第9話 彼女の想い 2
私がお嬢様のお世話を初めて暫くっ立ったある日。
お嬢様から本を読みたいとお願いされました。
本を読みたいと仰られても、文字が読めるのでしょうか?
もしかしたら、奥様から文字を習っていたのかも・・・と思い数冊の本をお持ちしました。
結果から言いますと、文字は読めなっかったようです。
お嬢様のご依頼でお持ちした本は、この国の歴史・宗教についての本等ですが文字が読めないお嬢様にはとても難しいでしょう。
ですが私自身もお嬢様のお世話を旦那様より命じられてはおりますが、教育をしろとは言われておりません。
奥様もここからは出る事が出来ないお嬢様には不要と思われたのでしょう。
このまま静観するつもりでしたが、お嬢様から文字を教えて欲しいと言われました。
悩みましたが、『私から教わった事を秘密にする』と言う条件でお教えする事にしました。
それからは、時間が許す限りお嬢様に教育をしていきました。
教育と言っても文字を教える事だけでしたが・・・。
ですが、その日々は私にとっても充実したものでした。
そんなある日、『お嬢様が本が読める様になった!』と嬉しそうに報告されて来たので、確認しましたらその本は魔導書でした。
魔導書は“魔力を持った”人が書くことが多く、魔力を持った多くの人は無条件で読むことが出来る事があるそうです。
ただし『多く』言っても『稀に』ではあるそうですが・・・。
お嬢様はこれに該当するのでしょう。
実際にこのハイラント王国は魔力を持った方は貴族・神官様が殆どです。
平民で魔力を持った方は、すぐに神殿に入られます。
なので私達、平民は魔導書を読むことが出来ても魔法を発動させる事は出来ません。
お嬢様は貴族の血を濃く引いておられるので、魔導書が読めたのでしょう。
見た所、お嬢様は魔導書は読める様ですが他書に於いては読めないそうなので・・・。
それからお嬢様は、午前中を今までの様に文字の練習や読み方の練習をしつつ、歴史を簡単に纏めた本を読み午後には魔導書の魔法を練習されました。
ですがそれも暫く経つと難しくなりました。
お嬢様は魔法の練習を始めた途端、すぐに初級とされる魔法を習得されてしまいました。
ですが、中級からの魔法は初級とは勝手が違います。
中級からの魔法は、ご自分に合った【腕輪】と【精霊】との【契約】が必要になってきます。
ただ、契約の方法や腕輪の選び方は十三歳になったら魔力を持つ者が入学する学園で教えられるので私ではこれ以上のお話は分かりません。
実際にご入学された旦那様や奥様なら詳しいお話が聞けるのでしょうけど・・・。
お嬢様にお話した時はそれはもうがっかりしておられました。
それが先日のお話です。
今日はお嬢様の朝食をお持ちする前に、執事長のゼノスに呼ばれました。
ゼノスとは彼是二十年以上、一緒に侯爵家に仕えてきました。
そんな彼が言いにくそうに私に伝えてきたのです。
「お嬢様は今日、旦那様に呼ばれました。今日は朝食を持って行ってからは塔に行かなくていいです」
一瞬なにを言っているのか分からなくなりました。
旦那様がお嬢様にお会いになる?
お嬢様が塔に入られてから一度もお会いになっていないのに。
それは・・・もしかして・・・。
「リア、今日が最後になると思います。敏い貴女なら言葉にしなくても分かりますよね?」
「・・・えぇ」
口から零れた言葉は肯定の言葉でした。
今日、塔から出られたお嬢様は屋敷を出され二度と会う事は出来ないでしょう。
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