第2話 鬼と狐
私は後ろ振り向いた。
そこには頭部に二つの角、がっしりした赤い体。
恐怖の存在をやっつけてくれた存在は明らかにオーガだった。
「がはははっ。遠くへ飛んでったなぁ。およ?お主は人の子ではないか?人の子がこんなところで何をしている?」
「ひゃえっ」
オーガの大きな手が私の頭を撫でられたことに驚て変な声を出してしまった。
「そう怯えるではない。頭を撫でただけではないか。邪なことをまだ何もしていないぞ。さて人の子よ。なぜお主が死人《しびと》どもの森にいる?」
「私は、私は、うえん。ううう」
恐怖の存在から我慢していた涙腺がオーガの厳つい顔から光る憤怒に光る瞳を見て崩壊して涙が溢れた。
「お主なぜ泣くのか。それほど死人どもが恐ろしかったのかのぅ。ええい、しょうがない。ワシの家に連れていってやろう」
オーガは咽び泣く私を優しく抱きよせ、歩きだした。
歩いている間、オーガは私を必死に泣き止ませようと努力するが一向に私の涙が止まることはなかった。その後、オーガは泣き止ませることを諦め、頭を撫でるだけになった。
オーガは暗い森の中でも足取りは軽く、私の目では暗すぎて見えない木々の間も迷いなく進んでいく。私にとっては同じ場所をグルグル回っている気がするが、オーガにとって何かしらのルートがあるようだ。
「もうそろそろ死人の森から抜けるから泣き止んでくれ。ほれ、すぐそこに出口が見えてきたぞ」
オーガが指を指した方を見ると木と木の間から光があふれていた。
本当にこの森から出られるんだ。
この寂しい森は恐ろしい存在しかいなかった。恐怖の存在と私を抱くオーガしか見ていないがもうここには来たくない。いくら綺麗に光るホタルがいたとしてもここに来ることは二度と来ないと誓う。
その木々の間を通り過ぎると太陽の光が降り注ぐ森にでた。
先ほどまでいた森とは違い、無数の蝶が優雅に舞い、木々から奏でる小鳥達が唄い、私達の前にちょこんと尻尾二つある白い狐が座っていた。
「なんじゃ。
「何をいう、
「そう声を荒げるではない。冗談じゃ。わっちは長き時を生きとることをお主も知っているじゃろ?亡骸と生者の見分けくらい容易いわ。しかし、何故に死人の森に人の子がおるのじゃ?」
「ワシに聞いても知らんわ。白よ。人の子をあやしておくれ」
オーガは私を切り株に座らせる。
しかし、私は暗い森を抜けてから涙は止まっている。
「おお。ようやく泣き止んでくれたか」
「紅鬼よ。そんな怖い顔で人の子に近づくではない。また泣かれても知れぬぞ」
「何よ言う。ワシの顔は死人共に比べたらマシじゃぞ」
「お主死人と比べてものう。しかしの、黄金色の髪の人の子を初めて見たぞ」
白い狐は私を珍しそうに見つめる。
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