第2話後半
カイの作戦なのか、はたまた俺がお人好しなのかよく分からないけど、俺は三人で帰ることになった。
「でさでさ、昨日メッセージ来たときはびっくりしたよ!彼女ができたとかふざけたこと言ってるから。で、今日学校来たら本当のことでびっくりしたよ!ボクが模試で珍しく空欄がなかった並みに!」
「ところでお二人さんは模試はどうだった?おおっと、ハルは後ね。どーせ9割楽勝とか言うんだろぅ…あれ?二人とも下向いて…ま、まさか‼」
「わ、私は…その…勉強あまり得意ではないの…」
「なるほど…上月さんとは仲良くなれそうだ。で、ハルは?」
「……お前の言う通り9割はいっただろうな…でも…」
「でも?」
「受験票に…『2年1組1番模試太郎』って書いて提出しちゃったんだ…」
「……ぷぷ、何そのミス。笑う以外反応できない。ぷぷぷ」
「う、うるせぇ!二人して腹抱えて笑うな!もう、一人で帰る!」
「ご、ごめんねハル君。ふふっ、ほ、ほら三人で駅に新しくできたカフェに行こ。だから、ふふ、機嫌直してね」
「…お前…それで謝ったつもりか…?」
「は、ハルはコーヒー好きだったよね?早く行って席取ろ。あそこ人気みたいで初日から満席が続いてるみたいだからさ。ほらほら」
そう言われて俺は二人に腕を引っ張られながら目的の店へと向かった。
カフェに着いた俺たちは席を確保してウエイトレスを呼んだ
「ご注文はいかがいたしましょうか?」
「じゃあ、ボクはこのアップルパイとアールグレイで」
「俺はブラック」
「じゃあ、私はミックスサンドとお冷をお願いします」
「かしこまりました。ご注文を繰り返します……」
注文を取り終わったウエイトレスが厨房の方に行った。
「ハル君ってブラック飲めるんだね!あと、お腹すいてないの?」
「俺は昔からブラックかラテを飲んでる。腹は減ってないな、今日の弁当割と量入ってたんでな」
「ハルってね中学の頃からコーヒーに関してちょっとうるさいんだよ」
「いいだろ好きなんだからそんくらい」
「ねえもっとハル君の話聞きたい。南君教えて」
「いいよ~!えっとねこれは中二の頃の話なんだけど…」
「や、やめろ!あの話は……!」
3人でわちゃわちゃしているところに3人の女子高生がやってきた。
「あらあら、上月のえるさんではありませんか。そんなダサ眼鏡とひょろを連れて両手に花ではなく両手にじゃがいもですわね!あなたにはお似合いですわお~ほほほ」
「かちこみ?ならせめて文化祭の日に…」
「ハル。彼女らはうちの生徒だよ制服見て」
「あ、ホントだ」
「あら、南條華恋(なんじょうかれん)さんではありませんか。男子からモテないって私に当たらないでくださらない?あと、私の悪口はいいけど私の大切な人たちの悪口はやめてください」
「こいつら敬語なのに怖い…」
「ハルはちょっと静かに」
「はい…」
こうしてカフェの一角が戦場になったわけで店内が少しざわめき始めた。
そして、俺含め4人が戸惑ってるところに女神が現れた
「ご、ご注文のミックスサンドとアップルパイ、アールグレイとブラックコーヒーでございます」
「あ、ありがとうございます。こちらにお願いします」
「ほ、ほら上月さん座って座って」
「チッ、今日のところは二人とミックスサンドに免じて許してやるわ」
「フン、仕方ないですわね。私たちもあなたの相手をしに来たわけではなく放課後のティータイムのために来たのでしたわ。ではごめんあそばせ。お~ほほほ」
そういって彼女らは離れた席に向かった。マジで助かったウエイトレスに感謝ですわ。それと二人を怒らせないようにしようと心の中で誓った俺だった。
「ここの豆は……うん。キリマンかなこの酸味に苦み…香りも上品で…さらに焙煎も……さらに……」
「ハル君、すごい詳しいわね…ちょっと怖いくらい…」
「このアップルパイもおいし~」
「ミックスサンドもふわふわのパンに具がたくさん挟んであっておいし~」
「カフェの食事は侮れないぞ。特にパンを使ったメニューは」
黙々と食べて飲んでする俺たち……どんだけ腹減ってたんだこいつら。
「さぁ、お腹も膨れたし帰ろうか」
「そうだな。皿返してくるからまとめろ」
「ありがとうハル君。じゃあ私たち先にお店の前で待ってるね」
「おうよ」
皿を返して帰ろうとした俺の前に女の子が一人たっていた。
「さぁ、彼女は何を語るのか。次回乞うご期待」
「勝手に終わらせないで!」
「じゃあ、手短にお願いします」
「あなたは上月のえるの何なのですか?」
「ハル?元気ないね?どうしたの?」
「え?あ、いやなんでもない気にしないでくれ」
俺たちはカイと別れて電車に乗っていた。
「南條さんに何か言われたの?」
「見ていたのか。別に悪口言われたわけじゃないから大丈夫だから」
「それならいいんだけど…」
そう、気にすることない。大丈夫だ。百聞は一見に如かずっていうからな。俺はこいつと一緒に色んな景色を見るんだ。俺たちは結局それ以降何も話さなかった。
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