第6話

何日経っただろう。優人は学校にもおばあちゃんのお見舞いにも行かずずっと家に閉じこもっていた。何かを考えていたわけでもない。ただ寝てご飯を食べてトイレにいってお風呂に入っていただけだった。目の前の現実から逃れたかったのだろう。ふいにインターホンがなる。


「はい。」


扉を開けた先には学校の友人であり幼馴染の木原小雪きはらこゆきがいた。昔から賢く優しい女の子だった。


「優人!なんで最近学校来ないの?」


小雪はせめよってくる。なんでもない、と言うと


「なんでもなくないでしょ。優人ずる休みはしなかったじゃん。」


とつきかえされる。


「いや、色々あってさ。もう帰ってくれよ」


そういってドアを閉めようとすると足を挟んで無理にでも話を続けようとする。仮にも女子の足に傷を付けてはいけないと思い諦めて家の中にいれる。


「んで。何があったの?」


当然のようにキッチンの戸棚からポテトチップスを取り出し家で唯一のソファーにどかっと座って話し出す。諦めてこれまでのことを正直に話す。しかし雪の顔は微動だにせず、なんの反応もない。


「雪?聞いてる?」


自分から聞いてきたのに、と少しイライラして聞くが


「聞いてる聞いてる。続けて?」


と言われてしまう。最後まで話終わるとやっぱり、と言って雪はあぐらからしっかり足を床につけ、姿勢を伸ばして話し出す。


「最近夜に変な夢を見るの。誰かの目線から見た映像。今優人の映像だった事が分かったよ。」


今まで知らない人に教えるていで話をしていたが知っていたという恥ずかしさとあの可愛い笑顔を自分以外の人に見られる腹立たしさで


「知ってるんだったら聞くことないだろ。帰れ。」


と言ってしまった。しかし雪は


「待って!」


と叫ぶ。


「なんだよ!!もう帰れよ!!」


「いいから座って。」


少しトーンの低い声に驚き雪の顔に視点をあてると、いつもへらへらしている雪が真剣な顔をしていた。


「私、未来も見えてる。」


「は!?ほんと!?」


「ほんと。」


「あの子は!?あの子はどうなってる!?」


「んっと...優人と並んでバージンロードを歩いてる。」


そこまで聞くとバンッとドアを勢いよく開け、走り出した。一人残された雪はしょうがないな。と呆れながら誰にも聞こえない声で呟く。


「...優人は喜んでいなかった。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

モミジの木の下で 漣優 @sazanamiyuu1124

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ