている方が、読者に対して誠実なのかなと考えているということでした。





 あと


 他の人の小説やエッセイを読ませてもらうときに、やはりペンネームって見てしまいます。「どういう意図でこういうペンネームなんだろう」って。そして、いろいろと妄想するわけです。

 どんな人なんだろうとか、どんなシチュエーションで、なにを感じてこれを書いたんだろうとかね。文章の向こうに人を探すような読み方……おもしろいです。

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