第26話 女神のダイス

 女神、読んだら精神値失うような読み物、書くべきだと思われます?


 ――はい。


 需要あるんですか? そんなの。


 ――あるんです。


 理解不能だな。……どういう人が、そういったものを読みたがりますか?


 ――はい。知識階級です。


 ナゼ!?……怖いもの見たさ?


 ――あたりまえです。


 いやだぁぁああ。


 ――精神値チェック。


 ダイス持ってないよ。……あれだな、なまじっか知識あるから、


 ――はい。


 普通の読み物は、


 ――普通の読み物って?


『趣味の園芸』とか『オレンジページ』とか『レタスクラブ』とか、そのへんに出回ってる雑誌とか。じゃ、あきたらないんだな、知識階級の人。


 ――そうよ。


 ジャンプも駄目?


 ――ジャンプは、困ったなー。


 ジャンル違い?


 ――うん。


 クトゥルフ書きたくないよ。女神、お守りください。


 ――精神値UP!


 ほぉぉお! 深く息をつきます。


 ――それから?


 シナリオ欲しいですね。


 ――だから?


 アマゾンで入手します。


 ――冷たい。


 なぜ?


 ――誘いなさいよ。


 だれを?


 ――No.23とかNo.48も。


 女神、さっきも確認はしましたが、No.48は評判のよくない人格なんですよね? 大丈夫なんですか?


 ――精神値チェック。


 動じてません。


 ――はい。お願い、精神値チェックして。


 どのように?


 ――落ちそう。


 どこへ?


 ――奈落へ。


 だれが?


 ――気にするな。


 誰?


 ――No.38


 私は小説家になるためなら、精神値削られようと、飛びこみますよ。でも、家族がいるから、戻ってこれなくなるのは困ります。


 ――血まみれ。


 だれが?


 ――おまえ。


 ダイスは用意してないと。


 ――用意して。


 まったく、仕方ないなあ。……HBの鉛筆二本で作りましたよ。


 ――おお!


 で、どうすれば?


 ――精神値チェック。


 どのように?


 ――ダイス。


 いくつ?


 ――2つ。


 4と4。


 ――まだ耐えられる。


 なにに?


 ――血まみれ。


 どうしてそんなことに……。


 ――初めから言うと、


 はい。


 ――崖から落ちたの。


 どこを怪我したの私。


 ――はい。手足。


 歩けますか? 呼吸は?


 ――ゼハゼハいってます。動きませんね、手足。


 応急処置も無理?


 ――無理です。


 どーすれば。


 ――精神値チェック。


 4と4。


 ――ダメだ。鉛筆削って。


 作り直し?


 ――作り直し。


 できた。


 ――もう一度振って。


 4と3。


 ――ちょっといい。


 なにが?


 ――精神値はー、さいしょから読むね。冒頭はこう。


『ヒグマに襲われて、なかなか立ち上がれない。あなためがけてヒグマは、再び、放心するあなたに飛びかかります』


 とびかかるの!?


 ――はい。


 ヒグマが? アウトアウト! 死んじゃうよ!


 ――測って。じゃあ、ダイス一個。


 4。


 ――じゃあねえ、ヒグマは去っていきました。


 なぜに?


 ――襲われたから襲ってきたんでしょう。


 すると?


 ――あなたが無害とわかり、犯人は「チッ」


 犯人て。すると、他にヒグマを挑発したのがいると。


 ――その通りです。


 血まみれなんだよね?


 ――はい。


 周りに誰かいないか、さぐりたい。


 ――うーん、ダメ。


 声は出ない?


 ――出ないかなあ。


 どーすんの?


 ――万策尽きて、むかってこなかった。


 エンディング?


 ――エンド。


 つまらん。犯人て誰?


 ――わかりません。


 シナリオ、どーなってんの?


 ――まさか、ヒグマに襲われて、精神値低いのに、冷静って……。


 はっきょうするとか、言われてないし。


 ――そうねえ。聞かなかったからねえ。


 聞けばいいんだ?


 ――何度でも聞いて。……最初はこんなもんよ。


 なるほど、トークで面白くしていくんだな?


 ――始まり――


 女神のシナリオ、当てにしていいんですか?


 ――いいよ♡


 じゃあ、すみません。TRPG初心者ですけど、OK.って方、いらっしゃいます?




 ――だれかぁ、たすけてぇ!


 どうしたの?


 ――ヒグマに襲われた。


 え? 女神私の状態は?


 ――いません。


 死んだってこと?


 ――もちろん。演出。


 じゃあ、私は何をすれば?


 ――いいから、早くしてよ。


 なにすればいいの?


 ――精神値チェック。


 1と3。


 ――くっだらねえな! 自信満々じゃねーか。


 だれ?


 ――サンバン。


 ――No.4だ。


 二人いるの?


 ――うん。……正確に言えば、3と4だけが招集に集まりました。


 女神、シナリオの概要だけでも教えてよ。どういう状況なの?


 ――あなたは探索者です。


 ――ナカナカ。


 なんの探索者?


 ――クトゥルフの。


 うあああ!


 ――知ってるくせに。


 ヤなんだよ!


 ――精神値チェック。


 4と2。


 ――どーしよーかなー。笑っていい?


 ――頭いかれてるぜ、こいつ。


 ――『探索者は命拾いをしたばかりです』


 ――ヒグマがいたのね。


 ――はい。すすめます。『キミたちは森の中にいます』


 ――最初に言ってほしかった。


 ――雑念、払ってくれる?


 ――おとなしくしよっと。


 ――別に探索者だけは、命拾いしたわけじゃないんでしょ?


 ――そうですね。


 私、動けないんですけど。何か考えたり、目で見まわしたりできます?


 ――できますできます。『つぶれた目をして、ヒグマがこちらを見た瞬間に、崖から落ちて転落。』


 後なの、最中なの?


 ――最中です。


 えと、なにもできないんだよね?


 ――はい。


 せめて状況を目に焼き付けます。


 ――もうちょっとできます。


 もちもの手の届くとことかに、何かあります?


 ――残念ながら、落ちたときにバラバラ。


 助けは呼べない?


 ――残念だけど、それも無理。


 考える。


 ――ダイス振って。


 1。


 ――1!? ダメだ。『天からの声がします……』


 何々?


 ――『おとなしくしてれば、みんな助かります』

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