第2話前半

―私と付き合ってほしいー

俺は聞き間違いをしたのか?こいつが俺にいったのか?あれか?遊びか?からかってるのか?

「ねー。聞いてる?」

「わかった。罰ゲームか」

「何言ってんの。誰とのゲームで負けたのよ」

「そりゃ、お前の友達とだろ」

「私、友達ほとんどってか一人もいない…」

あ、やっべ、そうだった…こいつ男とっかえひっかえしてるから女からも嫌われてたんだ…

「教師か!なんてサイテーな奴らだ」

「いや、だから誰ともやってないって」

「ならなんだ。どっきりか!どこにカメラあるんだ。もうあのプラカード出していいんだぞ隠れてないで出ておいでー」

「そんなのもいないしカメラもない。私は本気で言ったの」

「なんで俺なんだ次のターゲットはお前だ童貞。初めてをこの魔王が食してやろうってか?」

「違う。ただあなたに好意を抱いただけ。それ以外なんも理由はない」

「そうか。こんな俺に好意か」

俺自身、どうすればいいかわからなかった。けど、いくつか分かったことがある。噂通り可愛い、意外と他人のために動けるいい人。でも、多数の男が彼女と関係があったのは噂通りだろう恐らく。あ。あと、恥ずかしがってる姿が可愛い。とにもかくにもこいつは俺の苦手なタイプ頭緩そうな男なら誰でもいい愛を持たない女だ。早々にフるのが模範解答だろう。でも、なんでだろう彼女の瞳を見るとそうできずにいる自分がいる。なにが俺を躊躇させてるんだ、なぜこんなにも胸のあたりがモヤモヤするんだ。彼女に興味があるのか?これが恋ってやつなのか?

「ねー。聞いてる?」

「え、あ、ごめん被って聞こえなかった」

「被るって何が?まぁいいや。それで、返事は?」

「今返答した方がいいのか?」

「うん」

「こういうの経験ないから、戸惑ってる。お前は俺の嫌いなタイプの女だからフりたいけど、けど胸のモヤモヤがそうさせてくれない。多分俺もお前に好意を抱いてるんだ、だからフれない」

「じゃあオッケーって事でいいの?」

「お前がこの返事でいいと思うならそれでいい」

「ふーん。じゃ、これからよろしくねハル君」

こうして、俺の人生で最初で最後かもしれない彼女ができた。ちょっと浮かれた俺に彼女が口を開いた

「でもね、ごめんね。3年生になったら私転校しちゃうの、だからそれまでの間いっぱい思い出作ろうね」

「3年になったらって、じゃあ春休みにはここを離れるよな。ってことは9か月間の期限付きか…まぁいいよその間は付き合ってやるよ」

「ありがとうハル君。あ、私そろそろ補講に行かないと。じゃあ今日はここでお別れね」

俺たちはお互いの連絡先を交換して別れた。

転校理由を聞きたかった気もするが言わなかったってことは聞かれたくない理由があるのかと思いながらも昨日見れなかった『美少女戦艦・ヒエイ』を思い出しさっさと帰宅した。

その夜アニメを見ていた俺に彼女からメッセージが来た

『上月のえるです。連絡先追加ありがとうございます。ところで、今何やってる?』

『スパムメールみたいな文章送ってくんなよ。ちょっと焦っただろ。今はヒエイちゃん鑑賞会の真っ最中だ』

『あ、なんかごめん。ヒエイちゃん?誰?』

『ヒエイちゃんは美少女戦艦なんだ。昨日アニメやってたんだけど見れてなくって今見てるちなみに3周目』

『そっかそれはがんばれなのかな? そろそろ私寝るから。明日は放課後一緒に帰ろうね』

『了解。それじゃおやすみ』

ほどなくして俺も床についた。


 翌日俺の前に鬼の形相のカイが座っていた

「彼女ができたって?は?」

「お、おい。カイ…綺麗な顔が鬼ヶ島に主みたいになってるぞ…」

「青鬼です。ってちゃうわ」

「で、彼女できたってホント?」

「ほんとだよ。昨日メッセージ送っただろ」

「あれはいつものゲームの話かと思ってたよ。リアルの話だなんて…」

「まさかあのハルが彼女作るなんて…」

「確かに自分でもびっくりだ」

「クリスマスに白い服を真っ赤に染めてサンタの人形に『次はお前だ』って言ってたハルが」

「あれは絵の具だし、あの後の美術の時間に絵の具がなくて散々怒られたわ」

「ボクも母親(ゴッド)から天誅食らった」

「だからリビングでやるのはまずいって言っただろ」

「結局ハルもやったんだから同罪だよ」

「うるせぇよ」

「ほら、バレンタインなんて血のバレンタインって言って騒いだじゃん」

「あれは、お前がチョコにタバスコ入れてロシアンルーレットしただけだろ一人で。しかも一つ目から当ててるし。あほとしか言いようがない」

「だって、ハルがやってくれなかったんだもん」

「やるわけないだろ。そんなバカげたバレンタイン」

「そんなことやってたハルに彼女が…」

「…今のところほとんどお前の黒歴史しか出てない。ってか、お前と一緒にいる時しか黒歴史ないわ」

「……そういえば今日模試だね。勉強した?やばいよボク勉強してないよ」

「逃げたな。しかもテストの日クラスで三人は口にするテストの日構文第一位を出して」

「う、うるさいよぉ!」

「てか、そろそろ担任来るから席戻れ」

「こ、このわからず屋~」

「分かってたまるかってんだ」

今日は一日模試だった。とりあえず全力は出せた。一か所とんでもないミスした以外は。


 放課後、下駄箱の前で俺を待っていた人がいた。

「遅い。女の子待たせるってどうゆうこと?」

「ごめん。便所行ってた」

「ハル、便所と彼女どっちの方が大事なの?」

俺の背後から朝嫌になるほど聞いた声がした。

「なんでカイがいるんだよ。あと便所の方が大事だろ。社会的に殺されたくないからな」

「どんな彼女かと気になって下駄箱で張ってたら、それらしき女の子がいて聞いたらそうだって言ってたから。まだハル来てなかったからおどかしてやろうと」

「で、お前もなんでこいつのバカに付き合ってんだよ」

「それは、もちろんハル君の驚いた顔が見たかったからだよ。叶わなかったけど」

「それは、すみませんね。とりあえず、帰ろうか」

「じゃあ、おじゃま虫は退散しますか」

「え、あ…」

「なんだよ、ハル。いいんだよ親友だろ?このくらい平気さ。彼女を大切にしろ」

「……なあ、カイも入れて三人で帰りたいんだけどいいか?」

「え、あー、まぁ、私はいいけど南君はいいの?」

「ボクはいま猛烈に感動している!なんて優しい親友を持ったんだボクは!」

「大げさだよ。それより本当にいいのか?放課後のカップルは邪魔されたくないのが相場だけど」

「ハル君が決めたなら私はついていくだけ。気にしなくていいよ」

「そうか。ありがと」

「ほら!お二人さん!早く行こ!」

カイはすでに校門で待ってた

「あいつはもっと自重しろよな」

「ふふっ。でも、悪い子じゃないよね。すごく元気で優しい子だね」

「ああ、大切な親友だ」

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