第2話 「手作りの10円玉」

 僕が初めて法を犯した歳は、僅か5歳の頃であった。

 母からお小遣いとして貰った、10円玉をそっくりそのまま再現したのである。

 僕は何故か模倣することに長けていた。

 しかし、高校の春に僕はある衝撃を受ける。今まで、模倣の力によって学年トップで有り続けた僕の成績が追い抜かれたのだ。

 僕は彼を模倣した。言動は不可解なものが多く、そっくりそのまま再現したところで大した意味はなかった。

「出すことのほうが大事だ」

 彼はそう言った。

「受け入れたものをそのまま出すのでなく、自分好みに整形していくんだ」

 彼はそう言って笑った。

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