第4話 妖精達

「僕の質問から答えて」

「一番は私だよ」

「いやいや、オイラだよ」

「お主らの質問に答えるのはアイリスなのじゃからアイリスしだいじゃろ?」

「じゃあ、白が言うならアイリスに決めてもらおうよ」

「「そうしよう」」


 言い争う妖精達は白の一言によりアイリスが三人の質問を好きな順番で答えることになった。


「答えるね。私、自分がどこで何をしていたのかわからないの。自分のことを何も覚えていなくて、気づいたら森の中にいたの」

「気づいたら森の中にじゃと。死人の森は命ある者が入るにはちゃんとした手順を踏まないと入れぬと言うのにアイリスは気づいたら死人の森にいたと言うのか?」


 アイリスがいた死人の森は死んだ生き物や身体を失い魂だけの状態の何か、精神体は条件無く入ることができる。ただ入ったら永遠に森の中を彷徨うそういう場所。

 生き物や元々命の概念が無いが魂を宿せる器を持つ者(例えばアイリスの目の前にいる白い狐や頭の上を愉快に飛び回る妖精達)が死者の森に行く方法は生涯で自分が心から愛せる死んだ者の顔を想像しながら死人の森の入り口から入る必要がある。手順を踏まないと死人達が逝く場所に行き着いて戻れなくなると言われている。

 本当に手順を踏まないで森に入った者は帰って来なかったり、死人に食われるともいわれている。

 出る時は難しい条件は無く、出口から出れば生きている限り簡単に出られる。

 死人の森に入る手順を知っている白はアイリスが死人の森に入る手順を知っているとは思えなかった。


「本当なの。それでね。最初、森の中は太陽が登って明るかったいたのに、目を瞑ったら回りが夜に変わって怖い人が現れたの」

「なんと永遠の暗闇と言われている死人の森が日が差し込んでおり、明るかったと」

「うん、本当なの」

「そんなつまらない話は終わり、次は僕の質問に答えてよ。どんな遊びが好き?」

「おい、セイン。次はオイラの質問だぞ?」

「そんな順番は決まってないよ。質問に答えるのはアイリスだよ」


 死者の森が明るかったと聞いた白は何やら考えだした。それを見たアイリスは首をかしげるが、人間の女の子を初めて見た妖精達はアイリスに興味津々でそれどころではなかった。

 アイリスは自分達とよく似た顔でなおさら一緒に遊びたくて、自分達の住処を紹介したくてうずうずしていた。そしてセインとヨウが喧嘩を始めた。


「アイリス私たちと遊ぼ?」

「え?」


 セインとヨウの喧嘩を見て私がオロオロしていると妖精の女の子のピシーから遊ぼうと提案される。


「ピシーいいね。それ。何して遊ぶ?」

「向こうにシドがいたよ。シドに悪戯して遊ぼう」

「向こうだといつもの岩場で本を読んでいるの?本を取り上げて遊ぼ」

「それよりも面白い考えがあるよ」

「そもそもシドってだれ?」

「くればわかるよ。アイリスこっちだよ」


 私は妖精たちに手を引かれどこかに連れていかれた。


「お主ら人の子をどこに連れていくんじゃ」

「ビャクが怒った!」

「逃げろ」

「待ってそんなに引っ張らないで」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アイリスワンダー 七刀 しろ @nanatusiro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ