第36話 6-7

ニセモノはジョンに大きく踏み込みながら、チェーンソーを振るう。ジョンはチェーンソーの刃をサバイバルナイフで受け止めると、左手のM9でニセモノの額に向けて発砲する。

乾いた音が辺りに響き、M9から硝煙が吹いているが、その弾丸はニセモノには当たってはいなかった。


 ニセモノは瞬間的に大きくのけぞり、ジョンの弾丸を躱したのであった。

ニセモノはのけぞった勢いで、バク転をしながらジョンのM9を蹴り飛ばした。


「ぐっ!」


ジョンは蹴り飛ばされたM9には目もくれず、サバイバルナイフのみでニセモノに突っ込む。

ジュリもチェーンソーを突くような体勢で、同時に切り込んだ。


 ジョンとジュリが同時に突っ込んだ瞬間、左右に逃げ場のない狭い通路で、ニセモノが消える。

正確にはニセモノは鏡の中に入り込んだのであった。


「何だ!?」


「……鏡の中に入ったの?」


 ジョンとジュリはニセモノの行方を追い、辺りに警戒する。

突然、ジョンの後ろの鏡から回転する刃が、チェーンソーを持ったニセモノが現れる。


「兄さん! 後ろ!」


ジョンはジュリの言葉で振り返るが、間に合わない。

チェーンソーの刃を躱そうとしたが、肩を大きく裂かれてしまった。


「ぐうぅ……!」


ジョンは片膝を地面に着けてしゃがみ込む。ニセモノは大きくチェーンソーを振りかぶり、ジョンの首筋を狙う。

回転する刃の風をジョンは首筋で感じていた。

しかし、その刃は、飛び込んだジュリの刃により受け止められる。


「これ以上、ふざけたマネをしないでくれる?」


 ジュリは、静かに激怒していた。いつもは冷静なジュリであるが、言葉に怒気が混ざる。


 ニセモノのチェーンソーの刃を上に弾くと、ジュリはニセモノの持つチェーンソーの本体に向けて、その刃を振るう。


ジョンの肩が引き裂かれたと同様に、ニセモノの右手がずたずたになり、中指と薬指の根元から切断されて床に転がる。


 一瞬、ニセモノは大きく目を開いて、ジュリの瞳を覗き込んだ。まるで信じられないと、言っているようであった。

ジュリは大きくチェーンソーを振り上げると、今度はニセモノの首に目掛けてチェーンソーの刃を振り下ろす。


 ニセモノは再度、鏡の中に逃げ込もうとした。

だが、そこに一発の乾いた音が響き、ニセモノの眉間に穴が空く。


「二度も……同じ手を喰らうかよ」


ジョンが先ほど蹴り飛ばされたM9を拾い、ニセモノへ発砲したのだった。

息も絶え絶えながら、ジョンは見事にニセモノの眉間を貫いた。


「兄さん。ありがと」


ジュリは渾身の力を込めて、チェーンソーを振り下ろす。


そして、その刃は、


ニセモノの首に深々とめり込み、そのまま切断した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る