第15話 籠の中の影法師

祖母の家には手のひらサイズの小さな箱があった。

その箱は紙のような薄い素材で作られ、いつも誰かの影が透けていた。まるで、中に小さな人がいるかのように。子供の頃の私は何度もその箱を開けたが中には何も入ってなかった。けれどもやはり、閉じるとまた小さな話し声と影法師が現れた。私はその箱に話しかけたこともあった。でも、決まって言われる台詞は一言だけ。


「取り込み中だからまた後にしてくれないか?」


それを聞くと悲しくなったが、同時に何か心が満ちていくような感覚にも陥った。

今思えばあれは初恋だったのかもしれない。


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