第3話

1ヶ月後。祖母を受け入れてくれる老人ホームが見つかり、無事退院できた。だが優人は今まで通り。もしくはそれ以上の熱心さで病院へ通った。行先はあの女の子の病室だ。5日後に成功確率が15%の手術をする予定になっている。成功例は国内で2回。海外で8回。もし成功すればほぼ高確率で完治するが、失敗すれば命はない。

「おはようございます」

後数日になるかもしれないこの時間を大切にしていこうと毎日3時間程を病院で過ごす。

「おはよう。今日も来てくれたんだ」

祖母のいた病室は4人共同で使う部屋だったが、女の子の病室は1人で使う部屋なので広々している。窓も南向きで太陽光が差し込んでくる。

「体調いかがですか?」

「とっても良いよ!あの…お願いがあるんだけどいいかなぁ?」

年齢を聞いたところ、18歳らしく、1歳年上だったので一応敬語を使っている。女の子としては使って欲しくないと言われているが年功序列をきっちり守りたい優人はそれを拒否した。

「お願いってなんです?」

「あのね。中庭に行きたいの。今モミジが紅葉で綺麗でしょ?窓から見るのだけじゃ物足りなくて。」

確かに今は紅葉の真っ最中で木々は赤や黄色に輝いている。

「分かりました。あなたがそれでいいのなら」


車椅子を押しながら中庭に出るとこの病院のシンボルツリーが待ち構えている。樹齢500年くらいだそうだ。病院の人達によって手入れがしっかり行われているので頼もしい気に育っている。

「わぁ綺麗。真っ赤だね」

女の子は目を輝やかせながら言う。

「満足ですか?」

「はいっ!」

満面の笑みでこちらを見つめる。優人には太陽に照らされて輝いている木々よりもこの笑顔の方が輝いて見えた。

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