第2話「宝石と女の子」

 あるところに、「宝石のような目をしている」と評判の女の子がいました。

 人々は女の子を褒めましたが、彼女の家は貧乏で、周りにそれを見るための道具は何一つ無く、一体どんな目をしているのか、彼女だけが知りませんでした。

 だから、ある夜に魔女が願い事を尋ねた時、女の子は願ったのです。

 「わたしの目と同じという、宝石と呼ばれているものが見てみたいの。一度でいいから。」

 魔女は「一度だけでいいのかい」と聞きましたが、女の子の心は決まっていました。

 「だって、何度も見たら、きっと飽きて特別ではなくなってしまうわ。」

 魔女はその言葉に満足して言いました。

 

 「お前の持っている宝石と交換だよ。」

 女の子は本当に願いが叶うなら、それでいいと思いました。

 

 魔女は願いを叶えると、約束通り女の子の宝石を持ち去りました。

 部屋には魔女が来る前と同じ、火のついたロウソクが一本と小さなベッドが一つ。

 女の子にはその光は見えません。

 それでも女の子はその夜、幸せな気持ちで眠りにつきました。


おわり

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