第23話『制服姿メモリーズ』

 今日は金曜日で、宿題などやらなければいけないものも特にない。なので、美優先輩と一緒にリビングでゆっくりと過ごすことに。


「今週は2日だけで、両日ともお昼に終わったので早く感じました」

「そうだね。私は今日だけだから楽だったな。来週からが本番だね。授業がスタートするし」

「ですね。まずは高校の授業についていけるように頑張ります。もしかしたら、美優先輩に頼ってしまうことがあるかもしれませんが」

「いつでも頼っていいからね。私は由弦君の先輩なんだし。もちろん、授業についていけるように頑張ろうね」

「はい」


 来週から勉強を頑張らないと。あとは部活や同好会に入るかどうかも考えないとな。そう思いながら、美優先輩の淹れてくれたアイスコーヒーを飲む。

 ――プルルッ。

 スマホが鳴っているので確認する。心愛からSNSで写真が1枚届いていると通知が。通知をタップして心愛とのトーク画面を開くと、中学の制服姿の心愛の写真が表示された。


「心愛ちゃん可愛いね! 心愛ちゃんが着ているのって、入学した中学校の制服?」

「そうです。昨日、高校の制服姿の写真を送ったとき、今日が中学の入学式だと心愛が言っていました」

「そうなんだ。みんな新生活が始まっているんだね」


 新生活か。心愛は友達が結構いるし、小学校からはほとんどの生徒が同じ中学に進学するから、楽しい中学生活を送れるんじゃないだろうか。

 そういえば、美優先輩の中学生の頃ってどんな感じだったんだろう。中学の制服姿もどんな感じなのか興味があるな。


「美優先輩。先輩の中学の制服姿ってどんな感じだったんですか?」

「高校と違ってセーラー服だったから、今とは雰囲気が違うかな。じゃあ、由弦君の中学校の制服姿も見てみたいから、お互いに見せ合うっていうのはどう?」

「いいですね。分かりました」


 俺はスマホのアルバムで、中学の制服姿が映った写真を探す。ただ、見てみると、意外と自分の制服姿ってあんまりないな。卒業式の写真がいいかな。


「由弦君、あった?」

「ありました。ただ、スマホに自分の制服姿の写真が意外となくて。卒業式の日に撮った写真になります」

「私も同じ。卒業式に友達に撮ってもらった写真だよ。じゃあ、見せ合おうか」


 俺は美優先輩とスマホを交換する。

 美優先輩のスマホの画面には、黒いセーラー服姿の先輩の姿が映っている。卒業証書の筒を持って可愛らしい笑顔を浮かべていて。


「可愛いですね。1年以上前ですから、少し幼さも感じますが。あと、セーラー服姿ですから、やっぱり雰囲気が違いますね」

「そう言われると嬉しいけど、ちょっと恥ずかしい。由弦君の方は高校と同じブレザーだし、先月の写真だからあまり雰囲気が変わらないね」

「色は灰色ですけど、高校と同じブレザーですからね。この写真を撮ってから1ヶ月も経っていませんし」

「そうなんだよね。でも、出会ったのは1週間前だから、随分と前のようにも感じる。ただ、私は高校の制服姿の方が似合っている気がする」

「そう言ってくれると嬉しいですね。実際に見ているからかもしれませんが、俺も先輩の制服姿は今の方がいいですね」

「……そっか」


 ふふっ、と美優先輩は可愛らしく笑った。

 この写真の美優先輩も可愛いし、きっと中学の頃も人気があったんだろうな。今日みたいに告白されたこともあったかもしれない。


「そうだ、朱莉の方も今日が中学校の入学式だったと思う。メッセージで確認してみよう。入学式だったら、写真も撮っていると思うから送ってもらおっと」


 そう言って、美優先輩は楽しげな様子でスマートフォンを手に取っている。

 朱莉ちゃんは心愛と同い年だから、彼女もこの春で中学に入学するんだ。朱莉ちゃんの中学の制服姿もどんな感じなのか楽しみだな。


「ちなみに、朱莉ちゃんの入学した中学は先輩の母校なんですか?」

「うん、そうだよ。地元の公立中学。前に朱莉の写真も見せたことあるし、どんな制服姿なのか想像できるんじゃないかな」

「そうですね……想像しないでおきます」

「ふふっ。私も朱莉の制服姿がどんな感じなのか楽しみだな。……送信っと」


 後は朱莉ちゃんからの返信を待つだけか。

 地元の中学に進学ってことは、朱莉ちゃんも小学校で一緒だった子も多いことだろう。彼女も新しい場所で楽しく学校生活を送ることができるといいな。

 ――プルルッ。

 美優先輩のスマートフォンが鳴っている。


「……あっ、さっそく朱莉からメッセージと写真が来た。やっぱり、今日が入学式だったって。ふふっ、朱莉ったら由弦君に入学おめでとうと伝えておいてだって」

「俺にメッセージがあるとは思わなかったので凄く嬉しいです。じゃあ、朱莉ちゃんにありがとうということと、中学入学おめでとうと伝えてくれますか?」

「うん。分かった。その前に、これが朱莉の中学校の制服姿の写真だよ。すっごく可愛いよね!」

「どれどれ……」


 美優先輩からスマートフォンを受け取る。画面には、さっきの見せてもらった写真に写っていた美優先輩と同じ制服を着た朱莉ちゃんが。


「可愛いですし、綺麗ですね。中学の制服を着ているからか、とても大人っぽい雰囲気ですね。今日、中学に入学したとは思えないくらいに……」

「そうだね。朱莉なら、私の制服を着て陽出学院の中を歩いても、中学生だって気付かれないかも」

「……確かに」


 風花や花柳先輩よりも大人な雰囲気があるので大丈夫かもしれない。

 美優先輩にスマホを返すと、俺からの返事を送っているのか何度もタップしている。


「……送信。ありがとうとおめでとうって送っておいたよ」

「ありがとうございます」


 すると、美優先輩は頬を赤くして俺のことをチラチラ見てくる。


「……ね、ねえ。由弦君。話が変わっちゃうけど、由弦君って水着って持ってる? 水泳の授業で着るのでも、遊ぶときに着るのでも」

「本当に話が変わりましたね。陽出学院は水泳の授業もあると聞いていますから、中学の授業のときに着ていた水着は持ってきていますが」

「そうなんだ、良かった。じゃあ、今日……一緒にお風呂に入らない? 高校の入学祝いとか、さっきの告白で助けてくれたお礼に髪を洗いたいなって。もちろん、お互いに水着を着た状態でね! Gのときに裸を見られちゃったけれど……」

「な、なるほど」


 お互いに水着姿ならセーフなの……かな? ただ、美優先輩に好意を抱いている人がこのことを知ったらキレられそう。特に花柳先輩。

 あと、さっきの抱擁や感謝の言葉で、少なくとも告白の件についてのお礼は十分にもらっている気がするけど。


「……もしかして、嫌かな?」

「……嫌ではないです。お互いに水着を着れば大丈夫だと思います。とてもこじんまりしていますが、温水プールのような感じで湯船に入ればいいですし。今夜は美優先輩のご厚意に甘えさせてもらおうと思います」

「うん! 決まりだね!」


 美優先輩は嬉しそうな表情を浮かべている。

 去年の夏から体格はそこまで変わっていないから、多分、水着を着られると思う。

 あと、スクール水着でも、プライベートで着る水着でも、美優先輩の水着姿がどんな感じなのか楽しみだな。

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