第二十三話 さらなるスキル
「『早熟』と『超回復』それがお主に隠された2つのスキルの名じゃ」
「早熟、超回復……」
俺はスカーレットの言葉をそのまま反芻する。
「これだけでもお主にはピンときたのではないか? この2つがどういう効果を持っているのか」
「1つは何となく察しがついた」
早熟。
このスキルの名前から想像するには、効果は恐らくレベルアップの加速だと考えられる。
天性の才能だと思われていたこれもまた、虹色のスキルだった訳だ。
が、もう1つの超回復については正直ピンとこない。
天下無双のように、自分で発動しなければならないタイプのスキルなのだろうか?
「うむ。早熟のスキル効果はその名の通り、早くレベルアップしていくということじゃな。ただし、一定レベルまで達した段階でそれ以上はレベルアップしなくなるがの」
なるほど。こいつのデメリット効果はレベルアップの打ち止めか。
この間の大猪戦で105まで上がったのを確認したから、少なくともそれ以上であることは間違いなさそうだが。
「それからもう1つの超回復。この効果はレベル変動時の体力、魔力、そして状態異常の全回復というものじゃな」
「レベル変動時の全回復……」
俺はそれを聞いて、過去を振り返る。
なるほど……、なるほどなるほどなるほど!
リーゼベトで奴隷と同様の扱いをされていたあの時、殴られ、魔法で痛めつけられていても、気付けば傷は消えていた。
大猪戦、マジックブースト使用で枯渇したと思っていた魔力が、気付けば戻っていた。
全て、レベルが上がったことがトリガーとなってこのスキルが発動していたんだ。
さて、問題は……。
「で、続きを聞かせてくれるか?」
「続きとは?」
スカーレットは?マークを頭に浮かべている。
「勿体ぶってないで教えてくれ。当然あるんだろう、超回復にも続きのデメリット効果が」
「ないぞ。これで終わりじゃ」
「は?」
思わず声が漏れてしまった。デメリット効果が……ないだと?
「別に虹色だからといって必ずしもデメリット効果がある訳ではないぞ」
「そうなのか?」
「むしろお主が癖のあるものばかり手に入れて穿った捉え方をしているだけじゃ。まぁ、かくいう儂が持っているこれもその内の1つなんじゃが……」
そう言って、スカーレットは懐から何かを取り出した。
それを俺に投げて寄越す。
「餞別じゃ。くれてやるから使ってみるのじゃ」
投げられたそれを確認すると、それはアールヴが持っているユーレシュのスキルクリスタルと同じくらいの大きさのスキルクリスタルだった。
「昔々に栄えておった、インザインという国が保有していたスキルクリスタルじゃ」
フフンと得意げにスカーレットは笑う。
「いや、折角なんだけど無理だ」
俺は、インザインのスキルクリスタルをギュっと握る。
「なんでじゃ?」
「SPが足りない。114程度じゃ習得できないだろ」
「変な勘違いだらけじゃのお主は」
しかし、俺の言葉を聞いたスカーレットは呆れたような顔でため息をついた。
「虹色のスキルを習得するのにSPは必要ない」
「嘘だろ!? いや、だって……」
「習得時に大量のSPが全て消費されたからそう思ったのか? それはあるスキルを手に入れた段階で何故そうなったのかが分かるようになる。じゃから今は騙されたと思って使ってみるのじゃ」
「わ、分かった」
俺はスカーレットに言われるがまま、スキルクリスタルに力を込め、念じた。
すると、スキルクリスタルは淡い光を放ち始め、それは以前と同じ虹色の光を帯び始める。
やがて、俺の中から何かが抜ける感覚に襲われ、光が収束し、俺に吸収されていった。
「確認してみるのじゃ」
「ああ」
恐る恐る俺はステータスパネルを開く。
********************
ラグナス・ツヴァイト
Lv:18
筋力:EEEEE
体力:EE+
知力:E+
魔力:E+
速力:EEEE
運勢:FFFFF+
SP:0
スキル:【レベルリセット】
【ランダムスキル】【天下無双】
********************
そこには、ランダムスキルという新たなスキルが追加されていた。
次いで俺はスキルの効果を確認してみる。
=======================
ランダムスキル
1日に1度ランダムにスキルをSPを消
費せず習得することができる
習得したスキルは日が変わる瞬間に消滅
する
レベルが低いほど習得できるスキルは強
いものとなり、高いほど弱いものとなる
=======================
「どうじゃ。気に入ったじゃろう? こいつも一癖があるが、お主のレベルリセットとの相性は抜群じゃぞ」
「ああ、俺もそう思うよ」
なにせ、レベルリセットとの効果でデメリットがデメリットではなくなっている。
言わずもがな、スキル消滅はこいつでなくてもレベルリセットによってされてしまうため、はっきり言って関係ない。
また、レベルが低いと習得できるスキルが強くなるのであれば、毎日レベルが1に戻る俺は常に強いスキルを引き続けることができるということだ。
「まるで、レベルリセットありきで虹色のスキルは構成されているみたいだな」
「ん? そりゃそうじゃよ。全てを習得することで初めて最強となるのが虹色のスキルなのじゃからな。レベルリセットだけじゃなく、お主の持つ他のスキルとのシナジー効果で強くなるものもあるぞ」
他のスキル……というと、早熟、天下無双、超回復ということか。
いやいや、それより今聞き捨てならないことをさらっと言ったな。全てのスキルを習得することで初めて最強になると。
「虹色のスキルは全て習得しなければ意味がないということか?」
「意味が無いとは言わんが、いずれそうすることになるじゃろうとだけ、今は言っておこうかの」
「そこも濁すんだな」
「面白くないからの」
「またそれか」
はぁ、俺はため息をついた。
肝心なところをこの幼女は何故か隠したがる。全てを見通し、知っているのなら教えてくれても良いと思うんだけどな。
「あのー、ちょっといいでしょうか?」
「ん?」
さてどうしたものかと考えていると、隣からアールヴが話しかけてくる。
「さっきから私だけ話について行けてなくて。できたら説明してもらえると助かるんですが……」
確かアールヴは俺のステータスを確認できるが、スキルの効果までは確認できないんだっけか?
面倒くさいけどしょうがないから説明するかと思い、ふと手の中のスキルクリスタルに目をやる。
そこで俺はハッと一つの事実に気付いた。
確かスカーレットはこう言った。このスキルクリスタルをくれてやると。
そして、アールヴの方を見る。彼女は首を傾げて無垢な表情を浮かべていた。
その彼女の首元にあるスキルクリスタルが、どこか寂しそうな様子で揺れているのも知らずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます