第十四話 業火の決着
ブモッ、ブモオオォッ。
目の光は消えていないが、大猪も受けたダメージが大きいらしくすぐには動けないらしい。
奴を仕留めるなら今がチャンスだが、何分俺では決定打がない。
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ラグナス・ツヴァイト
Lv:89
筋力:DD
体力:D
知力:DDD
魔力:DDD
速力:EEEE+
運勢:EEEE+
SP:100
スキル:【レベルリセット】【天下無双】
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ステータスを確認してみる。レベルは上がっているものの、1上がった程度でどうにかなる相手ではない。
せめてもの救いはSPが100に達したことか。一か八かこれに賭けてみるしかない。
「アールヴ。借りるぜ」
俺はアールヴの首から下げられているスキルクリスタルへ手を伸ばし、念じた。
すっと体から何かが抜けるような感覚に陥る。そして、スキルクリスタルはまばゆく光り輝き始めた。
それは、金色の光。必ずしも虹色が出るわけではないのか。
なんにせよ金色でも凄いスキルに違いない。光が俺の中に吸い込まれたのを見届けると、ステータスをもう一度確認してみる。
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ラグナス・ツヴァイト
Lv:89
筋力:DD
体力:D
知力:DDD
魔力:DDD
速力:EEEE+
運勢:EEEE+
SP:0
スキル:【レベルリセット】【天下無双】
【マジックブースト】
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これ、マジか。よりによってマジックブーストかよ。
俺の中にとんでもない嫌悪感が湧き上がってくる。しかし今は俺の私情よりもこの場をどう切り抜けるかだ。幸いにもこのスキルはかの大賢帝が所持していたともされるほどのレアスキルだ。
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マジックブースト
魔法使用時に使用する魔力量を増やすこ
とで威力を増加させる
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魔法とは、知力によってその威力が、魔力によってその使用できる回数が決まるとされている。
当然ながら上級魔法であったとしても、知力が低ければ威力は低下するし、下級魔法でも魔力がなければ不発に終わる。
そして魔法を使用した際は必ず一定量の魔力が減っていく。その減る魔力量を増やし、その分威力を底上げするというのがこのマジックブーストというスキルだ。
俺の魔力はDDD。上級魔法を使えるぐらいの魔力はある。
俺は再び大猪を見やる。四肢は震えているが、何とか立ち上がろうとしていた。
あまり奴に時間を与えすぎるとマズイと判断した俺は、両手を大猪へ向けた。
魔法は詠唱さえ知っていれば、後は知力と魔力量の問題だ。この2つの値が低かったから魔法に苦手意識を持っていた俺にとって上級魔法など知る機会が無かったけれど、たった今見せてもらったからな。
使わせてもらうぜ、アールヴ!
「我、炎の化身として命ずる――」
それを聞いた途端、大猪が慌てた表情を見せた。
「地の底に眠りし、業火の魂よ、灼熱の衣、灼風の翼、灼火の拳、灼光の剣、灼陽の体躯を顕現させよ――」
大猪は火事場の馬鹿力で立ち上がり、俺に突進してくる。が、遅いっ!
「その名は『ヴォルカニック・インフェルノ』」
瞬時、俺もマジックブーストを発動させる。イメージは、全魔力をこの一撃にだ!
俺の両手の魔力の塊は膨れ上がり、大猪の下の地面に吸収され、轟音とともに再び火柱が地面を割って出現した。
ブモオオオオオオッ!
耳を劈くような咆哮が辺りに響き渡る。
赤々とした炎に飲まれながら、大猪は四肢をバタつかせて逃れようとするが、思うようにならない。
やがて、炎は地面に収束していき、辺りは静寂に包まれた。
「やった……、か?」
正直威力としてはアールヴの方が上に感じた。とはいえ、上級魔法、更に言えばマジックブーストのおまけつきを二発も食らったんだ。さすがにもう立ち上がっては……。
ブモッ、ブモッ。
「何だよ、こいつ……」
奴は生きていた。俺は戦慄する。何で倒れないんだと。
だが、俺も引けない。後ろに居るアールヴを抱えてこの場を脱することはできるかもしれないが、その後村がどうなるかは火を見るよりも明らかだ。そんなことになれば、後でアールヴになんて言われるか分からない。
たとえ魔力が無くても、必ず止めて見せる。と意気込んだ時に気付いた。魔力が無くなってないことに。
俺は自分の拳を開いたり閉じたりしてみる。何ともないのか?
全魔力を込めたから、普通ならアールヴ同様に魔力切れで気絶しそうなものだが、どちらかというと先ほどよりも力が溢れてくる感じだ。
何なら天下無双を使う前よりも体は軽く感じる。疲労感は全くない。
「まだ、終わってないってことか」
俺は再度詠唱を開始する。
大猪は尚も俺に突進しようとゆっくり歩を進める。ただ俺に恨めしそうな眼差しを向けたまま。
「我、炎の化身として命ずる、地の底に眠りし、業火の魂よ、灼熱の衣、灼風の翼、灼火の拳、灼光の剣、灼陽の体躯を顕現させよ、その名は『ヴォルカニック・インフェルノ』」
マジックブーストも同時に発動。猛々しい火柱は先ほどよりも威力を増して大猪を貫く。
それでもアールヴより威力は低いが、死にかけの大猪を屠るには十分だった。
三度の火柱の直撃を受けた大猪はその大きな体躯をドシンと地面に落とし、絶命する。
黒く焼け焦げた大地が、その魔法がいかに凄惨なものだったのかを物語る。
それを二度も耐えきった大猪に対して、俺は敬服の念さえ抱いた。
「終わった」
相変わらず魔力全込めで発動したのにも関わらず、一切の疲労感が無い体を不思議に思いながら、精神的な疲労で俺はゆっくりと地面に膝をついた。
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