第5話 光
もう、生きてる意味なんてない。そんなことを思っていた自分がいた。
俺は幸せな家庭の長男として生まれてきて、雷という名前をもらった。父さんも母さんも、俺が能力者でも、妹の真白と同じように愛情を注いでくれた。
みんなで旅行に行ったりご飯を食べたり、怒られたり怒ったり、笑ったり泣いたり、そんな幸せな日々をすごしていた。
だけどその幸せは俺が13の時に壊れてしまった。
父さんが交通事故で亡くなった。涙がかれるほど泣いたよ。でも、悲しみはそれでも終わらなかった。父さんの後を追うように母さんは自殺した。俺達の目の前で、ビルから飛び降りて、微笑みながら落ちていった。
俺は妹と取り残された。幸せな家庭が誰かのミスにより一瞬で壊された。真白は母さんが死んだところを見ていない。まだ8歳だった真白は「お母さんは?お父さんは?」と何度も、何度も聞いてきた。だから俺は「お父さんとお母さんは今、すごく遠い場所にいるから、今はまだ会えない。」そういい続けていた。
真白は今、前俺が住んでいた街で友達の家に住まわせてもらっているらしい。この能力者の学校は一般人は立ち入り禁止だから妹と住めないのだ。理由は何か魔力の暴走があると危険だからとかなんとか。
元気にしているだろうか?怪我はしていないだろうか?
とか毎日毎日同じ心配ばかりしてた。
そして、妹は消えた。デスペアが襲いに来た時、それと一緒に行方不明となった。襲われた街の瓦礫の中をいくら探したって、遠くの避難所に向かったって、真白の姿はなかった。
死んでしまったのか生きているのか、それすらも分からない。
休日はいつもその街に行って復興の手伝いをしている。片付けてる最中に妹が見つかるかもしれないしここは俺が育った街だ。どちらにせよ放っておくことも出来ない。
でも、あれから5ヶ月たった今でも妹の遺体すら出てこなかった。どこに消えたのかそれすらも分からない。あの時に戻れたら、なんで思いもする。なんであの時近くにいてあげられなかったのか、妹のことを気にするべきだった。目の前の敵を倒すことに集中しすぎて市民の安全を考えていなかった。
それなのに、俺はそいつを倒すことすら出来なかった。結果、見事デスペアの攻撃に当たってしまい気を失ってしまった。
本当に役立たずだな、って実感したよ。
俺はこれから後悔ばかりして生きていくんだ。
そう思っていた。
先生からとある話を聞くまでは。
最初聞いた時、全く意味が分からなかった。
この人は先生じゃない?デスペアの戦いで死んだ?
訳が分からない。
でも、その人が考えていることを聞いた瞬間ハッとした。
「俺も連れて行って欲しい。」
そう発していた。
これで、真白の行方が分かる。死んでしまっていてもいい。せめて、連れて帰りたい。
待ってろよ、真白。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます