第2話

次の日は祝日だった。学校も塾も休みだったので1日病室で祖母と話しながら勉強しようと思い、問題集や参考書をリュックいっぱいに詰め込んで病院へ向かった。祖母は顔をくしゃくしゃにして喜んだ。


お昼頃。お弁当を忘れた事に気付き、病院にある簡易的な食堂でパンを買い、病室に戻る時だった。昨日の女子達の中にいた女の子がエレベーターを待っているのだ。優人は避けるのも負けた気がして嫌だったので、

(また除け者にされるのか)

と思いながら女の子の隣に並んだ。女の子は突然現れた優人に驚いていたが、決心して話しかけてきた。

「あっあの!昨日はすみませんでした!」

車椅子に乗っていながらも頭を全力で下げてくる。

「え、どうされたんですか。」

謝られるとは思っていなかったので無意識に敬語になってしまう。

「昨日、友達と酷い事を言ってしまったので…本当にすみませんでした…」

「いいですよ。でもなんでそこまで思ってるのにあの子達には言わないんですか?」

本当に一切怒っていないという訳では無い。まだ腑に落ちない所もあるがそれでも今は疑問の方が脳内を占めていたので聞いてみる。すると少し言いづらそうにするので

「言いたくないならいいですよ」

と、言っておく。しかし、女の子は食い気味で

「いえ、言いますっ!」

と言ってきた。エレベーターに乗って移動している間、女の子はゆっくりと話してくれた。あの子達は親の会社の社長令嬢と親の上司の娘だという。親の立場から、あまり怒ったりできず、嫌がらせをされ続けていたらしい。今回入院している理由もその子達が崖から突き落として頸髄を損傷したかららしい。

「しっかり断れたら困らないんですけど。親の立場上、ね」

半ば諦めたように言う女の子に優人は言う。

「親同士でそういうのがあっても、子供は子供で違うんじゃないんですか?」

「そうなんだけど考えちゃうじゃん」

気が付けば女の子の病室の前まで来ていた。まだまだ聞きたい事はあったので

「また来てもいいですか?」

と聞くと、すぐに

「はいっ!」

という元気のいい返事が返ってきた。病院に行く意味がまた増えた瞬間だった。

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