第29話 123456

「123456」

私は彼が何か、ブツブツ言っているのが気がかりだった。どうやら数を数えているらしい。しかし、それが何を数えているのか、私には見当がつかなかった。

そこで私は、彼に尋ねて見ることにした。

「何を数えているの」

彼はピタリと止まると、私の目をじっと見つめ、ゆっくりと言葉を発した。

「歩数だよ」

彼はそう一言こぼしたが、私にはまだ分からない。

「なんで数えるの?」

その時ちょうど風が吹いて、彼の髪はなびいた。

「立ち止まったのが分かるように。もう、ずっと立ち止まることがないようにね」

彼はまた歩き出した。

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