第2話

 そんなじゃんけんの国に、外から侵略者がやってきた。マントを頭からすっぽりとかぶった、いかにもな出で立ちである。

 侵略者はみんなが集まるお昼時、この国で一番大きな市場の真ん中でこう言った。

「私はどのじゃんけんの手にも負けない力を持っている。この国では私に逆らえるものはいないのだ」

 そんな馬鹿な。と考えた国民は、すぐにその侵略者を追い出そうとした。

 しかし、『グー』の人たちが押したり引いたりしてもびくともしない。『チョキ』の人たちが蹴り飛ばしても侵略者は鼻歌を奏でている。『パー』の人が物を投げつけても絶対に当たらなかった。そして侵略者が「わっ」と大声を出すと、みんな怖がって逃げ出してしまうのだった。

 侵略者はそのまま国の王宮まで攻め入った。この国の軍隊も、『グー』の王様も『チョキ』の女王もみんな逃げ出してしまった。王宮は侵略者に乗っ取られ、しもべであった大臣たちも逆らえなくなってしまった。

 それからこの国はあっという間に侵略者の思うままの国になった。国中の食べ物を自分だけがたらふく食べられるようにしたり、気晴らしに国民を痛めつけたり、それは国民にとって筆舌に尽くしがたい日々であった。侵略者は誰も自分に逆らえないことを知っていたので、あらゆる我がままと暴虐を毎日はたらいた。

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