静かな階段で

 ピンク色の照明で彩られた廊下は時折、部屋から漏れ出た男女の楽しげな声が貸すかに聞こえていた。

 防音性が低い格安ラブホテルだ。

 僕は出ていった彼女が残した金を財布にしまいながら非常階段を降りていった。

 非常階段は、廊下とは違い静かだった。


 姉活という言葉を耳にしたことがあるだろうか?

 男性視点で語ると、赤の他人の女性の弟を演じることだ。

 弟役として姉役の女性の言うことを聞いたり話し相手になったり要求は女性によって様々で、対価としてご飯を作ってもらったりレストランを奢ってもらったり時には、お小遣いという名目で多額の報酬を得ることだってある。

 そして、延長線上に姉弟という関係は意味をなさず一夜限りの関係へ発展することだってある。

 今晩がそうだった。


 あの時、彼女は処女だと言った。そして僕も童貞だと嘘をついた。


 そして、あとに残ったのは彼女が残していった10万と強い罪悪感だけだった。


 一段、一段また一段と階段を降りる度、誰かのすすり泣く声が聞こえる。


 四階と三階の間の踊り場で僕は少女と出会った。

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