第2話 波打ち際ホテル

入水自殺をしようと思った。

美しい海と果てしなく続く水平線、私は海とひとつになり水平線をなぞりたかった。

波打ち際まで来て、靴とその上に遺書と潮風に飛ばないように石を乗っけて、右足をつけた。その刹那、後ろから声が聞こえた。


「自殺なさる前に、1泊どうですか?」


ドキッとして振り向くと、スーツを着た女の人が両手を揃えてこちらを向いて立っていた。


「誰…ですか?」


狼狽えを隠せない私にスーツ姿の女の人は言った。


「波打ち際ホテルの案内人役、入江 海子と申します。」


謙虚な微笑を浮かべ軽くお辞儀をしていた。

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