第53話『2人きりで温泉を-後編-』
体を洗い終えた俺は、お礼に美優先輩の髪と背中を流すことを提案する。
美優先輩は喜んで受け入れてくれたので、俺と入れ替わる形で、洗い場の椅子に先輩が座る。
「では、まずは髪を洗いますね」
「うん! お願いします」
俺は美優先輩の髪を洗い始める。
昨日の夜もたっぷりと見たけど、美優先輩の背中って白くてとても綺麗だなぁ。キスしたくなる。昨晩は先輩の体にたくさんキスしたり、ぎゅっと抱きしめたりしたけど、キスマークやひっかき傷などが一切なくて安心した。今夜も気をつけないとな。
「気持ちいいですか?」
「うん、気持ちいいよ。最初に洗ってもらったときから上手だったけど、より上手になっているね」
「ありがとうございます。嬉しいです。美優先輩も回数を重ねるごとに、俺の髪を洗うのが上手になっていますよ」
「えへへっ、ありがとう」
鏡に映る美優先輩はとても嬉しそうで。普段は落ち着いたお姉さんって感じだけど、今のように俺と2人きりだと幼くて無邪気な顔を見せることも多くなった。そんな先輩の顔を崩さぬよう、丁寧に髪を洗っていく。
「そういえば、以前にご家族で来たときはこの貸切温泉には入ったんですか?」
「ううん、入ってないよ。実はお父さんが家族水入らずで温泉を楽しみたかったらしいんだけど、予約がいっぱいで。うちの家族、お父さん以外に男性はいないしね」
「そうだったんですか」
美優先輩のお父様の当時の気持ちが分かる気がする。ダメだと分かっているけど、更衣室で1人で着替えたり、大浴場を1人で入ったりすることに寂しい気持ちがあったから。
明日……ご実家に行ったときに貸切温泉のことを話したら、美優先輩のお父様がどんな反応をするか。考えると恐ろしいので考えないでおこう。
「それもあって、今回は由弦君と一緒に貸切温泉に入ることができて嬉しいよ」
「そうですか。シャワーで泡を落とすので、目を瞑っていてくださいね」
「はーい」
俺は美優先輩の髪に付いた泡をシャワーで落とす。フェイスタオルで髪についたお湯を取って、ヘアゴムでまとめる。
「髪はこれでいいですね。次は背中を流していきましょう」
「うん、お願いします」
俺の背中を流すときにも使ったボディータオルで、美優先輩の背中を優しく流していく。傷つけないように気を付けないと。
「こんな感じでどうでしょうか、美優先輩。普段とは違うボディータオルを使っているので、まずはいつもよりも少し弱めで洗っていますが」
「うん、このくらいでちょうどいいよ。さすがは由弦君だね」
「ありがとうございます。では、このまま洗いますね」
「ふふっ、由弦君は優しいなぁ。でも、昨日の夜は凄く求めるときがあったよね。由弦君は私の体も好きなんだってよく分かったし」
「……綺麗ですし、胸が大きいですからね」
そういう話をされると、段々と興奮してきてしまうのですが。だからこそ、理性をしっかりと働かさなければ。
「ふふっ。昨日の夜のことで、由弦君は私の唇と胸と太ももと背中と腋とお尻と首筋とお腹と頬が好きなんだって分かったよ」
「……それ、ほぼ全身じゃないですか。否定はしませんが」
特に好きなのは唇と胸と太ももと腋なんだ……って、理性を働かせようと心がけてすぐにこういったことを考えてはまずい。
「はーい、美優先輩。背中を洗い終えたので後はご自分でお願いします」
「分かった。背中を流してくれてありがとう!」
俺は美優先輩にボディータオルを渡す。
先に温泉に入るのも一つの選択肢だけど、温泉なので美優先輩と一緒のタイミングで入りたい。なので、さっきの先輩のように隣の洗い場の椅子に座って、先輩が体を洗う様子を見守った。横から見る先輩も凄く綺麗だ。
「さてと、私も髪と体を洗い終えたよ。じゃあ、一緒に温泉に入ろうか」
「そうですね」
いよいよ、俺は美優先輩と一緒に貸切温泉の檜風呂に足を入れる。
「結構温かいね」
「そうですね。大浴場にある檜風呂と同じくらいでしょうか」
「そうかも」
これなら、少し長めに浸かっても大丈夫そうかな。
俺は美優先輩と隣り合うようにして、檜風呂に腰を下ろす。そのことで胸の辺りまで温泉に浸かる状態に。また、美優先輩は今朝と同じように「あぁ」と気持ち良さそうな声を上漏らしている。
「とっても気持ちいい」
「気持ちいいですよね。温かいので今日の疲れが取れていきますね」
「由弦君は今日もプールで頑張って練習したから、ここでゆっくりと疲れを取ろうね。それで、また今夜もしようね」
「分かりました」
本当に美優先輩って俺と2人きりだと積極的になるなぁ。そういったところも、彼女の可愛らしさだと思っている。今夜は先輩の方が動く展開が多くなるかも。
夢中になりすぎて、明日に影響が出ないようにしないと。明日は美優先輩の実家に行って、御両親と挨拶をするから。
「それにしても、隣同士に座って脚を伸ばしながら温泉に浸かることができるのっていいね。家のお風呂だと向かい合うか、由弦君と抱きしめ合うかどうかだもんね」
「そうですね。これが貸切温泉最大の贅沢かもしれませんね」
「かもねっ」
美優先輩はそっと俺の腕を抱きしめてきて、頭を俺の肩に乗せてくる。俺と目が合うとニッコリと笑ってキスしてくる。そのことでより贅沢になったかもしれない。
お湯が温かくて。脚を伸ばし自由に動かすことができて。気持ちいいなぁ。ただ、一番気持ちのいい要素は美優先輩と2人きりで温泉に入っていることだろう。
「瑠衣ちゃんや風花ちゃん達も温泉にゆっくり浸かっているかな」
「一緒にプールでたくさん遊びましたからね。観光もしましたし、今はのんびりと温泉で体を癒しているんじゃないでしょうか」
「きっとそうだね。観光も楽しかったし、プールでもたくさん遊んだり、由弦君が泳げるようになったりして良かったな」
「今日もサポートしてくれましたもんね。本当にありがとうございました」
「いえいえ。練習を頑張って、泳げるようになった由弦君はとてもかっこいいよ」
美優先輩は俺の頬にキスしてくる。こんなに可愛い先輩と一緒に温泉に入っていたら、早いうちにのぼせてしまうんじゃないだろうか。
「ねえ、由弦君。両脚を広げてくれないかな? 由弦君の前に座りたいの。それで、由弦君に後ろから抱きしめてほしいなって」
「分かりました」
俺が両脚を広げると、美優先輩は俺の脚の間に座る。
俺は美優先輩のことを後ろからそっと抱きしめる。肌がスベスベで柔らかいので非常に抱き心地がいい。
「これもいいですね。美優先輩のことを抱きしめていると気持ちがまったりしていきます」
「ふふっ。私も由弦君が抱きしめてくれているおかげでさっきよりも気持ちいい。由弦君とこうして一緒に入ることができて良かったよ。……大好き」
「俺も大好きです」
顔をこちらに向けた美優先輩とそっとキスする。先輩の唇は温泉よりもずっと温かくて、優しいなと思う。
やがて、美優先輩は顔だけではなく全身を俺の方に向け、俺のことを抱きしめてくる。こういうことをしていると、早く夕食後にならないかと思ってしまう。
その後も、予約している時間ギリギリまで、俺は美優先輩と一緒に貸切温泉を堪能するのであった。
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